才能?
「なんで集まったか、わかるか?」
ちょっとでもいいから、なにかしら・・・気付いてくれてたりしねぇかな? と淡い期待をもって尋ねるが、思ったような反応は返ってはこなかった。
本当に、ちょっとした違和感でも良かったんだが・・・どうする?
戦い方ってのは臨機応変であるべきなんだ。
もちろん。基本となることもあるが・・・それでも、自分達に出来ること、相手がやってきそうなこと。
それらを考慮して組み立てるもので、これだけやってりゃいい。みたいなもんはねぇんだ。
だから、今。こうやって戦え! と言ったとして、こいつらはそのことに気付けるのか?
今まで、なにも考えずに一辺倒な戦い方をしてきて、そのことに疑問も抱かなかったのに。
順番だけ変えて終わり。ってことにはならねぇか?
「こんなこと、言いたかねぇが――」
「――才能がないとでも言いたいのか?」
もうちょっと頭を使え・・・って、言うつもりだったんだが、その前に遮られた。
「人の失敗を盾に、憧れを否定して、望んでもいないものを押し付けて、何度か同じことを繰り返したと思ったら、その意味がわからなきゃ才能がないだと⁉ ふざけるなよ‼」
怒りに満ち満ちた言動。
くだらない話もしたし、慣れないこともさせてる。フラストレーションが溜まるのはわからなくもないが・・・それにしたって、なんでそんな話になるんだか。
「誰も言ってねぇだろ? そんなこと」
「だったらなんだ‼ その目は⁉ 期待なんてしていなかったとでも言いたそうな、鬱陶しい目はなんなんだ‼」
この目がなんだと言われれば、面倒くさいという目だ。
知識や概念を一から教える労力わかってんのか?
こっちは色々、心配してやってんだぞ?
「見慣れてるんだよ‼ そんな目は‼ 知ってるんだよ‼ なにを考えているかぐらい‼ それなら初めからそう言えよ‼ わざわざ嫌がらせみたいなことしやがって‼ 見下して‼ 嘲笑って‼ 楽しかったか⁉ どうなんだよ‼」
途中から、なんか別の話になってる気がしないでもないが、
「そんなに知りたいのか? お前に才能があるのか、ないのか」
見開かれたジェイドの目は一体なにに揺れているのか。
「・・・・・・そんなの、聞くまでも――」
数秒の沈黙を破り、逃げ出そうとするその言葉に、なんとなく・・・わかった気がした。
「――あるさ。お前には冒険者になる才能がある」
きっと、こいつにもなにかあったんだろう。
俺やクライフ、ヨハン、リミアにもあったように、ジェイドにだって冒険者でなけりゃならない事情があったんだろう。
俺はマヒしていた。
貴族が冒険者になることに。
そうだよな? 理由もなしに、好きだから。で、出来ることじゃねぇよな。やっていいことじゃねぇよな。
特にお前は、親を納得させてきたんだもんな。
俺達とは違う覚悟をしてきたはずだ。
だったら、逃げるなよ。
「冒険者にとって一番大事なこと。お前らには教えたはずだ。覚えてるよな?」
「死なないこと、でしたよね?」
俺の言葉が予想外だったからか、動けないでいるジェイドに代わってエイラが答える。
「そうだ。生きて帰ってこそ冒険者。死んじまったら、なにもかもを失くすんだから当たり前だ。けど、当たり前だからって簡単なわけじゃねぇ。むしろ、当たり前なことほど難しいもんだ」
基本的なことほど求められるものが多い。
故に、完全とは程遠く、完璧には至らない。
「どれだけ準備をしようとも、予想外のことは起きる。計算外の事態に陥る。自分より強い敵と出会ったり、逃げられなかったり、囲まれたり。そんな状況で生還するのは簡単なんかじゃない」
それぞれ、蟻を思い出しているだろう。
その時に感じたであろう恐怖、絶望。それらを知って尚、ここにいる覚悟。
「その一番難しいことをやってのけた奴に、才能がねぇとは・・・言えねぇよな?」
嘘にしていいわけがない。
「・・・俺様は、本当に・・・冒険者になれるかよ?」
「お前が、勝手に諦めねぇ限りはな」
「・・・・・・そぉかよ」
顔を逸らして、震える声で強がる。
他の3人も、頷いたり涙ぐんでたりと、なんかいい雰囲気になってるが。
俺はこの後こいつらに、もっと頭使えよ。バカか? って言うことになるんだが・・・・・・・・・どうすっかな。