~u b u t a~
昨日もだいぶ陽が昇ってから目を覚まし
いつもの様に怠惰な自分に嫌悪感を抱きながら
のろりと体を起こし身支度を整えた。
今日一日の予定も無く、愛車に跨り何処へとも無く走る
明日こそは、
明日こそは、、と
毎日昼前に起床し、愛車に跨り当てもなく町をぶらつく。
暫く走り適当に自販機の前で停車する。
こんな怠惰な自分でも腹は減るし喉も乾く
若作りともみられる皮と金属を編み込んだチェーン付きのごつい財布から
120円を取り出し自販機に押し込む。
ブラックコーヒーを啜りながら辺りを見渡す
≪新装開店 地域№1宣言≫なるノボリがはためいている。
普段なら無視する所だろう。
何故ならもう随分昔に勝利の女神とサヨナラしたと思っていたし
定職に就いてる様で就いていない35歳独身男には
ギャンブルで捨てられる程の余裕は無いからだ。
だがこの日はなんだか違った。
おもむろにチェーンのついた財布を取り出し札入れを開けてみる。
1万1千円
これが自分の全財産かと思うと
何だか悲しみよりも憐みを覚える。
少しの間考えたフリをしてバイクを
パチンコ屋の駐車場に停めた。
もう何年振りだろう。
パチンコ屋の自動ドアが開いた瞬間。
外との温度差を肌で感じる。
此処には色々な念が渦巻いている。
そんな妄想さえ抱かせる程の騒音だ。
慣れない騒音に肩を竦めながら、店内に吸い込まれていった。