その10
あの日から一ヶ月が経っていた。
あれから、俺は彼女とは話をしていない、視線も合わせてない。
時間だけが過ぎていく。彼女はクラスでまた話をしなくなった。俺のせいなのかな。やっぱり。
少し前のように暗くなったが、それでも黒川の人気は落ちなかった。
聞こうとしなくても彼女の噂?情報が聞こえてくる。
例えば、自転車通学になったらしい。とか俺が彼女に振られた。とか……最悪だ。
最近クラスの女子とうまくいってないように感じるのは気のせいだろうか。
前から仲悪そうなのだが。こんな事考えているとおり、俺は……。
「おい、最近元気ないな?」
俺の考え事を中断するように、俊介が話しかけてきた。
「別にそんな事無いけど」
「……まあいいや、飯食べにいくぞ」
「おう」
いつの間にか、昼休みになっていたらしい。ぼ〜とし過ぎかな。
途中で合流した久志も一緒に学食で昼飯を食べる。
いつも思うが久志食い過ぎ、確実に3人前以上食べてる。
あ〜だからバイトしてんのか今疑問が解決した。
食べ終わった俊介が話しかけてきた。
「そろそろ、新曲作りたいんだけど、次の番はおまえだろ」
俺たちのバンドの曲作りは、詞は皆で考えるのだが、曲は順番に作っている。
最終的には俊介がアレンジすることになる。
俺が返事を返す前に俊介が言う。
「さっきも言ったけど、おまえが元気無いとうちのバンドは、はじまらないのだよ。文化祭の日何があったか知らないが、ぐちぐちしてないで、決着付けろバカ」
「バカは余計だ」
でも、俺は、この一ヶ月の間、彼女からただ逃げてきたのは確かだな。
「久志も何か言ったれよ」
俊介は久志を味方に付けたいらしい。
重々しく久志が言った。
「まあ、これでも食え」
久志はデザートに買ったらしいプリンをくれた。
「ありがとう」
俊介は、久志の行動に苦笑していたが、俺は結構嬉しかった(プリンは好きだけどそういう意味ではない)元気が出た。
照れ隠しに、
「このプリンに誓っていい曲をかく」
と宣言してみた。
「「ちがうだろ」」
俊介とつるちゃんに、同時にツッコまれた。いつのまに居たのつるちゃん!!
「ハモルな」
ん〜バカやってると元気出るな〜。
ぐちぐち、ぐだぐだはやめて、彼女から逃げるのもやめようと思った。