その3
衝撃の事件から次の日の放課後。
俺はあれから、特に良い言い訳も思いつかずに、今部室の音楽準備室に向かって歩いていた。
ちなみに彼女は普段どうり?に猫をかぶっていた。話しかけられる雰囲気はなかった。
さすがだ。
それにしても、無断で休んだのはまずかった。
俺はボーカル兼ギターをやっている。俺がいないと練習にならない。
休んだ理由が、俺が唯一クラスの中で話した事無かった彼女と、筆談に夢中になって時間を忘れ、その後、彼女の本性を知って仲良くなったなんて……本当の事だが誰も信じないだろうし……。
だらだらと考えていたら、部室についてしまった。
ドアを開けると、つるちゃんがいた。つるちゃんとは部活の顧問で音楽教師の鶴岡先生の事だ。
先生になって3年目で若い。そして、ほとんどの生徒は、先生などとは呼ばずに「つるちゃん」と呼んでいる。
「おい、昨日は何で来なかったんだ?」
「原も松田も待ってたんだぞ」
早速つるちゃんから突っ込まれた。まず、つるちゃんの質問に、答える前に名前が出てきた二人を紹介しよう。
原俊介ベース担当で俺らのバンドのリーダー。
部屋の中でベースの練習をしている。さすがリーダー真面目だ。
もう一人が、松田久志ドラム担当。
今、奥のドラムセットの椅子で寝ている。器用なやつだ。
そして、ボーカル兼ギター担当の俺をあわせて、この3人が部活の全員でバンドのメンバーだ。俺たち3人で軽音部を作った。
遅くなったが、つるちゃんに対して答えよう。
「何となく?」
バシ!
「いて」
つるちゃんに殴られた。