~u b u t a~
心臓を鷲掴みにされた様に一瞬身体が硬直した。
(換金所で強盗殺人)こんな見出しの記事をどこかで読んだ気がする。
もしや強盗か?
それとも腹いせか?
グルグルと悪い想像が頭を巡る中、覚悟を決めて振り返った。
誰?
自分の中のデータベースに急いでアクセスする。
どうか知り合いであって欲しい。
知人?親戚?クライアント?友人?
選択肢として友人が最後に出てくるあたり虚しさがこみ上げる。
社会から見た自分の評価が浮き彫りになっている様だ。
そんな感傷に浸っている時ではない。
誰だ?今目の前で満面の笑みを浮かべているこの男は
頭の中のデータベースは全くと言っていい程機能しない!
それでも半ば強引にアクセスする。
そして出た答えは
「該当者なし」
臨戦態勢に入ろうとしたその時
「よう!久しぶりだなぁ!!」
満面の笑みを浮かべそう述べた男の様相に嘘は無く
緊急警報を打ち鳴らしていた脳内は緊張の糸が
音を立ててプツリと切れた。
「よう!久しぶり!
あれ?忘れちゃったか?
小池だよ!
お前都野守だろ?」
こ・い・け?
こ・い・け・・・・・・・こいけ・・・・・・小いけ・・・・・・こいけ?・・・
・・・小池!!
「小池!おお!!小池か!
久しぶりだな!お前大丈夫なのか?」
今目の前にいる男は小池洋平、自分とは高校時代に同級生だった男だ。
勿論頭の中のデータベースに記録が無かったのは
高校卒業依頼会っていなかったからだ。
それでも小池洋平という名前を思い出した直後に
「大丈夫」というワードを第一声に持って来たのは
あの事が深層心理に根を張っていたからだろう・・・。