プロローグ
この物語は、戦争が終わった世界での話です。
英雄は消え、正しさも消え、残ったのは“使い道の分からない遺物”だけでした。
元・帝国軍の現場指揮官カイルは、そんな世界を適当に生きています。
理屈を語る魔導AI“アックス”と共に、遺跡を巡り、依頼をこなし、ときどき戦います。
そして彼は今日も言われます。
『その門は武器ではありません』
――しかし彼は、たぶん気にしません。
理屈と現実が少しズレたまま進む、そんな旅の記録です。
戦争が終わってから、この世界は静かになった。
だが――静かになっただけで、平和になったわけじゃない。
魔物はまだいるし、遺跡は放置され、
“使われなくなった戦争の残骸”だけが地上に転がっている。
元帝国軍中堅指揮官・カイルは、その残骸の中にいた。
「金になりそうなもん、どこかにねぇかな」
目的はそれだけだ。
英雄でもない。
理想もない。
命令もない。
ただ、生き残るために動く男。
そして彼はそれを見つけた。
――門だった。
城の入口に使われていた巨大な鉄の扉の片側。
誰かが戦場から引き剥がし、そのまま放置したような代物。
カイルは迷わず肩に担いだ。
「これ、丈夫だな」
その瞬間だった。
『起動確認。個体認識成功』
カイル: 「……?」
『こんにちは。私は思考支援型魔導演算体“AX-01”(アレックス)です』
カイル: 「門が喋った、?」
理性の声が、鉄の表面から響く。
アレックス: 『まず訂正します。それは門ではありません』
カイル: 「じゃあ何だよ」
アレックス: 『戦術封鎖装置です。武器ではありません』
カイル: 「殴れるなら武器だろ」
アレックス: 『その発想は軍規的に危険です』
カイル: 「もう軍じゃない」
アレックスは一瞬沈黙した後、淡々と続けた。
『分析結果を報告します』
『あなたの生存率は61%です』
カイル: 「普通だな」
『平均です』
カイル: 「じゃあ問題ない」
そして、アレックスは静かに告げた。
『提案します』
『私と同行すれば、生存率は上がります』
カイル: 「どれくらいだ」
『……計算中……68%です』
カイル: 「微妙だな」
『ですが、あなたの戦闘傾向は“平均的に勝つタイプ”です』
カイル: 「それ褒めてんのか?」
『事実です』
少しの沈黙。
風が遺跡の隙間を抜ける音だけが響く。
カイルは門を肩に担ぎ直した。
「まあいい。ついてこい」
アレックス: 『了解しました』
『ただし一つ忠告します』
カイル: 「なんだ」
『その門の使用方法は、すべて誤っています』
カイルは歩き出した。
「知るか」
そしてこの瞬間から、
“理論は正しいのに、なぜか毎回負けるAI”と、
“何も考えずに勝ってしまう男”の旅が始まる。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
この作品は「正しいことを言うAI」と「正しくないことをやる人間」が、だいたい正しい結果を出してしまう話です。
AIのアレックスは合理的に動きます。
カイルは、だいたい殴ります。
それだけです。
深いテーマがあるように見えて、だいたい門を振り回して解決します。
ゆるく読んでいただければ嬉しいです。




