終着2
「~~~~~ッ‼‼ ―――・・・・・・」
「――ッ‼‼ ・・・、~~~~・・・」
2頭のドラゴンは自分達だけの世界を作る。
何もなくとも、ただお互いが居ればそれでよかった。
「急展開だね?」
いつの間にか、侍るよう隣に立ったジーナが言う。
「あっけねぇもんだろ?」
「まさか、あまりにも劇的だったよ。というかね、ドラゴンと戦っておいてあっけのないことなんてあるものか‼ そんなことを言えるのは君ぐらいのものだよ!」
血相を変えて・・・って程じゃねぇが、まぁ嘘じゃなさそうだ。
「始末するだけなら、もっと手っ取り早い方法もあったんだけどな」
「聞かなかったことにするよ。君をあまり遠くに感じたくないからね。それはさておき、そうしなかった理由はなんだい?」
「もちろん、憂さ晴らしのためだ」
「嘘だな」
反対側からポンと肩を叩くのはクライフだ。
「お前は俺達の身を危険にしてまで気持ちを優先しない」
「だったら最初っからお前らを連れて来ねぇんじゃねぇか?」
「そうだな。だから最後まで迷ってたんだろ?」
「・・・全部が嘘ってわけでもねぇよ」
「じゃあ訂正する。気持ちの問題だけじゃないんだろ?」
「いいや、気持ちの問題だ」
「その気持ちの中身が違うんですよね?」
エリックが会話を奪う。
「それはあのもう1頭のドラゴンと関係がある。違いますか?」
「分かってて訊いてるだろ?」
「ははは・・・ドラゴンとの会話はこっちでも聞いてましたから」
「俺の言ってたことが本当かは誰にもわからねぇことだ」
「それでも、信じるだけの理由があった。それが感情任せだったから気持ちの問題ってことですね」
「真偽なんてどっちでもいいんだよ。求めるものが手に入れば、それが救いだろ」
「その割には納得いってない顔じゃない」
前から痛いとこをついてくるのはアンナだ。
「納得いってのはこっちも同じなんだから、説明はして欲しいわね。あの妹? とは、どこであったのよ!」
「五感を奪われた時、ドラゴンの精神に取り込まれてた。その中で会った」
「なるほどね、内緒で切り札を取っといたわけじゃないと。でも砲竜の姿になってたわよね? それはなんで?」
「精神の乗っ取りと同じ仕組みだ。アイツは取り込んだ精神を操り、それを標的に送り込んで乗っ取る。妹の精神が砲竜に乗り移ったのは、俺がはじき出された時の余波かなんかが原因だろう」
「はじき出された・・・? ゼネスさんは自力で帰って来たわけではなかったのですか?」
残されたドラゴンの肉体に結界を張ったフェリシアが最後に来る。
「俺を送り出したのはグレアムの爺さんだ」
「教皇様が⁉」
「アイツは殺して回った全員の精神を取り込んでやがったのさ」
「そんな・・・ッ‼ それで教皇様は⁉」
「さぁな。お前や他の―――孫のユノなんかには恨まれるかも知れねぇが、別れは済ませて来たつもりだ」
「そう・・・ですか、では会話の中で出てきた幸福な世界というのは――」
「アイツの作り出したまやかしだ。正体については・・・聞いてたな?」
「・・・・・・はい」
全員の視線が2頭のドラゴンが封じられた結界へと注がれる。
「結局、納得できない理由はなんなのよ?」
「俺は妹と約束したんだ」
「なんて約束したのよ?」
「願いを叶えてやるって」
「・・・それって、誰の?」
「・・・・・・この場合は、両方のってことになるな」
「なるほどね」
嘆息一つでアンナは納得したようだ。
「あの会話にはそういう意味があったというわけだ。別に心を折るためだけじゃなかったと知って、私は少し安心したよ」
「互いを認識し合えりゃ願いは変わるはずだ・・・そう思った」
「それは間違ってはいなかったと思うけれどね? 見ている限り」
「だが、欺瞞だ」
妹の本当の願いは兄の生存。
兄の本当の願いは神となること、そして世界を変えること。
そのどちらをも叶えることは出来ず、その上で。
妹の願い『兄の願いを叶えて欲しい』さえ・・・無理やり形を変えさせた。
存在を見せつけ、否定させ、後悔を植え付け、信じさせた上で取り上げた。
そうすることで願いを『妹と話したい』そうなるよう誘導した。
狙い通りの結果が生まれ、兄と妹は再会を果たし、両者の願いは叶った。
歪められた末に、俺という敵の手によって、決して望んでなどいない形で。
心が痛むのは錆びに蝕まれるからじゃねぇ、良心だけを鑢でゴリゴリ削り落されるからだ。
死者を利用して、他者の精神を操る。
望福教か・・・・・・。
身から出た錆っつーには洒落が利き過ぎてやがる。
一体どっちが―――・・・なんてな。
後悔するにはもう遅すぎる。




