迷宮攻略3
リミアの魔法を合図に、カチャカチャ、ガチャガチャ、ガタガタと、顔を出してきたのはゴーレム・・・だろう。
その姿は細い人型で、大きくもなく、茶色い。雑な作りだ。
ゴーレムってよりは、木人って感じだ。材料は木ではなさそうだが。
その代わりというか・・・数は多い。ゾロゾロと、通路を埋め尽くす程。
ジェイドが盾で殴り付け、キューティーもその場で敵を切り捨てる。
通路の狭さのおかげか、その通路を埋め尽くす敵のおかげか、キューティーが無駄に突っ込まねぇ分、上手く対応出来ているように思う。
だが、流石に数が数だ。
ジェイドとキューティーの間から木人が抜ける。
「エイラ‼ 中央から一匹‼ 抜けるぞ‼」
それに当たろうとしていたヨハンは、ジェイドの声を聞いて動きを止め、エイラは指示を受けて前に出る。
格闘の技術に関しては、それほど、ちゃんと教えられた。とは思えなかったんだが・・・エイラは危な気なく木人の攻撃を躱している。
心配し過ぎたか?
いや、それよりも・・・攻撃方法。教えてなかったような?
「ッ⁉ おい――」
「――ほら! なにをしていますの? レディを助けるのは紳士の務めですわよ‼」
「えっ⁉ あっ、はい‼」
俺がなにかを言う前に、キューティーがヨハンの尻を叩き、エイラが引きつけていた木人を攻撃させる。
ヨハンはしっかりと、一撃で木人の首をスッパリと斬り落とした。
「エイラ、強化魔法だ‼ 中央の数が多い! キューティーはもっとこっちに寄れ! 右側は後ろの奴に任せろ‼」
「わかりましたわ‼ それでは右側はお任せしますわよ? しっかりレディを守ってみなさい‼」
「そうですね。わかりました‼ 精一杯やります‼」
「じゃぁ3人に掛けるわよ‼ でも、無理はしないでね! 回復魔法まで使いたくないから!」
やっぱ心配し過ぎだったか。
ジェイドの指示は悪くねぇし、ジェイドからの指示があるからか、キューティーの悪癖たる突撃も鳴りを潜めてる。ヨハンの直線的な動きもゴーレム相手なら利点になるし、エイラの言う、回復魔法を使いたくない。は、戦力を見極めたうえで怪我をするような相手じゃねぇとわかって、魔力を温存しときたいんだろう。
その予想を裏付けるように、手前から順当に数を減らしていく。
気になるとすれば足元。
ジェイドには必要だからとすり足を教えたが、木人の残骸が転がる中での戦闘だ。キューティーやヨハンが足を取られなければいいんだが・・・倒してるっつっても、木人はまだ相当数残ってる
。
だが、そんな考えすら、
「防御をお願いします‼」
そう言ったリミアの行動に、無駄だったなと思い知らされる。
左手の盾は胸に。右手のメイスを高く掲げ、その頭上にはデカい水の塊。
メイスを振るリミアの動きに合わせて、水球は前進する。
リミアの声を聞き、身構えるジェイド達を通り過ぎ、群がる木人の頭上中央辺りで動きを止めると、
「スプレッド・レイン‼」
デカい水の塊から、拳ほどの水球が分離。
分離した水球は規則性もなく四方八方に広がりながら降りて、破裂する。
下に向いた破裂は水球から、さらに小さな水弾を作りだし、勢い強く降り注ぐ。1度や2度では収まらない散弾が木人を襲う。
1発の威力は貫通するほどではないが、10発20発と喰らえば、木人の腕がもげ、足がもげ、首が落ちる。
拡散する水弾は雨の如く。確かに。
上空から、広い範囲への連続した攻撃魔法。
制御は甘いが・・・威力と範囲だけで言えば、上級の域に達しているか。
それがこんなに早くできるのは、杖の役割を持たせたメイスを使いこなせているから。そうなれば、俺がリミアに魔法で教えられることはもうねぇかもな。
ま、それなら手間が省けるってもんだが・・・どっちにしろ格闘術は叩き込むことになるし、制御の甘さもある。お役御免はまだ先か。
制御の甘さを被っているのはジェイドとキューティーの前衛2人。
流れ弾が当たってる。
ジェイドは意識して盾で防いだが、キューティーは魔法盾が自動的に。こうやって並べるとジェイドが可哀想だが、後ろに飛びそうな分も位置取りを合わせて防いでいたし、そういうところが見せられるなら、悪いことばっかじゃねぇ。
「にしても・・・」
あれだけいた木人も、今の魔法で奥側が潰れ、手前からも切り崩され、残すところはあとわずかとなっている。
「どうかしましたか?」
「いや」
口に出てたか。
すぐ後ろにいたユノが見上げて聞いてくるが、なんのことはない。
ただ・・・それぞれの成長がよく分かった。
単純な動きをするゴーレム相手とはいえ、敵の動きを見て、読んで、止めるジェイド。
残骸転がる足場でも足取りは軽く、敵に合わせても剣筋を鈍らせねぇキューティー。
初めての実践でも臆することなく敵と対峙し、思い通りにするエイラ。
ヨハンとリミアも。
自分の、やりたい。を形にし始めている。
魔法に頼らねぇ戦い方と、より強力な攻撃魔法。
こんな気持ちは何時ぶりだ?
・・・・・・なんて、最近も思ったよな。
そして、気付いてしまった。
「・・・・・・・・・あぁ、そうか」
最後の数体。
キューティーが切り込み、ジェイドとエイラで抑えて、ヨハンが止めを刺す。
ダメ押しでリミアが各通路に追撃を仕掛け・・・反応はなし。
これにて木人もどきとの戦闘は終了。
喜び合うあいつらの背中を見て、俺は。
そう。純粋に――
――羨ましかったんだ。




