勇断の日
「ゼネス・C・グラーニン。前へ」
「はっ!」
謁見の間。
数多くの王侯貴族に囲まれながら、陛下の言葉に従う。
「この度の多大なる働き、誠に大儀であった。ガルバリオ国内における紛争の終結、隣国たる帝国との和睦、なにより――古代竜の生け捕り。ついぞ、歴史にも聞いたことのない偉業をここに称える!」
「身に余る光栄です」
「その功労に報いるため、其方には褒美として、新たなる家名を授ける! その名も”グランバリオ”爵位は大公とする。以後も変わらぬ忠君を願うものである。また、領地についてだが・・・生憎と我が国には其方に割譲できる未管理領が存在せぬ。しかし、名ばかりの大公では褒美とは言えぬだろう。そこで其方へ、大公として初めての任を与える。北大陸の調査とそれに伴う国土の拡大である」
「皇王陛下のお言葉、しかと拝命いたします」
「良い返事だ。其方の続く功績に期待する。皆からも賛辞と祝福を。ここに新たなる家、新たなる血の参列が決定した! ガルバリオ皇国の未来に繁栄と栄光を望む!」
あまりに仰々しいやり取りだが、謁見の間には割れんばかりの歓喜の声。
中には見知った顔もあり、本心からの歓声もあれば、そうではないものも含まれているが、流石に知ったことじゃねぇな。
このやり取りは全て事前に決められていたもので、それ以前に。
北大陸へ進出する身には嫉妬も僻みも対岸の火事だ。
「まさか過ぎるな・・・結末も、過程も、現状もだ」
北大陸から帰ってすぐ、無理を言って陛下にご報告した時の反応だ。
「そう仰るお気持ちは理解できます。私にしても、予想からは遥かに外れた結末に戸惑いました。ですが、現状はお伝えした通りで、あまり時間はないかと・・・」
「間違いはないのか?」
「改めて龍王に確認させましたので、まず間違いはないはずかと」
「北大陸の諸国が全滅して、その国民さえ残っておらんとは・・・」
「精神を失った人間は数えきれず、その逆である常人を探すのは困難な状況です。これを治めるかに限らず、手を施さねば災厄の種になるでしょう」
「悪しき考えのものに知られた時のことなど、考えたくもない」
ならず者の国が誕生するのは明白だ。
しかも、城壁や要塞を含めた機能も有する。
馬鹿故にならず者となるはずが、土台を手に入れたなら何者かになる奴も出てくるだろう。なれの果てにあるは災厄と相場が決まってる。
「丁度、其方の働きによって帝国との和睦も適ったのだ。北の精鋭が皇都に留まっているのも都合が良い。北大陸の調査を命じ、派兵させよう。それと、ドラゴンのことだが――」
「安心してくれていいよ。お爺様。この国にも研究所にも、持ち帰ってはいないからね」
「ジーナか。では?」
「北大陸に置いてきたよ。結界に閉じ込めたまま、龍王君に見張らせてね」
「其方らは龍王をそれほど簡単に顎で使えるのか・・・?」
「少なくとも、私には不可能だね。ただ今回の件で言えば、向こうにも負い目があるようだからね。そのおかげかな?」
「その言い方であれば、其方以外になら言うことを聞かせられるよう聞こえるが、まあ良い」
呆れ気味に息を吐く陛下。
「では、どうやって帰った? 僅か2日ばかりの出来事になるとは、夢にも思わなかったぞ」
「そのことですが、父上。ゼネスは転移を使えます」
「なにっ⁉ ジーナの魔道具をも使わずにということか⁉ クライフよ‼」
「はい。それどころか、彼女が作った転移扉には自在に割り込むこともできるそうです」
「それは不当に侵入できるということで良いのだな?」
「その通りです。そのことは2人も認めています。必要ならばここにいない仲間達にも証言させますが、いかがしますか?」
「良い、内密にせよ・・・・・・それはどの程度だ?」
クライフから視線が飛ぶ。
「魔力さえあれば限りなく。裏の山にドラゴンを運ぶことも可能です」
「・・・・・・・・・・・・」
「父上。驚かれるのも無理ありませんが、幾ら国益のためであっても――」
「なにを言う‼ ゼネスよ‼ 移動するぞ‼」
押し黙り顎に手を当てていた陛下が、気にしたクライフを押し退けるよう勢いよく立ち上がる。
「どちらへ?」
「無論! 裏の山に決まっておるだろう‼」
「ちょ、ちょっと待ってください! 父上‼」
「なにを待つことがある‼ 私も男だ‼ 其方らが倒したというドラゴンの姿! この目で見れるのならば見るに決まっているだろう‼‼」
不穏さを吹き飛ばす無邪気な提案。
断るわけにも・・・な。
御父上を含め、極一部の忠臣を連れてのお披露目会は、それはそれは好評だった。
式典については大分後にになってから、坂でも転がる様に話がまとまった。




