壊れゆく平穏
「………はぁ、はぁ何だよあれ‼︎」
何とか山から下りることが出来た俺は麓の交番に駆け込んでいた。警官も俺の尋常じゃない様子に気付いたらしく話を聞いてくれた。
「ふむ、それは大変だったね…。でも情報が圧倒的に足りないから、こちらも動くに動けないんだ。一先ずこの辺の警備は強化しておくから君はもう帰りなさい」
警官は俺をパトカーに乗せると家まで連れて行ってくれた。親は怒っていたらしいが、パトカーに乗ってきたということで何かあったと分かったらしい。警官から話を聞いたらしく、俺にはもう寝なさいと言うだけだった。
「くそっ! 何なんだよ‼︎」
足はまだガクガクと震えていた。今まで味わったことのない、感覚。あれは何なんだ。外見は暗かったのでよくわからなかったが、人間の皮を被った"何か"なのだろうか。
「……寝るか」
俺は不安を感じつつ眠りに落ちた。
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「秋一! あんた先生の話聞いてた⁉︎ ボーとしちゃってさ!」
「あぁ、聞いてなかった。 何て言ってたんだ? 小夏」
「……? 学校の近くで不審者が出たらしくてさ、当分あの辺には近づかないようにだって」
恐らく昨日の事が原因だろう。良かった、学校で言われたってことは結構な大事になっているんだろう。早くあいつがいなくなることを祈るばかりだ。
「ありがとう、小夏」
席を立つ、俺には確認しておかなければいけない事がある。昨日警官に言えなかったことを。
ーーーカタストロフは無事だろうか。
「ちょっとあんたおかしいよ⁉︎ なんかあったの? いつもみたいに変なこと言ってよ‼︎」
「悪い、今はそんな余裕ないんだ」
呼び止める声を無視し、俺は学校を出た。
「すいません……あれ?」
交番を尋ねたのだが、中には誰もいなかった。普通一人はいるものだが。それにおかしい、警備を強化すると言ったのにここまで一人も警官に合わなかった。
胸騒ぎがする。
俺の足は自然と山の中へと進んでいた。
張り詰めた空気、だが昨日とは違いまだ周囲は明るい。それに携帯、懐中電灯、ちょっとした食料も持ってきている。結局俺は山の中に入るつもりだったらしい。
「とりあえず帰りの方角だけ覚えておかないと」
俺は空を見上げた、何かが目に入る。
それは、昨日の警官。
ーーーーの、頭
木の枝に串刺しにされていた。
「あ、あぁ……‼︎」
頭の中は”逃げろ”で覆い尽くされる。逃げなきゃ、幸いまだそこまで登っていない。今なら直ぐに帰れるはずだ。俺は振り返る
「あれれれれまた君だ海の底はどんなとこ宇宙の果てはどんなとこ人の頭はどんなとこ恋っておいしいな恐怖っておいしいな人っておいしいな」
現れた、間違いなく昨日の奴。見た所姿は人間と変わりない、が裸で血管が浮き出ている。目も白眼がなく全部黒だ。
そして"奴"の右手には血まみれの警官が掴まれていた。
「あぁ美しいなんて美しい生き物が死にゆく姿はさながら桜が散ってゆくみたいにあんこアマアマ君の頭もアマアマ
ーちょっと味見させて?
"奴"はこっちに向かって走り出す。
俺は悲鳴を抑えて走り出した。
あの洞窟に行こう、もしかしたらカタストロフがいるかもしれない。生き残っている人も。
唖然。
洞窟は血まみれ、生き物がいる気配はない。あるのは"人だったもの"と
"猫だったもの"
見るも無残な姿になっていた。
「あ、ああ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼︎‼︎」
「見つけた見つけたまるで世紀の大発見ニュートンもびっくり禁断の果実はどんな味想像が広がる広がる」
お父さん、お母さん、みんな、
助けて