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終着4

 崩壊が始まる。

 切り取られた世界の隅から綻びはじめ、剥がれるままに欠け落ち、無へと溶けゆくように縮小していく。


 だが2頭のドラゴンは、そんなことに気付きもしねぇ。

 ただ存分に語らい合うのみ。

 視線が外れることさえもなく。

 確かな幸せだけが存在していた。


「こんな最後なら、羨ましくなるな」

「見た目こそ幻想的だけれどね。研究者としては御免被りたいところだよ」

「どうしてだ? 幸せを感じたまま死ねるなら、その方がよくないか?」

「クライフ君。幸福なだけの死に様というのは何も後世に残せないのだよ。例え凄惨な結末だったとて、何かを残してこその人生じゃないのかい?」


「功績は死に様で塗り替えられたりしないさ」

「けれど風化はするものだ。鮮烈でなければね」

 どう思う? と、2人して話を振る。


 無理に話題なんぞ作らねぇでもと思うが、

「北大陸の人間丸ごと見殺しにした悪名を手に入れた俺からすりゃ、どっちも過ぎた願いだな」

 待つだけにするには積みの自覚が重すぎるのも事実。


「昔読んだ本に出て来た戦争の英雄が、似たようなことを言ってましたね。でも、その英雄は仲間に囲まれて幸せに生きたそうですよ? ゼネスさん」

「教会の教えにも、如何なる者でも安らかなる時を望んでよいというものがあります。正義を掲げて誇りに思ってくださいとは言いません。ですが、恥る必要もないのではないでしょうか?」

「ママが言ってたわよ! いつかを夢見るのは贅沢だってね! まずは今を必死に生きてみなさい‼ そうじゃなきゃママが怒鳴り込んでくるわよ‼」

 皮肉混じりの文言には、随分と効く返答が並ぶ。


 それにしても。戦争の英雄の様に、恥じることなく、今を必死に生きろか。

 要約すると、いいから責任を取れって聞こえるな。


 実際、まずは調査団の結成からだ。

 今回の報告を陛下へ届ければ、北大陸の現状を調べなきゃならなくなる。


 当然だが、俺はそれに同行することになる。

 大陸間の移動にも尽力することになり更には、ここまでの情報に一切の嘘がなかったなら・・・北大陸は丸ごとガルバリオ皇国が治めることになる。

 人と呼べる存在が居ねぇんだからな。


 そうなりゃ代官の選出だの、領地の割譲だの、権威を維持するための利権問題だのに取り組むこととなるだろう。

 どんな現実を前にしても、振り返ることも、汲み取ることもできないほど、時間に追われる日々に襲われるはずだ。


 だから考えなくともいい・・・とは、思わねぇんだがな。

 余裕がなけりゃぁ入れ込む隙間もなくなる。

 そうすることが俺のためだと――そう思ってるんだろう。


 どうせ後戻りができねぇなら、後ろを向くような真似はやめるか。

 仲間を不安にさせるだけで、意味なんざねぇんだから。

 背負うことと、引きずることは同じじゃない。

 それを証明するために生きるのも、きっと楽じゃねぇさ。


 それならここで消え逝く魂達も――・・・いや、それこそ欺瞞だな。

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