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7・魔女の野望(※小さい様な大きい様な)

【前回のあらすじ】

逃げた魔女(♂)が好みの男子の尻型集めてた。

記念すべき百個目は一番好みの王子様のがいいわ~よし! 襲っちゃお★(←今ココ)


「ほーほっほっほっ! さぁ、大人しくお尻の型をよこしなさぁい!」

「断る…!」

「断固拒否の構え!」

「そんなもの採られてたまるか! バーカ!」

「出来るものならやってみろ! 出来るものならなぁ!」



「いや、そういう台詞は人に隠れずに言ってくださいよ」



 何、全力でか弱い女子を盾にしてるんだ。そろそろ怒るぞ。



 + + +



「また貴女なの!? 何で毎回毎回私の邪魔をするのよぉ!」

「いえ、したくてしている訳ではないんですけど」


 寧ろ、全力で関わりたくないんだけども。おい、後ろから押し出すな、ポンコツ共。


「すみません、一度状況を確認してもいいですか?」

「別にいいけどぉ」


 魔女は不満そうな顔をしながらもそう答える。

 常軌を逸した姿と言動と行動だけど、割と素直だよね、この人。


「な、何よぉ! こっちをジッと見ちゃって…! エッチ!」

「生まれて初めて言われました」

「ちょっと可愛いからって自信過剰よ! 私を誘惑しようとしても無駄なんだからね!」

「いえ、考えた事もありませんが」


 魔女が何故か赤い顔でクネクネしている。


「た、確かにジッと見つめられると、こう…グッとくるものはあるな」

「見た目だけはいいですからね」

「中身知らなきゃ恋に落ちる被害者が続出していましたよ」

「そういう意味では、割と早い段階で中身が破綻していることが分かって良かったです」


 こいつら、誰の話をしているのか分からないけれど、酷い事言ってないか?

 全く誰の事か脳裏に過りもしないけれど、名もなき令嬢の名誉の為に全員に軽く言い聞かせておくべきじゃないか。そう、心優しき淑女を冤罪から救う為に―――


「ソルト・スプラッシュッ!」

「ブフッ!?」

「ぎゃああああああ!?」

「目が、目がぁぁぁぁ!」

「不意打ちだったから、全部直撃したぁぁぁ!?」


 王子たちが天罰によってのたうち回っている。


「え、何で今、王子たちを攻撃したの!?」

「身分差に逆らえないか弱き女子の悲しみがこの手を動かした…」

「え、思い切り逆らってない? 悪口言われてムカついたから私刑を執行したのではなく?」

「ソルト・スプラッシュッ!」

「ぎゃああああああああ!? 目がぁぁぁぁぁ!? 図星指されたら力技で解決するの良くないいいいいい!!」


 自然と動いた手が魔女に清めのシャワーを浴びせた。

 のたうち回る魔女と王子たち。辺りには人影一つ見当たらない。畜生、やじ馬共、全員逃げやがったな。

 何もすることが無くなってしまったが、そのまま立ち去るのも面倒な事になりそうなので、心優しい私はその場で待機することにした。

 手持無沙汰に天使へのお土産に拾った松ぼっくりの選別を行う。

 拾った松ぼっくりを教室まで取りに行き、遠巻きに終わったのか聞いてくるクラスメイトに首を振って、元の場所へと戻ってくる。

 まだ顔を伏せて震えている面々を横目に、袋を引っ繰り返し、綺麗な松ぼっくりだけを詰め直した。


 ―――十分後。


「ふ、ふふふ、又やってくれ、イッタァ!?」

「よ、ようやく少し見える様に…うわぁ!?」

「殿下!? 大丈夫ですか!? わわっ!? 何だこれ!?」

「気を付けろ! いつの間にか周辺に何か『マキビシ』らしき木片が敷き詰められているぞ!」

「悪質な! 一体誰がこんな悪戯を…!」

「あ、ちょっと踏まないでください。松ぼっくりの選別中なんですから」

「犯人はいつも一人!!」

「こんな量、どこから集めたんだ!?」

「何故、その情熱をもっと他の事に向けられない!?」

「そもそも貴女、こんな所でお店広げちゃ皆の迷惑になるでしょ!」


 私が正当な文句を言うと何故か怒られた。魔女にまで。解せぬ。


「はいはい、分かりましたよ。私が悪いってことでいいですよ。もう、仕方ないですね。片付ければいいんでしょ、片付ければ」

「こ、こいつ開き直って逆切れしてきやがった」

「片付けますから、ちょっとしばらく端の方に寄っててください」

「そして、当然のように松ぼっくりの為に殿下を避けさせるという…」

「いや、私も手伝おう。その方が早く終わるだろうし」

「殿下、聖人君子過ぎる」

「これで憑りつかれなきゃ完璧な主君なのに…」

「っていうか、この量をどこに置いてたんだ? 教室? どこに置いても迷惑なんじゃ…」

「いいから、手を動かす。さっさと片付けましょ。これじゃ何もできないわ」


 私と王子たちと魔女が一斉に動いたので、割と早く片付けることが出来た。


「殿下、魔女さん、その他の人。手伝って下さってありがとうございます」

「いや、別に…」

「その他の人って…」

「じゃあ、私は帰りますね」

「いや、帰さねーよ?」

「え、帰さないって…私、口説かれてる…?」

「く、くくく、口説いてにゃいわ!」


 流れる様に帰ろうとした私の肩を掴んだ下っ端Cが、何故か顔を真っ赤にさせながら噛んだ。


「まさか、彼女の事を…」

「殿下、誤解です! 真顔で睨まないで! 整ってる分怖い!」

「はいはい、じゃれてないで。仕切り直すわよー」


 そして、魔女が仕切り始めた。

 もう帰ってもいいんじゃないだろうか。


「もう何だか疲れてきたし、さっさと王子様の尻型を取って帰るわ」

「そもそも尻型なんてどうするんですか?」

「そうねぇ…椅子にしたりもするけど、やっぱり一番は手摺かしら? お尻を並べて手摺を作るの。好みのお尻を次々と触っていけるから、階段の上り下りが楽しくなるじゃない?」

「成程、アイディア商品ですね」

「後は型を模して打楽器を作るの。お尻を叩きながら音楽が楽しめるのよ」

「へぇ、色々な使い方があるんですねぇ」

「怖すぎるわ!!」


 私が魔女と世間話をしていると、いつの間にか部屋の端に張り付いている王子たちが青い顔で震えながらこちらを見ている。


「大体、型なんてどうやって取るんだ!? 何時間も拘束する気か!」

「そんなことしないわよぉ! ほら、こうやって魔法で専用の型取り機を作り出せるの。クッションみたいでしょ? この上に座ってくれるだけでOK! 特別に王子様仕様にしてあるからとーっても座り心地最高よぉ!」

「はー、よっこいしょ」

「ちょっとぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」


 目の前に椅子が出現したので座ったら怒られた。解せぬ。


「何座ってるのよ!? これ特別仕様だから作るのに滅茶苦茶時間が掛かるのよ!? 何て事してくれてんの!?」

「私が疲れている時に椅子を出した貴方が悪いとは思いませんか?」

「何その暴君の暴論!? そもそも貴方、女の子なんだから少しは尻型を取られる事に恥じらいなさいよ! 羞恥心はないの!?」

「尻型集めている人に羞恥心がどうとか言われたくないです」


 私は理不尽な物言いに果敢に言い返した。

 魔女が何だかんだと騒いでいたが、拳でお話したら静かになる。


「この方、本当に見掛け倒しですよね」

「いや、お前が見掛けを裏切っているせいでもあるだろ。王国一の拳闘士」

「何故、いつも最後は物理なんだ? 世界最強生物兵器」

「後ろには屍しか残らないとか。令嬢って何だっけ」

「か弱い令嬢の手が誤って当たってしまったらスミマセン」

「「「申し訳ございませんでした!」」」


 下っ端達が謝ったので心優しい私は許してあげよう。


「あの、私は…猛々しく勇ましい君も素敵だと思うぞ…」

「フォローって言葉を勉強し直して来て下さい」


 私はニッコリと笑った。

 王子たちは又しても顔を真っ赤にさせて黙り込んだ。

 本当に、チョロい。王国の未来が心配だ。



 + + +



 ――――後日。


「おーっほっほっほ! 新しく作り直してきたわ! 女子の分はノーカンよ! さぁ、王子様! 今度こそ…!」

「どっこいしょ」

「何で又座るの―――!?」


 だって、本当に座り心地がいいから。ずっと座っていたい。何これ、最高かよ。

 魔女が涙目で私に文句を言う中、私が座った尻型をジッと見る王子たち。



「…エッチ」

「っ!?」



 真っ赤になった王子たちが黙り込む。

 何故、魔女さんまで真っ赤になってるんでしょうかね。解せぬ。


遅くなって申し訳ありません。

お楽しみ頂けたのなら幸いです。

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