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血管撮影検査
「ルーカ、麻酔に耐えて20まで数えられたらハーゲンダッツを買ってあげるよ。」
A先生は小児の脳腫瘍を専門的に扱う先生で、初めて対面した時から僕の緊張感を払拭しようと冗談や面白い話を聞かせてくれていた。しかしさすがにこれには驚いた。
本当かよ、と10歳児のくせに生意気なことを考えながらも、緊張感を拭い去られた僕はその挑戦に乗った。
「1、2、3...27、28......」
「ちょっ、凄いなwどこまで数えるんだよ?」
僕は以前から薬の効きにくい体質だったらしい。笑いながら、僕は意識を手放していった。
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目が醒めると、僕の胸には管のような物が挿入してあった。
「これから注射を打つ時に痛くないように、魔法のチューブを付けるからね。」
検査前にA先生が冗談めかしてそう言っていたことを思い出す。
それはちょうど鎖骨の下の辺りからぶら下がっていて、ずれないように縫合、固定してあった。そして先生の言う通り、そこから採血を行なっても、痛みを感じることはなくなった。