終着3
終着は目の前に迫る。
投げられた賽を握り直すことはできねぇ。
「・・・・・・・・・」
だからただ、見ていた。
終わりの様を。
己で描いた都合のいい世界を。
「後悔しているのかい?」
黙った俺にジーナが続けた。
「・・・どうだろうな。望んだ結末なのは間違いねぇ」
「彼女――でいいのかな? 手に掛けることへ、責任を感じているんじゃないのかい?」
「そうじゃねぇよ。覚悟はあった。俺にも・・・」
「彼女にも?」
「・・・あぁ」
この憂鬱は責任だとか、そういうもんじゃねぇ。
もっと単純な――・・・。
「世界を壊すことの意味って奴を、目の当たりにしてる気がしてな」
誰かの幸せを恨んだことはなかった。
それでも、終わらせなければならない。
今まで手に掛けた命は数えきれねぇが、ここまでハッキリ生活を目にしたことはなかった。
涙を流す誰かの存在も、それで失われる絆や関係も、黙殺してきた。
見ねぇことで容認してきたんだ。
それが――、
「目の前にあると心が痛むというわけだね?」
「違う形にはできなかったのかって、ここに至って思うんだ」
「復讐に駆られ過ぎたとでも? 君の怒りだって正当なものだよ?」
「正当かどうかはどうだっていいんだ。ただ、失われるものを直視したせいでその大きさと、後始末について考えてただけだ」
「後始末? 彼らが消えたところで―――・・・」
デカい損失であることが思い出された。
「そうか、アレは縮図なんだね・・・」
「そういうことだ。私欲に走った結果だと、嘲ってくれてもいいんだぜ?」
「嘲うはずがないだろう? それにだ。改心させられたとして、戻せた保証もないんじゃないのかい?」
「そりゃな・・・」
あのドラゴン達はこのまま消える。
この世界から切り離され、その空間ごと消滅する。
それはもう確定した事実だ。
俺の魔力で作られた空間に、無限の力はありゃしねぇからな。
直にそうなる。なにもしなくとも。
「忙しくなるね」
「まずは実態の調査からだろうな」
「何年かかるだろうね?」
「人手も何人が必要になることだか」
気の遠くなりそうな現実に、
「父上への口添えなら手を貸すぞ」
「教会に打診する際はお任せください」
「僕は~~、僕に出来ることなら手伝いますよ! なんでも!」
「引退を考えてる冒険者達にも声を掛けてみたら? それかギルドの上層部まで巻き込むとか、どうかしら?」
仲間達が明るい提案をくれる。
全員が正しく事の次第を把握していた。
望福教の教祖を名乗ったドラゴンに奪われた北大陸の人々の精神は、もう取り戻せやしねぇ。
もしドラゴンを説得できてたとしても、あの世界で長く過ごしてしまったなら、正常な状態には戻らなかっただろう。
つまり、あの2頭の光景は北大陸にあった人々・・・、その総ての最期だ。
言葉は聞こえず、表情も人のそれとはかけ離れていようとも、流れる涙と交わる視線は感情を熱く揺さぶり刺激する。
それが余計に、知らねぇ誰かを呼び覚ます。彷彿とさせる。
顔も、名前も、声も、本当に何も知らないはずの人々を。




