退治8
「ゼネス‼」
「大丈夫だ‼」
足元を強く意識するだけで、苦労なく意識を戻すことには成功した。
これも爺さんのおかげだ。
それとは別に、意識が戻ったことを認識するのにズレが出た。
なにせ目の前が真っ暗で、なんならぶん殴られたような感覚があったから。
原因は、
「その砲竜はまだ生きてる‼」
「言われなくとも知ってるさ・・・」
言うまでもく激突してきた砲竜。
その背中が目の前にあったせいで視界は黒く、脳には衝撃の余韻が残った。
急ぎ駆け寄ってきたクライフを手で制しながら砲竜を掴むと、
「グィイ・・・・・・」
短く力のない声で鳴く。
元々、俺との戦闘で負傷していた肉体で、砲撃の反動を使うなんつー無茶な移動法。魔力も体力も残り少ない、放っておけば絶命するであろう死に体。
俺には言葉さえ理解できなくなったが・・・・・・。
「わかるか? お前の業の被害者が誰か」
せめて苦しまねぇようにと抱いて見せる。
「ギ、グィ・・・ンッ!」
涙ぐましい努力だ。
虫の息で絞り出す、きっと兄と呼ぶ声。
だが、
「なにを今更、砲竜の1頭如き――ッ‼‼」
半透明な節穴には、もはや真実が移ることはなかった。
「・・・残念だったな」
「ギィュ、アっ!」
まだ諦めたくねぇんだろう。
必死に、必死に首を振る。
まるで懇願するかのように。
言葉が駄目でも、伝わるように。
「気持ちは分かるがな、時間を与えるわけにはいかねぇんだよ」
透ける瞳から焦りが退いていく。
好機だと、立て直せると、そう考えている。
不透明な肉体を見れば、爆発の直後より呼吸も落ち着き、揺らめく煙も鳴りを潜めている。
「コイツはお前の妹だ」
腕の中で、ビクンと震える。
振動が行き渡る様に、周囲の仲間へと波及し、そして。
「・・・・・・どこまでもっ‼ 愚弄するつもりかッ‼‼」
烈火の怒りで半身をもたげるドラゴン。
「死んだ者の名誉さえ‼ 道具として利用するのか⁉ 貴様は‼ 我が妹が、そのような‼ そのような惨めな存在だと⁉⁉ 過去を知って、それだけで―――ッふざけるな‼‼‼」
「だが、事実だ。テメェは他者の精神を飲み込んで、利用してきた。テメェの内側にしまい込むことが救いになるだとかぬかしてな。くだらねぇ価値観だ。そんなはずがねぇことは、テメェも知ってただろうに」
「なにがくだらぬっ! 精神だけの世界であれば、どんな願いでも叶うのだ‼ 全てがあるのだ‼ 望みの、願いの、幸福の、すべてが‼‼ 我は疑ってなど居らぬ‼‼ 必ず―――」
「なにもなかった」
遮って、突き刺す。
「テメェの心の内側には、なに1つありゃしなかったぜ」




