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001  作者: 真中ラン
3/5

3

屋上の扉を開くと日はもう西に傾いていて、空の半分以上はもう日の光は届いてなかった。

松本小鳥はそんな暗い星もない空を見上げていた。

今の彼女は暗い方が似合う。

何処と無くそんなふうに思った。

小鳥がこちらに目線を動かす。

「来てくれたのね。もう帰ったのかと思ったわ。」

「友人の頼みを聞いてたら遅れた。」

まぁ、ここに来る時間指定は、無かったが。

「いいえ、別に気にしてないわ。それよりも貴方に友人が出来るなんてね。驚きだわ。」

俺も驚いたとつぶやく。

「何か用があるんじゃないのか?」

「そうなのだけど、ここは少し寒いわ。別な場所に移しましょう?」

なんでここへ呼んだんだよという愚痴は、喉の奥に押し込んで軽く頷いといた。

今は6時。

7時までに帰れば問題は無いだろう。






小学校3年生の時の俺は、友達といえる人はいなかった。

松本小鳥も同じクラスで、俺に話しかけて来るのは小鳥だけだった。

その状況を俺は別にどうでもいいと思っていた。

悪い思いをしなかったが、いい思いもしなかった。

小学校4年生になり、小鳥が引越しのため転校した後も、俺はこのままの生活が続くものだと思っていた。

イジメにあった。

被害者は俺。

理由は沢山あるが、大きくわけて2つだろう。

1つは、俺が嫌われていたことだ。

色んな誘いを断って、自分だけのことを考えていたから。

嫌われるには充分な理由だ。

もう1つは、小鳥の引越しだ。

小鳥は正義感が強く、悪い事をした人を真正面から当たっていった。

そのため、小鳥がいること自体がいじめの抑止力になっていたらしい。

そして抑止力が無くなれば、もちろん行動に移すだろう。

そしていじめを受けた。

よく聞くいじめは全部受けたと思う。

目を離せば何かが盗まれ、シューズを隠され、机にラクガキされた。

俺の小学校3年間は、こうやって過ぎていった。

もちろん、誰にも相談していない。

自分が悪かったと思っていたから、これも当然の報いだと納得していた。

だから相談しようなんて少しも思わなかった。

しかし、中学校はここから遠い所にしてもらった。

幾ら何でも6年間もいじめられるのは嫌だったからだ。

そして中学校では、小学校の教訓を生かし全部を他人優先にした。

頼まれればそれを聞き、誰にも頼まれなければ自分から何か行動することも無かった。

それが習慣となっていた時には、近くに友達がいる状況になっていた。

そして、誰かと行動することに抵抗がなくなった。






小学校3年生の時の俺しか知らない小鳥にとっては一気に大きく変化しただろう。

しかしそれは、俺にも言える。

小学校3年生の時の小鳥しか知らない俺にとって今の小鳥は大きく変化した。

気づくと喫茶店の横の道に2人で居た。

そして小鳥は喫茶店を指さしながら、

「じゃあ、ここでいいかしら?」

と言った。

財布を持ってるかポケットの上から確認してから頷いた。

席について、2人ともコーヒーを頼み黙り込んだ。

今は6時半。

時間もないので俺から口を開いた。

「で、用事はなんだ?」

「貴方に頼みたいことがあるの。」

「俺に出来ることなら何でもいいぞ。」

「ありがとう。やっぱり貴方変わったわね。」

「小鳥も俺のことトオルって呼んでたのに、貴方なんて呼び方してるだろ。お互い様。」

「そうだったわね。」

そう言って、笑顔を見せる。

こんな顔を見るのはいつぶりだろうか。

こういう笑顔を見るとこちらも頬が上がってしまう。

彼女は少し息を吸って、

「私のクイズに答えて欲しいの。」

「お、おう。」

予想外すぎて、情けない声が出てしまった。

多分勉強の話ではないだろう。

小鳥は成績優秀、俺は平均より少し下ぐらい。

逆に教えてもらう方になってしまう。

「どんな問題だ?」

「私の秘密は何でしょう。」

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