教育係の初仕事
指導日。
色々と対策は練ったものの、うまくいくかは誰にもわからないだろう。
皇都の北側を出て徒歩10分。
森の入り口付近に現地集合となっていた。
「全員そろったようだな!」
初日ということで顔合わせなども含め、自分の目で見ておきたかったのか、張り切ったようなブロンソン教官の声が響く。
事前に知らされていた通り、そこには6人の姿があった。
ぽつりとそれぞれ立つ二人と固まって余裕の態度を見せる俺様パーティー。
「今日からお前たちに冒険者としての基礎を教えていく!」
反応はバラバラだ。
ソロの二人はホッとしたような様子でパーティーの方はなめ腐っている奴とそれに乗っかる奴と周りを見回すのと呆れ顔。
そして案の定、
「それってぇすでにC級パーティーになった俺達に必要なことですかぁ?」
調子に乗って割って入って来た。
「もちろん必要だ」
「でもぉそれを教えるのはギルドマスターじゃなくて、そっちの人ですよねぇ?」
「そうだ。心配せんでもこいつは優秀だぞ!」
ズパァン! と背中を叩く元教官。力加減がおかしいと思うんだが?
いいから自己紹介しろ! と目で知らせてくるので、
「教育係になったゼネスだ」
出来るだけ短く済ませる。
「聞いたことない名前なんですけどぉ??」
よくそこまで調子に乗れるなと思うが、それは置いといて周囲の反応だ。
ソロ組はどうでもいい。パーティーの残りは・・・と見てみれば、一人はウンウンと頷いており、一人はさっきより周りを気にして、最後の一人は呆れ顔をしかめっ面にしていた。
これならいけるか?
「俺の名前なんざどうでもいいだろ。聞きたくねぇなら聞かなくていいぞ」
やる気のない様に言い放つ。
慌てて何か言おうとするブロンソン教官を目で押しとどめる。
「へぇ? 話が分かるじゃないですかぁ? 俺の実力分かっちゃったかなぁ?」
そんな奴の後ろでしかめっ面に刻まれた眉間のしわをより深く刻み、睨みを利かせる対象を俺に移して抗議する少女。
まぁそう睨んでくれるな。悪いようにはしないから・・・などと思いながら、
「分かるわけねぇだろ? 早く死にたいって奴に話すことなんざねぇってだけだ」
仕掛ける。
「聞く気がねぇならさっさと消えろ」
こんなことを言われれば当然、
「ッ‼ 言われるまでもなくそうしますよ‼ おい! 行くぞ!」
激昂してその場を去ろうとするが、
「おい!」
その後に続いたのは一人だけ。
残りは堂々とオドオドと、対照的だが後には続かない。
「なにしてる⁉ 行くぞ‼」
「行くわけないでしょ? 私は死にたくないっての」
「わ、私も死ぬのはちょっと・・・」
行くぞといっても二人が来ないから、その場を離れるに離れられないのだろう。イラ立った様子でしかし、動く気配はない。
それはそうだ。なんといっても格好がつかないからな。
最善は一人で孤立させることが狙いだったが、悪くない結果じゃないか? なにせ、パーティーで見ても半々での対立。ソロ組を含めれば4対2の圧倒的有利だ。俺とブロンソン教官もどちらかと分けるなら4人側だしな。
「それで? 聞きたくねぇって奴はいるか?」
改めて確認する。
荒ぶる少年は、
「ッ‼ クソッ‼」
と悪態をついて、それでもその場を離れることはなかった。
もし一人で・・・あるいは二人で消えた場合はブロンソン教官に任せようと思っていたが、出番はなかったみたいですよ。良かったですね。
隣に向けて笑って見せると、はぁ・・・と息を吐いていた。
テンポ大事に、と思ってたら超短い