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私立山守高等学校。
ヤマコーと皆に呼ばれている。
その学校に行かなくてはいけない。
理由は勿論、俺がこの高校の生徒だからだ。
確かに不登校の生徒は少なからずいるけど、だからといってなろうと思わない。
なる度胸がないと言った方が近いのかもしれないな。そんなくだらない事を考えながら登校するため歩いている。
俺が歩いている時なんて、くだらない事を考えるしかしていない気がするが、今はそんなことはどうでもいいのだ。
毎日歩く緩やかな上り坂を見て、ため息するのはもはや習慣となりつつある。
学校へ行きたくない。
勉強なんてしたくない。
生徒なら1度は考えることだ。
同時に生活を変えてくれと願う。
基盤となる何かへの刺激を欲する。
そんな中で自分は本当に変化を欲しがってるのだろうか。
ホームルームが始まる。
「中島トオル」
「はい。」
朝歩くと、返事するのも面倒くさくなる。
出席確認を終え、担任の高橋先生の親父ギャグが今日も炸裂するのかと思いきや、重要な話があるらしい。
まぁ、俺には十中八九関係ないだろう。
「えー、お前らに朗報だ。このクラスに転校生がきた。前にこの近くに住んでたらしいから地理には問題ないらしいが、困っていたら助けてやってくれ。じゃあ…」
転校生なんて実際あるものなのか。
それがどうだろうと興味がそそられるのは当たり前だ。
クラス全体が自身の想像や期待を喋っているため、廊下にいる先生が眉をひそめている。
扉が開き、転校生の顔が見えた。
誰がこんなことを想像出来ただろうか。
「初めまして。松本小鳥です。宜しくお願いします。」
そこには背の高くなった幼馴染みの姿があった。