その5
彼女が、少し怒った風に言う。
「普通気付くでしょ?」
「……」
何となく無視してそのまま歩いてみる。
「ねえってば」
「なに?」
俺は気付いた、昨日の事なんて何も無かったようにクラスにいた彼女に対して、何でだか腹が立っていたのだ。
「何で無視するの」
「無視してないし」
「まあいいや、こっち向いてくれたから」
「……」
俺たちは、昨日と同じように一緒に話しながら帰る事にした。
今の彼女は、やっぱりクラスの中の彼女とは別人に見える。
「ほんと黒川の猫かぶり凄いよな。けど、俊介に、あ!クラスの原の事ね。俺と黒川の事で何かあったと感づかれた」
「あんた、私の事見過ぎ。だから気付かれたのよ」
「な、なるほど」
たしかに今日俺は、黒川の方をよく見ていた気がする。少し不安になってきた。
ん? 俺が見てたの知ってたのか?
「他のやつにも気付かれたかな?」
「あんたが、私の事を見ていたからといって、私の猫かぶりがばれるわけじゃない」
「あ、そうか」
冷静なツッコミだ。何だか不本意そうに彼女が言った。
「変に勘違いした人はいたかもね」
「ん? 変って?」
「はぁ〜いいよもう」
ため息つかれた。うやむやのまま、この話は終わりになったようだ。
彼女は、話を変えるように言った。
「今日の連絡があった委員会の事なんだけど」
「そんな事もあったね」
「……」
彼女は何だか不満そうだ。その後、彼女の家に着くまで、委員会の事務的な話をした。
月一の集まりをどうするかなど、つまらない。
そして、彼女の家に着いた。何か残念だ。
「また明日ね」
「ん〜じゃ〜ね〜」
彼女と別れ、家に歩きながら思った。
また明日学校で、彼女は暗い女の子を完璧に演じるのだろうか?
さっきまでの彼女の方が良いのにな〜どうにかならんのかな。
明日、少し怖いが学校の中で話しかけてみるか。うむ。そうしよう。
それにしても、今日なんで待ってたんだ。
委員会の事話したかったのか……謎だ。