リコ王 〜ゆるキャラ好きJK、ノリで異世界を平和にする〜
その日、王都は揺れていた。
「陛下ァ!! 起きてください陛下ァ!!」
ドンドンドン!!
扉を叩く音で、少女は目を覚ました。
「んぇ……あと五分……」
ベッドに埋もれていた女子高生・リコは、布団を頭まで被った。
しかし次の瞬間、巨大なラッパの音が鳴り響く。
パオォォォーーーン!!
「うるっっっっさ!!?」
飛び起きたリコは、そこでようやく気づいた。
知らない天井。
知らない部屋。
知らないシャンデリア。
そして、自分がとんでもなく豪華なパジャマを着ていることに。
「……え、ここどこ?」
扉が開く。入ってきたのは、銀鎧を着た男だった。
しかしその顔には、完全に徹夜明けの死相が浮かんでいる。
彼は朝まで仕事をしていたのでは無く、麻雀をしていたことは誰も知らない。
「おはようございます……リコ王陛下……」
「誰?」
「騎士団長のあてつんです……」
「あ、どうも……」
あてつんはそこで限界を迎え、立ったまま寝た。
「寝るな!!」
リコのツッコミが玉座の間まで響いた。
一時間後。
「つまり私は異世界に召喚されて、なんか王様になってた、と」
「はい……」
あてつんは半分寝ながら説明した。
「そしてこの国は今、魔王ネルの脅威に晒されています……」
「へー」
「へー!?」
「いやだって急に言われても……」
リコは玉座に座りながら、テーブルの上のゆるキャラ人形を眺めていた。
丸い。
かわいい。
最高。
「この子なに?」
「初代国王マスコットのモチャアドラゴンです」
「えっ可愛い!!」
「国の危機なんですが」
「LINEスタンプ化しようよ」
「国の危機なんですが!?」
あてつんが泣きそうになった。
その時だった。
バァン!!
謁見の間の扉が開く。
「失礼するッッ!!」
現れたのは、筋肉隆々の大男だった。
しかし服装は、なぜか大学生みたいに若い。
しかも無理がある。
「私はMs.タカヤマ!!二十一歳の女子大生だ!!」
「絶対嘘だろ」
リコは即答した。
あてつんが耳打ちする。
「陛下……この方は危険です……」
「え?」
「単独で竜王を殴り飛ばした厄災級戦力です……」
「女子大生ってなんだよ」
Ms.タカヤマは腕を組んだ。
「フッ……年齢など飾りにすぎん」
「いや飾れてない」
「それよりリコ王。魔王ネルが西の砦に現れた」
「え、もう?」
「数は無限。斬っても増える」
「最悪じゃん」
「だから私は提案する」
Ms.タカヤマは真顔で言った。
「燃やそう」
「雑!!!!」
西の砦。そこは地獄だった。ぷるぷるした黒いゲルが、地平線まで埋め尽くしている。
「なにこれキモッ」
「魔王ネルです」
「全部!?」
「全部です」
「本体どこ!?」
「誰も知りません」
ネルたちは一斉に叫んだ。
『ネルネルネルネル!!』
「語彙終わってる!!」
リコは頭を抱えた。
するとMs.タカヤマが前へ出る。
「任せろ」
「え?」
「私には策がある」
ズシン。
ズシン。
Ms.タカヤマはゲルの大群へ歩いていく。
そして。
「お前たちィィィィ!!」
腹の底から叫んだ。
「徹夜テンションの相手をしたことはあるかァァァ!!」
あてつんが目を見開く。
「ま、まさか……!」
Ms.タカヤマはあてつんの肩を掴んだ。
「起きろ」
「え?」
「真の夜更かしを見せろ」
「……ッ!!」
次の瞬間、あてつんの目がカッと開いた。
ド ン !!
謎のオーラが噴き出す。
「うおおおおお!!三日寝てねぇぇぇぇ!!」
「なんでそんな起きてられるの!?」
「役満チャンス中に寝れるかァァ!!
あてつんは超高速で動き始めた。
ネルを斬る。
斬る。
斬る。
しかし増える。
「無理ゲーじゃん!!」
リコが叫ぶ。
その時だった。
ぷる、と。
一匹のネルが、リコの足元に近づいた。
『ネル……』
よく見ると、ちょっと可愛い。
丸い。もちもちしている。
「……あれ?」
リコはしゃがみ込んだ。
「お前、ゆるキャラ向いてない?」
『ネル?』
「絶対グッズ化できるじゃん」
周囲が静まる。ネルたちが、一斉にリコを見た。
「……ねえ」
リコは立ち上がる。
「戦争やめて、もちもちフェスティバルやらない?」
沈黙、そして。
『ネルーーーーー!!』
大歓声。
「通じたァ!?」
三ヶ月後。
王国は平和になっていた。
魔王ネルは観光マスコットとなり、
モチャアドラゴンとのコラボ商品は爆売れ。
国の財政は過去最高。
リコは玉座でポテチを食べながら言った。
「政治わかんないけど、可愛いは世界を救うね」
「救いましたねぇ……」
あてつんは立ったまま寝ていた。
Ms.タカヤマは腕を組む。
「フッ……これが女子大生の知略だ」
「いや脳筋だったろ」
すると窓の外から声が響く。
『ネルネルーー!!』
巨大な着ぐるみパレードだった。
民衆は熱狂している。
「陛下ーー!!」
「リコ王ばんざーい!!」
リコは少し照れながら手を振った。
「なんか……異世界も悪くないかも」
『ネル』
玉座の後ろから、新たなゲルが現れた。
『次回作モ、ヨロシクネル』
「メタ発言するな!!」




