終着1
「我の内に・・・居たというのか? ずっと―――あの日から・・・?」
「なにもねぇ世界での時間は長すぎる。やることがねぇからな。行動に意義も意味も見出せねぇ空間だ。お前が思ってるよりも永くコイツは苦しんだ」
「なぜだ・・・なぜ、我は気付けなかった」
「身勝手な幻想だけを見てたからだろう。感傷に浸って、現実と向き合わなかったからだ。誰かの心をひたすらに、好きなように利用して、何も見ようとしなかった。テメェ自身の心とさえ、向き合うことをしなかった。だから、世界から剥がれ落ちたんだ」
ドラゴンの目に映るのは、横たわる自分自身。
あるいは分離しただけの傀儡か。
「・・・・・・・・・わかった。認めよう、我は―――」
「必要ねぇよ」
笑って答える。
「なに、を――・・・・・・⁉」
「お前は神になったんだ。責任だけ持っていけ」
「どういう意味だ・・・?」
「本気で望んだ願いは叶うんだろ?」
妹の望みは、ただ1つ。
『それならね、私は―――おにぃちゃんの願いを叶えてあげたい』
どこまでも善良で。
なによりも愚劣だ。
「ギィ、アアアアアアアァァァアァ―――ッ‼‼」
物理障壁と魔法障壁の結界を同じマスに重ねる。
そうすると。その内側には、なにも存在しない世界が出来上がる。
あくまでも疑似的に、だが。
なら、その中に生物が入っていたらどうなるか?
砲竜の絶叫がその答えだ。
アレは断末魔。
その体はすり潰されるように引きちぎられ、一瞬だけ強く光る。
血や肉は粉末の様になって底へ押し付けられた後、外へ押し出される。
光は魔力の残滓だろう。
僅かに空へ上って消える。
「貴様ぁあああああああッ‼‼‼ なにを、なにをして―――ッ‼‼‼」
音を落とす。
残響のままに注視する。
余った結界を全部使った疑似世界。
その中に佇む1頭のドラゴンを。
「――――、・・・・・・」
口が動く。
だが、何かが聞こえることはねぇ。
あの内側には何も存在しねぇはずなんだ。
きっと。
あの一回り以上小さいドラゴンも幻覚だろう。
「なんだ、なんと言っているのだ⁉」
縋りつくように顔を寄せても、やはり何も・・・聞こえやしねぇ。
そしてそのまま、別れの時だ。
その半透明な体は空間の中へと溶け込む。




