『ライオン』『電子レンジ』『後出しジャンケン』
『ライオン』
『電子レンジ』
『後出しジャンケン』
* * *
私には双子の兄妹がいる。
二人は正反対の性格で兄の方は男の子らしく外で遊ぶのが大好きで妹はまだ小さいのにお菓子作りが好きな大人しい子だ。
「今日はお父さんもお母さんも帰りが遅いけどお留守番大丈夫?」
まだ小さい二人に目線を合わせ確認する。
「だいじょーぶ!」
笑顔で応じる兄とは対照的に妹はライオンのぬいぐるみを抱きしめてひたすら頷いている。可愛い。これが姉馬鹿というものか。
しかし不安の方が大きい。小学生と言ってもまだ全然子供だ。
「冷蔵庫にお昼ご飯作っておいたから電子レンジでチンして食べてね」
「うん!」
「出掛ける時に鍵締めておくから誰が来ても開けちゃダメよ」
「うん!」
「電話も家族からの以外出ちゃダメよ」
「わかった」
「あとテレビは見ないならちゃんと消しとくのよ?この前点けっぱなしにしてお母さんに怒られたでしょ」
「気をつける!」
チラリとテレビへ視線を写すと朝の情報番組が流れている。
『それでは、後出しジャンケンじゃーんけーん・・・』
今時の番組は子供ても飽きないようにミニコーナーや参加型のものが増えているから教育テレビを見ない子も多いらしい。例に漏れずこの双子もそうだ。
私は体操のお兄さん世代だったというのにたった十年で時代は変わるものだ。
「何かあったらお姉ちゃんに連絡してね!番号分かるよね?」
兄の方は記憶力が当てにならないので妹の方を向き確認すると私の携帯電話の番号を述べる。
「うん、大丈夫そうね。」
一通り確認をしたのでおそらく大丈夫だろう。
「じゃあお姉ちゃんもう出掛けるから」
鞄と上着を手に取り時計を確認するともう少しで八時を指そうとしていた。
「「いってらっしゃい」」
二人の声がハモリながら私を見上げる。あぁっ可愛い。
抱きしめたくなる衝動を抑えていってきますと応えて家を出る。
今日もまた一段と可愛い双子に心惹かれながら高校へと歩みを進めた。