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遅い目覚め  作者: 勝目博
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第5話

 翌日は、晴れ晴れとした気分で眼が覚めた。今日は忙しい。

そう、しっかりと自分に言い聞かせた。

不動産屋を回って、マスクを手に入れ、仕事を探して……。眼のまわる忙しさだ。

まずは朝食を取らなければ、と私は近くの喫茶店に向かった。

モーニングサービスは、休日でもやっていた。

トーストをかじりながら、またもや疑問が湧いてきた。

食事は同じなのか?もしかして、身体に合わないものを食べているのでは、

と心配になってきた。

しかし、故郷の星の食べ物を教えてもらっても、入手する手立ては無い。

地球の食べ物で我慢するしか、ないようだった。

「おいしく感じるのは問題ないか」

事実が分からない以上、どこかで結論を出す必要があった。

もしも結論を先延ばしにすれば、とことん迷う羽目になる。

こんな楽天的な考えは、地球人の特性か?

はたまた故郷の特性か?また迷う。迷うのも、地球人の特性で……。『やめた!』

今日は忙しい。再度、自分に言い聞かせ、喫茶店をあとにした。

新しいアパートといっても、仕事先から遠くては困る。

まずは仕事だな、と思い、職安に行くことにした。ところが、職安は休日で休みだった。

仕方無しにコンビニエンスストアで求人雑誌を買って、公園のベンチであらかた見たが、

年齢的にも、資格から言っても、いい仕事は無かった。

まず、残業は出来ない。残業すれば人助けの時間が減ってしまう。

きっちりと時間で終わる仕事。

なかなか無さそうだ。子育てパパやママの苦労がよく分かる。その上、地方も困る。

それは都会のほうが断然犯罪は多いからだ。その分助けを求める人も多いはずだ。

『アーうるさい』

朝っぱらから助けを求める声が耳に響く。今日は忙しい。

『明日にしろよ!』

そう怒鳴りそうになって慌てて口を押さえた。しょうがない、休み明けに職安に行くか。

今日はアパートを探そう。そう思い、ベンチから立ち上がった。

求人雑誌はゴミ箱に放り投げた。

力を入れすぎたのか、ゴミ箱ごと五メートルほど吹っ飛んだ。

私は逃げるように公園から立ち去った。

気がつくと、いつの間に知らない街まで来ていた。

そして側の電柱の住宅表示を見て、私は驚いた。

あっという間に隣の県まで走っていたのだ。私を見た人は驚いただろうな。

くだらない疑問が湧いた。

しかし、着実に能力は伸びつつあった。この分ならば、ヒーローになれそうだ。

私はこの事実を大いに喜んだ。

高く飛べるかな?前回はどう頑張っても五十センチだったが、今日はいけそうな気がした。

近くの公園を探し当て、人目が無いのを確認してから、私は飛んでみた。

意識を集中すると、ゆっくりだが、確実に宙に浮き出した。『いいぞ!』

自分で自分を応援したが、やはり五十センチでぴたりと止まった。

私は立っているからだと思い、宙に浮いたまま横になった。

スー○ーマンの映画で見た、あの格好だ。

それでも高さは上がらなかった。前に進むのは問題が無い。速さは……。

『おお、前回より早く感じる、いい調子だ。そのまま、そのまま早く飛べ!』

しかし心で念じても無駄だった。速度も一向に速まる気配はなかった。

ふと視線を感じ振り返ると、中学生ぐらいの男の子が二人、唖然とした表情で見ていた。

「やあ」

つい口から出た言葉は、ありきたり過ぎた。

「うあー」

二人は一目散に逃げ出した。客観的に見ても、幽霊くらいにしか見えない。

冴えない服装で、歩く速度で宙に浮いていれば、誰でも逃げ出す。

早くこの街を出たほうが良さそうだ。

私は立ち上がり、一目散で逃げ出した。走りながらも私は考えた。

何故、ヒーローなのに逃げてばかりなのか、と。『おっ、さっきの中学生が走っている』

一瞬で追い越したが、声をかけたら、『もっと驚くかな?』

くだらない悪戯のための能力ではない。私は自分を叱った。

そしてもと居た町まで戻り、不動産屋を探した。

謝礼と貯金の額を考えても、大した物件は借りられそうも無かった。

出来れば、礼金一、敷金一、あたりが狙いどころだった。

庶民じみたヒーローだと、つくづく思った。もしも、思春期前に手紙を読んでいたら、

おそらく数々の能力はあっという間に会得しただろう。

そうすれば、学生時代からヒーローとして活躍でき、衣食住には困らなかった。

また知能も高いと言っていた為、就職にも困らなかったであろう。

そう考えると、二人の母を恨む心がまた疼き出した。


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