表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遅い目覚め  作者: 勝目博
PR
13/18

第13話

 その夜、寒気を感じ夜中に目が覚めた。引越し疲れもあり、早めに床に着いたが、

荷物は散乱したまま、カーテンすら取り付けていなかった。

隙間風だろうと、私は布団を被って眠りに着いた。翌朝は気分よく目が覚めた。

やはりホテルとは違う。長くホテル住まいをした事のある人ならば、気がつくはずだ。

ホテルは何故か監視されているような気分になる。

心から落ち着けないのが本心だった。しかも、親父の言うような、怪奇現象?

などもなかった。気分も良く朝から風呂に入ることにした。

なぜならば、建物自体は頑丈な作りの為、周囲の音は聞こえてこない。

勿論、耳を澄ませば私の場合全て聞こえるが、朝から風呂に入っても、

周囲の迷惑にはならないと言う事だ。その点でも私はここが気に入った。

お茶を飲む間に、風呂は出来上がった。

以前の私は、朝、コーヒーを飲んでいたが、お茶に代えた。

どうもコーヒーも能力に関係するらしい。

今のところは、人間に対しての刺激物(香辛料やコーヒー、酒)は、

エイリアンの私にとっても刺激物らしい。反応は異常なほど敏感でまちまちだが……。

出来るだけ摂取しないほうが懸命に思えたからだ。

入浴前の適度な水分補給は美容にも良いらしい。

汗の出がよくなり、毛穴から老廃物を押し出す効果が増すそうだ。

ヒーローとして活躍するためにも、綺麗でいたい。洗面所の鏡に裸の自分を映し、

色々調べた。強盗のときの傷は跡形もなくふさがり、肌の血色も良く見えた。

錯覚かも知れないが、顔のニキビ跡も完全に見えなくなったように思えた。

腕の筋肉は盛り上がり始め、胸板も厚くなったように感じる。残るは出っ張った腹のみだ。

能力の鍛錬とともに、腹筋にも力を注ぐ必要があるようだ。

色々なポーズをとって、鏡に映してみた。その時、私の後ろを黒い影が横切った。

いや、そう鏡に映った。振り返り周囲を見渡したが、誰もいない。

考えればお茶も刺激物?かも知れない。錯覚だろうと風呂に飛び込んだ。いい湯だ。

気持ちがいい……。と思ったが、そうではなかった。異様な雰囲気に風呂場全体が包まれ、

ひどい寒気を感じていた。湯船につかりながらも寒いのだ。

お湯は湯気を立てるほどに暖かいのに……。ふと背後に人の気配を感じ振り向いた。

そこには、長い黒髪の女?がいた。垂れ下がった髪の毛のため、顔は見えないが、

一緒に湯船に浸かっていたのだ。出た!親父の言うとおり出たのだ。

私は凍りついたように動けなかった。

やがて湯の中から、青白い手が伸び、私を引きずり込もうとした。

ところが、私の力は人間の数倍はあるだろう。

青白い手は必死に引きずり込もうとしていたが、私はびくともしなかった。

既に恐怖心はなく、そんな必死な幽霊が可笑しくなった。その幽霊?が顔を上げると、

まだ若い女だと分かったが、悲しい目をして私を見ていた。不憫に感じ私は話しかけた。

「お嬢さん、無駄ですよ」

女の顔は見る見る恐ろしい形相に変わり、両手で私を引きずり込もうとした。

が、私はビクともしない。息切れする幽霊を見たことがあるだろうか。

このとき私ははっきりと見た。肩で息をする幽霊を……。やがて

「何でなのよ」

と弱音を吐く幽霊をたった今見た。幽霊は困ったように首を振り、いやいやを繰り返した。駄々をこねる幽霊。滑稽だ。

「私は人間ではないからだよ」

私の答えに幽霊は心底驚いた様子だ。幽霊を脅かすエイリアン。映画になりそうだ。

「ごめんね」

何故、謝ったたか自分でも分からない。おそらく可愛そうに思ったのだろう。

しかし、相手も流石の幽霊だ。今度は興味を持ち始めた。

「えーっ、どこの星なの」

恐ろしかった形相はかわいい女の子に変わり、目を輝かせて話し始めた。

「よくわかんない」

私はことのあらましをかいつまんで話した。

「じゃあ、修行中な訳ね」

「そう、話したとおり、初めが遅すぎたのでね、必死な状態だよ」

「私も、幽霊の修行中は大変だったわ。初めは何も出来ないの。

物を動かしたり電気を消したりするまで、結構な時間が必要だったわ。

でも、未練の度合いが強かったのかしら、他の人より上達が早いって褒められたわ」

「褒められたって、誰に?」

「勿論、先輩諸氏よ」

「先に死んだ人かい?」

「そうよ。まずは、死んだ人のところに迎えに来るの。でも、行くことを拒むと、

別の霊が幽霊の心得を教えてくれるわ。悪霊だけど、この地でどう過ごすかをね」

「結構、親切だね。私には先輩すらいないし、伝授してくれる人もいないから、大変だよ。

でも毎日が発見の連続で楽しいけど」

「私も、宇宙人など信じてなかったけど、不思議なものね。死んでからのほうが、

色々発見があるのよ、結構楽しいわ」

「君の場合……。ごめん名前は?」

「弘子。だったわ」

「偶然!私は弘」

弘子は驚いたようだったが、やがて二人は手を取り合って笑っていた。

朝から風呂場で、幽霊とエイリアンが手を取り合い笑う。誰も想像すらしないことだろう。

しかしそれがきっかとなり、弘子は度々私の元に現れるようになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ