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退治9

 真実を告げる。


「それで気付いたんだよ。お前の言う幸福は空言で、テメェ自身も信じちゃいねぇんだってな」

「出鱈目を言うなぁああああああ‼‼‼‼」

 決死の咆哮。

 肉体でやってりゃ喉ぐらい裂けただろう。


「精神だけの世界には苦痛などなく、常に満たされ、ありのまま思うままに生きることが許されているのだ‼‼ 争いも、その種となるような感情も、なに1つ存在しない‼‼ 素晴らしい世界に違いないッ‼‼‼」

 今にも崩れそうな半透明な体で立ち塞がるドラゴン。


「ならなんで、お前はその世界に居ない? 今こうして、現実に触れようとしてる? 閉じこもっていれば、お前の心は満たされ、救われるはずじゃねぇのか?」

 それを解すように1つ1つ刺し開いていく。


「当然ッ‼ この素晴らしさを数多の者達へ伝えるために決まっている‼」

「そうやって取り込んだ奴らの声を聴いたのか? 会いには行ったのか? そいつらが幸福で満たされている瞬間を確認したか?」

「せずとも伝わってくるのだッ‼ 感謝の気持ちが‼‼」

「あり得ねぇな。あの世界には感謝どころか、感情すら残っちゃいねぇ」

「貴様はッ、また――‼‼」


「総てがあれば満たされるなんてのは幻想だ。ありとあらゆるものが無限にあったとして、そんなもんに意味なんざねぇ。自己と他者の、なにもかもが同じなら・・・どうやって区別すればいい? 違いがない世界になんの価値がある? 全てが有り余るなら、それは手に余るってだけのことだろうよ。それじゃぁなんにもねぇのと変わりゃしねぇ」

「なにを言っている⁉ 望むものが違えば、結果は自ずと変わるに――⁉」


「根源の問題だ。なにかを欲しいと思うのはなぜだ? 持ってないからだ。だが、それが余ってたらどうなる? 手に入れて、その先は?」

「次に欲するものを手に入れれば良い‼‼」

「だったらその次は?」

「ッ‼ 何度でも! 繰り返せば良いだろう‼‼」

「そうして総てを手に入れた後は? なにをすりゃぁいいんだ?」

「そんなもの―――・・・・・・・・・ッ」


 そうだ。

 行き着く果てに待つのは停滞。

 渇望こそが原動力になる。

 飢えるから金を稼ぐ。食うために。経済の基本であり基礎だ。


「もう一度言う。お前の中には、なにもなかった。なにもな」


 これは本当のことだが、解釈は正しくない。

 心の中に全てを再現するなんざ不可能だからだ。

 故に真実として、ドラゴンの作り出した精神世界には初めから、本当に。


 なにも、なかったんだ。

 だからこそ、コイツがなにも信じちゃいねぇってことを確信した。


「根本の話をしようぜ。コイツが妹である証明だ」

「ま――っ・・・・・・・・・」

 待て、なのか。まだそんなことを、なのか。

 どっちだって構わねぇ。


「お前がいつ、その力を手に入れたか。なんでそんな力だったか。その力にどうやって気づいたか」

「・・・・・・・・・・・・・まさか」

「そのまさか以外になにがある? 家族を失った悲劇こそが引き鉄になった。肉体と精神を分離するほどの衝撃と共に、お前は内側に世界を作った」


 そして。

「最初に回収したんだよ。その場に残ってただろう家族の魂って奴をな」

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