その6
学校で彼女に話しかけると決心したが、俺はまだ話しかけれないでいる。
あれから今日で一週間ほど経った。
今の時間は、もう少しで午前の授業が終わりになって、もうすぐ昼休みになろうとしていた。
俺がなぜ話しかけられなかったか、俺が観察した彼女の一週間の状況を授業がつまらないし振り返ってみよう。
彼女は授業中以外はいつも自分の席で、ウォークマンで音楽を聴きながら本を読むという、完璧にあたしに話しかけるな!という態勢だった。
この態勢は、このクラスになって、ず〜と同じらしい。
この一週間だれも彼女に話しかける人はいなかった。そう俺も同じくできなかった。
始めの頃は、多分彼女に話しかけた人がいたのだが、「……」攻撃に負けたのだろう。
俄然燃えてきた。
彼女の鉄壁の防御を崩したい。まあ一回は崩したんだけど、あれから一緒に帰る事も無く幻だったのでは? と、俺は思い始めていた。
あ、チャイムが鳴った。だらだらと一週間の出来事を振り返っていたら。授業が終わったらしい。昼休みになった。
今日は学食で何を食べようかと考えていたら、俊介が話しかけてきた。
「何この頃、黒川のこと見てんだ?」
俺の視線の先を読んだらしい。それにしても、なんだそのニヤニヤ笑いは?
「別に見てるけど」
開き直ってみた。
「たしかに黒川は美人かもしれんが、性格があれじゃあな〜」
ん〜黒川が美人? そう言われてみれば、整った顔かも! 確かに美人だな。
「なるほど〜」
「何そこで感心してんだよ」
「他に情報ないの?」
「え〜と、かなり頭がいいらしいぞ」
「まじで?」
「学年で常に3番以内だと、まあ噂だけどこれは本当っぽい」
たしかに頭よさそうな顔もしている。
「なるほど」
「……おまえ何見てたんだ?」
「さあ?」
「まあいい、昼飯食べに行こう」
「おう」
その時、彼女が鞄から弁当を出して教室を出るのが見えた。どこかに食べに行くらしい。
「あのさ、これから昼飯久志も誘うんだろ」
「そうだけど、いつもだろ? なに?」
「俺今日止めるから二人で食べてくれ」
「了解。まあ、がんばれ」
「は?」
「いいから行けよ。俺は久志んとこ行くから」
なんだか良くわからないが、俺は彼女を見失いそうなので、返事もそこそこ教室を出た。