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「変わったわけじゃないと思うんだ」

「?」

「昔と今。昔だってさ、思ってたし、言ってたんだよ。いろんな言葉達を。でも今はそれが、良くも悪くも目で見て分かり易い状況になってるんだよな」

「目で見て……」

「うん。気軽にネットで今はなんでも発言出来ちゃうだろ? 例えばテレビとかさ、昔はもっと自由だったんだよ。今では考えられないような過激な内容も多かった。もちろんそれに対しての批判の声もあったし、それを拾う仕組みもあったけど、今ほど保守的じゃないね。今は完全に視聴者の声にびびってしまってる。何でだと思う?」

「うーん……何ででしょう」

「視覚化と拡散力だよ。気軽に言葉を発信できる仕組みが整い過ぎたんだ。好き勝手に批判出来るし、それがすぐに人の目に触れてしまうから何も知らない人でも、ああそうなんだとその情報を飲み込んでしまう。誰かが有名人の悪口を書いたとするだろ。それが何の根拠もないものでも、それを見た人は、あ、この人ってそういう人だったんだって思ってしまうんだ。もちろん、全員が全員じゃないけど」

「うん、分かります。そういうのってありますよね」

「批判されたり悪く言われたりするのって、すごく辛い事だ。でも傷つけている当の本人はその事に気付いていないんだ。自分の発言が直接相手に影響しているとは思わないんだ。いや、思わないというより、分かっていないって言う方が正しいのかな。面と向かって言ってるわけでもないから罪悪感もないんだよ。ただ自分の気持ちを吐き出しただけ。自分の気持ちをスカッとさせただけ。本人の感覚なんてそんなもんだよ」

「それは、良くないです」

「うん。良くない。僕らや僕らより年上の大人達はそんな便利なものがない時代を過ごしてきた。だからこそ経験して分かっている事がある。でも君達の世代には、既にそれが存在していた。それが当たり前の文化として。良い事もあるんだろうけど、言葉の重みとかがちゃんと理解されてるのかって、僕は本当に心配だよ」

「だから、先生は授業であんなに言葉を重んじるんですね」

「はは、ありがとう。それに気付いている生徒が何人いる事やら」

「届いてますよ、きっと」

「そうかな」

「そうです」

「そうか。まあでも、そんな事を考える必要もなくなるんだろうけどな」

「え?」


 その時の先生の表情は寂しさだったのか、諦めだったのか。


「大事な話をしよう。君には話さなければならない」


 貼りついていたのは、悲しくとも辛くとも映るような複雑な笑顔だった。


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