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―12.対悪魔研究所へ―

翌日、朝の日課も終わって学校に着くとみんながちらちらと翔を見ていることに気づいた

普段から人の注目を浴びるような奇行(?)をしているので特に珍しくはないのだが、最近はなるべく面倒ごとは(これでも)控えているつもりである。

おそらくは昨日の模擬戦の影響だろう。翔はそう分析した

(これじゃ今日も騒がしくなるな)

などと考えながら教室に入ると、みんなから歓声があがった。こうなることを予想していた翔は苦笑しつつ場を収めようといていたのだが、中から「俺なら駅に逃げてるな」、「被害なくてよかったね」、「あんな相手に立ち向かうなんて」などと少し違う事を言っているような感じがしていた

不思議に思いみんなを観察すると、なにやら新聞のような紙を手に持っている

「よう!昨日は放課後も大手柄だったな英雄ヒーロー

そのとき、みんなをかきわけて響が近寄ってきた

「放課後?なんのことだ」

「謙遜すんなって!これ見ろよ」

そういうとみんなが持っていた紙と同じものを差し出された。読んでみると


「新聞部号外!勇敢な少年。悪魔デーモンに立ち向かい人命救助!!」


そう大きな見出しには書かれているではないか!

中には「突如現れた悪魔デーモンに一人で守護者ガーディアンが来るまで勇敢に人命救助した少年弓野 翔くん(17)。救助してもらった男性(65)は「暴れている中、逃げ遅れてしまったのを助けてもらった。命の恩人じゃ!」と意気揚々に語っていた」などと書かれていて目撃者の証言で書かれたイメージ図まで乗せられていた


「なんだこれは!?」

記事を読んで思わず叫んでしまった。どうやら昨日の事が記事になっているようだが、いくらなんでも早過ぎる。というかなんなんだこの絵は。悪魔でかすぎだろ!某特撮怪獣くらいの大きさあるんじゃないか!?それにらしいやつ周りに金色のオーラ纏ってるし、空飛んでるし、終いには金髪で緑の目ってもろ超サイ〇人じゃねぇか!

「なにっておまえじゃねぇの?」

響は横からその金髪の翔を指差していた。確かに戦ったけどさ…

「俺だけどあんな風に戦ってねぇ」

「そうなの?じゃあ、かめは〇波とかうてないの?」

「打てるか!」

「なんだぁ、じゃあど〇ん波のほうか」

「そのネタからはなれろ!!」

などとコントをしながらも翔は真剣にその記事を読んでいた

(どうやら人間型ヒューマン悪魔と、俺の月装についてはバレていないようだな)

少なくとも人間型ヒューマン悪魔が世間に知られるとまずい。ましてやとうとう魔法まで使うことが知られたら…そう考えると混乱は必至である

そのことが確認でき安心すると、周りには無難な答えをして少々疲れながら席に着いた

「お、おはよう翔」

声がした方を見ると、夕実がこちらの顔を見ずに挨拶をしていた。よく見ると耳まで真っ赤だ

おそらく昨日の夜のことがまだ恥ずかしいのだろう。その姿を見て翔も赤くなってしまった

「お、おはよう夕実」

なんともぎこちない返事になってしまった

夕実が意識していることに気づいてしまったから、今の雰囲気はなんとも恥ずかしい

やがて時間が解決してくれるだろうと思い直した翔は、授業の開始をいまかいまかと待っていた


昼食の頃にはすっかり元に戻った二人は、それぞれの授業のため途中で別れた

翔もさすがに「2つ名」相手に勝利したのだから、今日は模擬戦を挑んでくる連中はいなかった

そして翔は訓練を…ではなくて職員室に来ていた。扉をノックし開けると

「すいません。巻葉先生いませんか」

「は~い。弓野くん、なんの用事かしら?」

翔の呼びかけに葉巻はすぐに返事をしてそのまま翔を外まで誘導した

「ちょっと…言いにくいのですが、悪魔について調べようと思っているんです」

「えっ!本気なの?」

翔の発言に、葉巻は驚きの声を隠せなかった。そもそも翔が尋ねてきたことにも驚いていたが、その口から出たことは悪魔関係だったからだ

「もしかして…今朝の関係ある?」

「そうです。それで対悪魔研究所に行きたいのですがどうしたらいいのかと思いまして」

「わかったわ。なら森下先生に頼んだほうがいいかな。ちょっと待っててね」

どうやら今朝の新聞が職員の間にも広がっているようだ。そのためすぐに事情を察知した葉巻は職員室に戻っていった

(よけいな説明しなくて済んだな。新聞に感謝すべきかな)

どう説明するか悩んでいた翔は、上手く事が運べたことにたいして少し新聞部に感謝した


対悪魔研究所

名前のとおり主に悪魔に関する研究が行われている国の研究施設である

その目的は悪魔の根絶。悪魔の生態はいまだ解明されていないが、悪魔の対処に関しては一定の成果が上がっている。守護者ガーディアンや住民にほとんど被害がないのはここの研究あってのことだ

逆に言えば今回遭遇した悪魔に関しての情報を手に入れるのには絶好の場所なのだ


待っている間、昨日夕実を送った後に話した院長…レコンキスタのボスとの会話を思い出していた

「翔には、この対悪魔研究所を探ってほしい」

2人きりになると、真剣な表情で義和は翔にそう頼んだ

「なるほど。ここなら悪魔の情報を仕入れられることができるな。でもどうして俺なんだ?他の人でもできるんじゃないか」

この対悪魔研究所は週に一度、一般開放されていて、最新の研究内容まで調べることができるのだ。そんな場所に翔がわざわざ行く必要があるのか分からなかった

「こっちで探りを入れなきゃなんねぇところがあるんだよ。それがかなり面倒でな…」

場所を言わないだけあって、かなり危険な橋を渡ることは分かった。それに手伝いといった手前翔を加えたくないんだろう事も。

「それに、おまえの「2つ名」が必要になるんだよ。研究内容は実施されたやつだ、今研究されているやつや不確定要素については普通じゃ調べられねぇ」

「そうか。人間型ヒューマン悪魔…人造悪魔デーモンロイドのことが権限を利用してなにか分かるかもしれないな」

そう切り返すと、義和は満足そうに頷いた

「さっそく翔の力を借りて申し訳ないんだが、よろしく頼む」

「なに、いってんだよ。俺はこれ以上悪魔に手を焼きたくないだけだ。頼まれた覚えはないね」

「翔、おま、ツンデレかよ!」

「ツンデレじゃねぇ!!」

そういうわけで今回調査しにきたのだ。対悪魔研究所にアポなしで行くと話が聞けないらしいので、ここの教員でもあり研究所にも籍を置いている森下先生に許可を得に来たのである


会話を思い出し終わるとちょうど森下徹もりしたとおる先生が出てきた

森下は30後半で、長身で眼鏡を着用し髪はくせ毛のようでところどころはねている。しかし、清潔感はしっかりとあり爽やかなイメージはなかなかのイケメンである

「君があの“新月”弓野翔くんか!うわさはかねがね聞いているよ」

「恐縮です。早速ですがお願いがありまして、私用で対悪魔研究所に行きたいんですよ…権限を利用して」

翔はそう言うと身分証をだし森下の前にそれを証明する刻印を見せた、すると森下は目を見開いて刻印を見ていた

「これはこれは!権限を使ってまでどうしたんですか!?」

「いや、先日の件でですね…」

「ああ、昨日悪魔を倒した件ですね。私も読みましたよ!凄いですね」

森下は目を輝かせていた。やはりこの人は今回の悪魔関係に興味津々の様子である

翔は、その輝きから逃げるように手を前にかざして横に振っていた

「いえいえ。そのときに俺は悪魔について何も知らないなって感じたので、最新のデータを知っておこうと思いまして」

森下の目が落ち着いた頃を見計らってあらかじめ考えていた理由を話した

「そうですね「2つ名」の方はいつ参加させられるか分からないですものね。分かりました!私も今日は午後の授業がないのでもう少ししたら行くところです。よかったら一緒に行きませんか?」

「え、いいんですか!?ありがとうございます」

「もちろんですよ!じゃあ、30分後に校門前で会いましょう」

そう言い残し、森下は職員室に足早に戻っていった。翔は余った時間を近くにあった図書室で時間をつぶして30分後、校門前の柱によりかかり待機していた

すると、森下が車に乗って現れたのでその後部座席に乗り対悪魔研究所へと向かった


しばらくすると5階建ての大きな病院に似た建物が見えた。正門から入るとそこには「国立対悪魔専用技術研究所」と正式名称が掲げられた看板が目に入った

駐車場から車を降り、森下の誘導に従い建物の中にはいった。入ると森下は急に足を止め、翔のほうへ近づいていった

「弓野くんはここに来るのは初めてですか?」

「はい、初めて入りました」

「なら、簡単に各フロアの説明をしますね!」

どうやらきょろきょろしたのを見られたらしく、自ら説明を申し出てくれた。その様子を見られて恥ずかしかったが「お願いします」と受け入れた


国立対悪魔専用技術研究所…対悪魔研究所は6フロア存在する

1階は大きなロビーに会議室がいくつも設けられている。周りには研究対象である悪魔の種類や今までの研究結果などが書かれたポスターが貼ってある

2~3階は悪魔専用武器の開発、研究が行われている。現在主力は魔法が有効ではあるが、数が多いと魔法力ルナ不足になるため、殲滅効果の高い武器や強固な防具の開発が不可欠だそうだ

4~5階は悪魔の発生条件や生態を研究している。森下が所属しているのはこの管轄である

最後に地下1階は主に倉庫として使用されている。研究や開発に使う物品はここに搬入されるそうだ

研究成果は月に2度行われる定期会議で決められ、実験結果などを報告し合い、すぐに実用化されるのである


受付を済ませ一通り内部構造を把握したところで翔と森下は4階に着いた。中に入ると病院にいるような独特の匂いが感じられる。またフロア全体の温度は低く設定してあるのか肌寒く感じられた

「ここが私が所属している部署だよ」

「悪魔生態研究室…ですか」

森下が指差した先に書かれた言葉を読んだ。翔は顔に出さないように心の中でガッツポーズをした

(まさか森下先生が目的の研究員だったなんてな)

昨日は色々巻き込まれて散々な一日であったが、今日は幸運な一日だななんて考えていると「はいらないのかい?」と森下から不思議そうな顔で見られた

部屋に入ると、デスクがずらりと並び、一つ一つに電子タブレットから3Dに映し出されたパソコンが置かれている。その数はざっと20くらいはあるだろうが、実際にそこにいた人はその半分にも満たない。翔は不思議そうな顔をしていると

「最近、急に3人ほど異動になっちゃってね。ただでさえ少ないのにまいったよ」

と考えていたことを読んだかのように森下は的確に解答した

「…さすがですね。見事な観察眼ですね」

翔が素直に賞賛すると、それは違うと言いたげな顔で森下は見ていた

「お褒めいただきありがとう。でも、君のほうが凄いよ」

「え、どこがですが!?」

予想外の返答にわけも分からず翔は森下に聞き返した

「自分でも人間観察には自信があるんだけど、君の行動は読めないんだ。今みたいなのは明らかに分かるけどそのほかはまったく分からない。興味深いね」

「それは褒めてるか微妙ですよ」

「私としては最高の褒め言葉だね!なんならここで解析させてくれないかな?」

「お断りします!」

森下の危ない発言で受け、無意識に警戒信号がマックスまであがった

(こ、このひとにはやっぱりマジで気をつけよう)

背筋から冷たい汗を流しつつ少し拗ねた様子の森下についていき、室長室の前まで来た

森下は扉にノックをする。すると返事が返ってきたので用件と伝える

「森下です。先ほど電話した方をお連れいたしました」

「入りたまえ」

中に促されると、そこには50代くらいの白髪交じりの髪をオールバックにし、白衣を着こなしたたずむ姿は大きい病院の院長といった印象を感じる。それくらいに風格を感じるナイスミドルであった

「はじめまして。私は白銀高等学校2年“新月”の弓野翔といいます」

自己紹介をすると、その室長に向かい、最敬礼をおこなった。顔を上げると表情が和らぎ優しい顔つきで握手を交わした

「お噂はこちらでも聞いています。私は悪魔生態研究室室長、真壁大樹まかべたいきです。お聞きしたいことがあるとのことでお待ちしておりました」

「はい。悪魔について現状分かっていることを教えていただきたく参上しました。…特に新型の悪魔についてです。」

握手が終わると早々に本題に入ることにした。堂々と翔がこう切り出したのには意図がある、そのことは真壁も気づいた様子であったが、まさかの言葉に驚いていた

その室長の様子からこれは限られたものしか知らない情報だったことを翔は理解した

「ど、どうしてそのことを」

「実は昨日、偶然遭遇にして戦闘をしていました。今までと違いかなり特殊で対応するのに時間がかかってしまいました」

「なるほど。また現れたんですか…それで情報がほしいと」

「はい。そのとおりです。お聞かせ願えますか」

「わかりました。それならばお教えいたします」


これまでの経緯を簡単に説明した後、真鍋から現在分かっている悪魔の生態についての始まった――


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