第4話
リュラと共に【ボリビア】の中心地に来ている。
そこは商店が軒を連ね、活気に溢れていた。
ここで聞き込みをして無理そうなら、正直俺に探す当てはない。
「心配するな。俺が必ずリュラの親を見つけてやるから」
「うん。アスクがそう言うなら大丈夫だよね」
無垢な笑顔を向けるリュラに、何としてでもリュラの親を探し出さなくてはと決意を新たにする。
「すいませ~ん。この娘に見覚えはありませんか?」
「う~ん。ここいらで小さな子供を見かけること自体が珍しいからなぁ。悪いけど心当たりはないよ」
「そうですか。ありがとうございます」
適当に話しかけてみたが空振り。
まあ最初からそんな簡単に見つかるとは思っていない。
「すいませ~ん。誰かこの娘に見覚えのある人はいませんか~?」
大声をあげ注目を集める作戦に打って出たが、結果はおもわしくなかった。
日も暮れ始めると、段々と人通りは多くなり、声に耳を傾けてくれる人も少なくなる。
「アスクぅ。パパとママは?」
リュラが不安気な瞳で見上げてくる。
俺は安心させるように頭に手を置くと、二ッと笑った。
「今日は遅いから、また明日一緒に探してみよう」
「うん……」
通りを後にする俺の心には、リュラの悲しげな瞳がこびり付いて離れなかった。
* * *
翌日。
今度は場所を変え、聞き込みをしてみることにした。
昨日とは違って、今度は街の男連中が作業している炭鉱に足を運ぶ。
男達の怒声に負けないよう、声を張って聞いて回る。
しかし、リュラに見覚えのある人間は一人もいなかった。
「また昨日と同じ場所に行ってみるか」
「うん。アスク、パパとママ見つかる?」
「任せとけ。必ず見つけてやるからな」
しかし、俺の心にも不安が広がっていた。
もしかしたら、このまま見つからないのでは?
そんな俺の気持ちを、たぶんリュラも感じ取っていると思う。
リュラは気丈に振舞ってはいるが、そろそろ限界だろう。
早く見つけてあげなければ。逸る気持ちだけが、空回りし続けるのだった。
やはりというかなんというか、リュラの親の手がかりは見つからなかった。
今日も肩を落としながら帰ろうかという時。
ふいに一人の女性が声をかけてきた。
「もしかして、リュラちゃん?」
「え!? リュラに見覚えがあるんですか!?」
「もちろんです! リュラちゃんのお母様とは、古くからの知り合いですから」
「そうなんですか。よかったぁ。丁度、リュラの親を探していた所だったんですよ」
「そうですか。それなら私が一緒に連れて行ってあげましょうか?」
「いいんですか? あっ……でもリュラは、平気か?」
「うん! リュラ、一人で大丈夫! アスクも一人で平気?」
「何生意気言ってるんだよ。俺は平気だよ」
リュラは得意気な顔で、へへんとでも言いたげに胸を反らせている。
俺は最後にリュラの頭を撫でてやった。
「それじゃあお願いしてもいいですか? リュラ。少しの間だったけど楽しかったよ。お母さん見つかってよかったな」
「うん! アスクもありがとう。じゃあね! アスクぅ!」
俺は二人が見えなくなるまで、ずっと遠ざかる背中を見つめていた。
「でも見つかってよかったよな、リュラのお母さん……」
短い間だったが、リュラと過ごした時間は本当に楽しかった。
何より、まだ18年しか生きていない俺にとっては、やはり親代わりになるなんて見えを切ったはいいが、重荷に感じていたのかもしれない。
だから、この時大して疑いもせずにリュラを預けてしまったのだ。
冷静になって考えてみればおかしな点はあったのだ。
しかし、この時の俺には気付くことができなかった。
最後に振り返ったリュラの寂しげな顔にも、気付くことができなかった……。
連載頑張ります。ブックマークしてくれた方、ありがとうございます!
拙作ではありますが、これからも読んでもらえると嬉しいです。