魔法構成
「魔法の構成順についてだが、ケイト。お前の詠唱は確か、雷よ。から始まってたな?」
「は、はい」
「その後が、輪をなして、印に~・・・なんだったか?」
「印定めし敵に群がり、爆ぜよ。です」
「あぁ・・・そうだったな。この場合、構成順は属性、形、対象、効果の順だな。じゃぁ俺の詠唱がどんなだったか、覚えてるか?」
「印に集い、爆ぜよ雷撃」
「よく覚えてたな。その通りだ。なら、構成順がどうなってるかも、わかるよな?」
「対象指定、輪郭形成、現象効果、属性決定。ですよね?」
「あぁ。上出来だ」
「基本、ですから」
褒められたのが嬉しかったのか、どことなく自信を見え隠れさせている。
「じゃぁまぁ、なんでそうなるか・・・わかるか?」
「なんで・・・ですか? そんなの・・・」
個人の差。つまり好みだ、とでも言いたそうだな?
だが、違う。
「魔法は想像力をもって魔力を操る。つーことは、想像する過程で魔力を消費してるってことになる」
「それは、そう・・・ですね」
「なら聞くが、想像するときに・・・まず、なにを想う?」
「なにを・・・? なに、を・・・」
真剣に考えてるんだろう。
ケイトは口元に手を当てて、俯いてボソボソなにかを言っている。
その隣で、自分はどうしたらいいんだろう? と手持無沙汰なエイラにも、
「お前にも関係あることだぞ? 強化魔法も魔法だろ。ちゃんと考えてみろ」
「はい⁉ え、まぁ・・・はい、そうですね。すみません」
一緒に考えるように促した。
しばらくして、
「私は・・・仲間の活躍、というか・・・どうなるのか、を想像してますね。たぶん」
「わ、私も、魔法が当たった時のことを考えてる、気がします」
2人は似たような結論を導き出したようだ。
「ってことは、効果を一番期待してるわけだ」
「そう・・・です、ね。たぶん、そういうことだと思います」
「そ、それ以外にあるんですか?」
「そうだな。少なくとも、俺とは違うが・・・別にそれが問題なわけじゃない。ただ単に、始めに想像するってことは、最も意識してるってことになるはずだ。つまり、魔法を構成するうえで一番魔力を消費している箇所だ」
「ということは、私達は効果に一番魔力を使ってることになりまね。おかしいことじゃないと思いますけど・・・ゼネスさんは違うんですか?」
「俺はまず、誰に。を想像するな」
「た、対象指定、ですか」
「戦闘ではそれが一番重要だと思うからな」
まずはミスしないこと。一つのミスが仲間や自分の死を招く戦場なら尚更だ。
「だから、俺は最初に対象から入る。何事も、始めが肝心だっつーだろ?」
「じゃ、じゃぁ私の詠唱は間違ってたってこと、ですか?」
「そうでもない。俺とは逆に、仕上げに力を入れるってやつもいるだろう。どっちが正しいってもんでもねぇ。ただ中級みたいな、狭い範囲指定魔法なら、先に対象だけ決めちまえば、後は効果だけ意識しても魔法として成立する。俺の詠唱が2部構成で対象・形。効果・属性になってるのもそれが理由だ。慣れとも言うがな」
「慣れ・・・ですか。でも、私の場合は・・・」
「属性、形、対象、効果の順だと、後になるにつれて魔力の消費量が上がっていく。それ自体は悪いことじゃねぇが、逆算式である以上、時間はかかるだろうな。なにより、属性と効果の位置が離れてるせいで威力が落ちてる可能性がある。見直してみるのも手だ」
「見直し・・・」
「2部構成にしてもいいし、対象だけ先に持ってきて後は流れにしてもいい。それだけでも詠唱は短くなるし、威力も多少は上がるだろう」
「多少、ですか・・・」
「威力を上げたいなら装備を変えるべきだ。本よりも杖だな。杖にしても、宝石でも結晶でもいいから、なにかしら付けとくべきだ。魔力の込めやすさが違う。威力が欲しいなら、魔力を増幅させるわけだから触媒はデカい方がいいが、持ち運びや戦闘にも関わる。その辺りは今後、だな」
いきなり全部は流石に無理だ。
魔法から使えるようになればいい。
「エイラみたいなギフトなら、楽だったんだけどな」
「私ですか⁉」
「あぁ。体の一部に関係するようなギフトなら、そこに魔力を集めれば杖の代わりに出来るからな」
中には目から光魔法を飛ばしてくる変態もいるぐらいだ。
「じゃぁエイラは手から魔法が・・・? う、羨ましい」
「そう、かな? その感覚はちょっとわからないけど。でも私は攻撃魔法使わないし、あんまり関係ないんじゃ・・・」
「いや? お前には攻撃魔法と格闘術を覚えてもらうぞ?」
「え?」