その7
教室から出ると、彼女の後ろ姿が見えた。追いかける。
階段を上って行くようだ。後ろから付いて行く。スカートの中は……見えなかった。
男ならしょうがないのだと誰かへ? 言い訳してみる。
彼女の行き先がわかった。多分屋上に行くのだと思う。屋上にはいくつかベンチが置いてあったはずだ。
俺は一応気付かれないように付いて行く。
彼女が屋上の扉を開けようとした時に、俺に気付いて振り向いた。
俺を見下ろすと、不機嫌そうに彼女が言った。
「見た?」
「いや見えなかった」
言ったあと思ったこの返答はダメダメだ。
「そう」
彼女は、特に俺の返答を気にせずにドアを開けて外に出た。
俺は残りの階段を3段飛ばしに一気に上り彼女を追いかける。
ドアを開けて外に出ると、彼女は空いているベンチに座ろうとしていた。
周りを見渡すと、何人か昼ご飯を食べている生徒はいるが人数は少なくて、その中に俺が知っているやつもクラスの連中もいなかった。
うちの学校は学食が安くて美味いと評判だったりする。
そのせいで、弁当やパンなどを買って食べるのは少数派だ。
それにしても静かなこの雰囲気はいいかも、穴場発見だ!と喜んでる場合ではなかった。
彼女の所へ向かう。
「元気だった?」
自分でこの声の掛け方は違うかもと思う。
さっきから俺は、彼女の前だと自分のペースが乱れっぱなしだ。
「ん?まず、座れば?」
あれ? いつもの猫かぶりの彼女じゃない。
俺は疑問に思いつつ、彼女の横に座った。
「何か用があったの?」
何で俺は、彼女を追いかけたんだ。
あ、学校の中で、話をする為かもう達成したなこれ。
「あったけど、もういいんだ」
「ふ〜ん」
ぐ〜……俺の腹の音が鳴った。あ〜ヤバい何も食べるもんが無い。
自分のお弁当を差し出しながら彼女は言った。
「良かったら食べる?」
「食べる」
即答した。
彼女の弁当を半分もらい食べる事にする。
弁当をがっついて食べる俺を見て、笑って彼女は言った。
「犬みたい」
手を差し出しつつ俺が言う。
「ん? お手でもする?」
「……しなくていい」
「りょうかい」
弁当を食べ終わったあと、残りの昼休みの時間彼女と話をした。
「そろそろ、時間だから先行くね」
「おう」
先に教室へ戻る彼女の後ろ姿を見ながら思う。俺が話しかけられなかった一週間は何だったのだ。
明日から教室の中でも、彼女に話しかけようと思った。