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教えるべきこと

 (ようや)く全員に話を聞かせられる状態を作れたわけだが・・・

「つっても・・・何から教えるか・・・」

 こちらに向けられる視線は不安や懐疑(かいぎ)を含むものの、真剣といって差し支えない。

 冒険者のいろはを教えるといって、曲がりなりにもモンスターが出没する森に集合させて、さらには脅しとはいえ死ぬとまで言ったのだから、ここで適当にやればこいつらは二度と俺の話なんざ聞かないだろう。

 しかし、だ。

 皇都に戻って数日。駆け出しの情報は渡された書類のみ。

 これではいつから冒険者をやっていてどんな依頼を受けたことがあるのかすらわからない―――

 ―――いや? 依頼の方はわからないが確か・・・そうだ。13と16だ。

 ならソロ組は幼少部、パーティー組は中等部卒業後に冒険者になったと見ていい。貴族学園の入学は9月、卒業は6月で今は8月の頭。

 つまり、冒険者になってから約一か月。

 一か月ならギルドの規約だとか機能だとかその程度しか教えられていないだろう。それだけじゃない・・・

「依頼を受けたことはあるか?」

「護衛依頼を二度受けたことがあります」

 そう言ったのは頼みの綱だ。

 ソロ組に至っては二人ともが首を振っている。

 やはりそうか。本来、駆け出しが依頼を受けるのは教育係の指導が終わってから。しかも多くの場合は教育係が同行・監督しての討伐依頼だ。そして今まではその教育係が不在だった。

 このクソ暑い中、全員がほぼフル装備で集まってるのはそのせいか。

 というか、そんなことにすら直ぐ気付かないってことは俺自身も相当テンパってたってことか?


 だがまぁ、

「それなら当然の知識、って奴からいくか」


 気付いたのなら気を付ければいいだけだ。

 そう意識して、話し始める。

「まずは等級の話からだな」

「流石にそれぐらいはしってますが・・・?」

「何を知ってるんだ?」

「冒険者には個人とパーティーに等級を付けていて、それを基準に依頼の参加可否がある・・・ですよね?」

「それだけか?」

「後は昇級試験を受けることで等級を上げる他、依頼の達成率やモンスターの討伐数でも等級が上がることがある。それと等級はS~Dまで存在する」

「受付で聞いたのか?」

「そうです。ただ、冒険者になるならそれより前には知っているかと」

 答えたのはパーティー希望の星

 懐疑的な目で見ながらも丁寧に返してくれた。

「基本的にはそうだ。よく出来ました」

 お手本のような回答を褒めておく。というか懐疑の色が濃くなってないか?

「だがな? 冒険者の等級はもっと分かりやすい」

「どういうことですか?」

 さっきから気配がする方を見ながら、

「個人B級にもなれない奴は半人前。実力を(うた)うなら結果で示せってのが冒険者だ。パーティー等級がBでも個人がCならそいつは半人前なのさ」

 さらに気配が強くなるが続ける。

「要は、個人B級の試験はそんぐらい厳しいってことだ。で、冒険者内(なかまうち)ではB級以上かどうかで判断するんだ。分かりやすいだろ?」

「つまりB級未満というのは・・・?」

「まだ冒険者とは認められないってことだ」

「ふざけるな‼」

 一番後ろでイラ立っていた少年が憤怒する。


 ドン‼ そのわき目を籠手の装置で射抜く。

 撃ち出された弾が茂みを貫き、ガサガサッという音の後に―――


「―――グルォオオ‼」

 モンスターが暴れ出た。

 ギョッとして身構える一同。当然ながらブロンソン教官はすでに気付いて、いつでも行けるという態勢だったが、手間をかけさせるつもりもない。

 驚いて飛び出てきたモンスターが着地するより早く、前に出て迎え撃つ。

 踏み出し、振り下ろす足がモンスターの脳天に突き刺さり、ガッ! という音を残してモンスターはピクリとも動かなくなった。

 唖然とする一同と頷くブロンソン教官。


「冒険者っていうならこれぐらいは出来ねぇとな?」


 そう言いながら俺はナイフを取り出す。

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― 新着の感想 ―
[一言] 教育方針は目で見て覚えろ(笑)
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