~悪友~
その後もいつ冷やかされるかとドキドキしながら
日々を過ごしていたが、特に変わった様子も無く
いつしか自分の中でも忘れ去られた珍事となった。
この一件以降お互いの距離が縮まった俺たちは
殆どの行動を共にし、一方的に俺が話し気のない返事を小池が返す。
そして時々小池の奇行でペースを乱される。
こんなやり取りで高校生活も惰性的且つ安定的に過ごしていった
しかし、卒業を間近に控えたある朝近くの駅で待ち合わせをして
いつも通り生産性の無い話を一方的にしながら
学校へと続く長い銀杏並木の坂道を歩いていた時に突然小池が話し始めた。
小池が話す時は大抵ペースを乱される時だ。
しかしそれも2年半の友人生活でだいぶ慣れて来ていた為
特に身構える事無く話を聞いていた。
名前を呼ばれてこちらが返答してから暫く沈黙が続いた。
「どうした?」
それまで長い銀杏並木の行く末を見ながら話しをしていた俺は
改めて小池の顔を見て確認した。
そしてまた暫しの沈黙。
少し不安になり「どうしたの?」と再度問いかける。
不安になったのは沈黙の所為では無く、小池の表情だったと思う。
傍から見ればいつも通りの呆けている表情かもしれないが、
毎日一緒にいた俺にはその微妙な変化がすぐに分かった。
言いづらいというよりは慎重に言葉を選んでいる様だった。