基本的なこと
仕切り直して、翌日。
「だから‼ 無駄に動くんじゃねぇ‼」
俺はジェイドが構える盾を蹴り付けながら叫んでいた。
「ぐっ‼ こんのっ‼」
ジェイドはイラつきからか、構えた盾を押し出そうとする。
「それをやめろってんだろ?」
それをさらに、手のひらでぶっ叩き押さえつけて止める。
今までジェイドは重い鎧を付け、軽い武器と盾を使っていた。
そのせいか、責められた時に苦しくなるとすぐに手を出してしまう。
それじゃ駄目だ。
なにも、いじめで理不尽なことを言っているわけじゃない。
これから、ジェイドはパーティーを守る盾役を担う。
その盾役がちょっとのことで狼狽えてたら、敵が散らばることになる。
なにより、体と武器の重量が入れ替わった今じゃぁ、その癖はただ隙をさらすだけ。
ここで矯正しておくべきだろう。
「お前は仲間の盾だ。攻撃は他に任せりゃいい。どうしても攻撃に参加したいなら、絶対に外れない、効果的な一撃だけを狙え」
「そんな攻撃・・・‼」
「あるわけねぇって? ないわけねぇだろ? 答えを言うなら、シールドバッシュがそうだ。相手の攻め気を読んで、出ばなを挫く。前掛かりになった奴には避けれねぇし、当たれば崩れる」
そして、それは盾が強固であればあるほど起こしやすい。
「まずは敵を見ることだな! 今なら、俺だが‼」
「うぉわ⁉」
また、中途半端に持ち上げた盾を今度は引っ張り、反動を利用して斜めに切り込む。
重い盾を別の意思で動かされれば、当然だが体勢は崩れる。
ジェイドは前につんのめったようになり、俺はその横を取る。
さぁ行くぞ! と見せかければ、
「ジェイド様‼」
と、キューティーが突っ込んでくる。
突きから振り下ろし、切り上げ、回転斬り、さらに反転横蹴り。
流れるような連続技を・・・もう3回は見た。
それを大きく避けて距離を開けると、
「雷よ。輪をなして、印定めし敵に群がり、爆ぜよ!」
パリパリと俺を中心に紫色の光が円形に広がり、
「サンダーボム!」
収束して、爆発する。
俺はさっさと飛びのき、ドォン‼ と土ぼこりが上がるのを眺めた。
敵を指定しての攻撃は中級魔法から。
威力も上々。悪くはない。
つっても、前兆があるんだから避けられねぇもんでもねぇ。
敵指定と雷の速さに甘えた魔法だ。
そうして、4人から遠く離れると・・・・・・なにもしてこない。
様子見。と言えばそうなんだろうが。
どうしたもんかな?
かれこれ3度は同じようなやり取りがあった。
毎度、ジェイドが攻撃を受けそうになったら、キューティーが割り込んできて、そこから離れたタイミングでケイトの魔法が飛んでくる。
原因はわかりきってる。
ジェイドだ。
元はあいつが、俺が俺がと前に出て、それを回りがフォローするといった戦法? って言っていいのかわからねぇが、まぁそんな感じで戦ってたんだろう。
それがなくなったせいで、起点がねぇんだ。
これからはまったくの逆。
ケイトの魔法で仕掛けて、近寄ってきたところをキューティーが遊撃。その2人を狙う敵にジェイドが割って入る形にしなきゃなんねぇ。
ジェイドに割って入るだけのスピードと余裕があるかって問題もあるが、そこは攻撃役2人の動きかエイラの強化魔法でどうにか。
後は、強化魔法以外で役割がないエイラをどうするか。
その辺りも含めて、自分達で気付いて欲しいんだが・・・。
もう2、3度。仕掛けてみて、改善の兆しもなし。
仕方ねぇ。
「集合」
全員を集めてお話タイムだ。
なんでもかんでも、教えりゃいいってもんでもないと思うんだがなぁ?




