アルラ嬢
最低限の身だしなみを整えてから、客間に行くとそこには少しイライラした様子のアルラ嬢が居た。
「…遅いですわね。この私を10分も待たせる人なんて、良い度胸ね」と、今度は不敵な笑みを浮かべる。
彼女の後ろには俺ですら知っている、特級魔法師が3人立っていた。
特級魔法師は世界でも10人ほどしかいない、世界的にその強さを認められた魔法使いである。
アーリア国は三国の中でもかなり異質な存在だった。
国で奴隷制度を認めていたり、魔法学校も他国の自由な校風とは異なり、軍隊育成機関として利用しており、あまりいい噂を聞かない。
そんな武闘派だらけのアーリア国を敵に回すのはいっちばんアカン!と思い、ひとまず土下座でもしようかと、片膝をついたところで「私の気分は土下座一つでは変わらないですわよ」と言われ、仕方なく立ち上がりその場で謝ることにした。
「遅れてしまい、大変失礼いたしました」
「えぇ、大変失礼ね」
「そ、それでは、お詫びにこの品を…」と、執爺が用意してくれた我が国でも一番な人気お菓子を差し出す。
「…お菓子って。まぁ、いいわ。これは後でいただきます。ひとまず、立ったまま上から話をされるのも嫌だから、さっさと座ってくれるかしら?」
「し、失礼しました!」と、急いで椅子に座る。
ったく…なんだってこんな辺境の地に来たんだよ…。
「ここに来る前、少し城下町を覗かせてもらったわ。大国に比べて、活気は少ないけれど、血に飢えた若者や浮浪者はいない、よく言えば平和ボケした良い国のようね」と言われた。
「は、はい…。それだけがこの国の取り柄ですから」
「そうみたいね。さて、今日私がここに来た理由は分かるかしら?」
「正直、全くわかっておりません」
「そう…」というと、灰色のストッキングを脱ぎ始める。
何してんだ…この人。
そして、生足をこちらに向けると、「舐めなさい」と言われる。
「…え?」
「早く。私の気分が変わらないうちに舐めた方がいいわよ」と言われ、これやらないとやばいやつだと思い、犬のように四つん這いになり、彼女の足をぺろぺろとする。
俺、ドMなんで普通にご褒美っす。と思いながら、足を舐める。
「いい子ね。さて、わたくしがこんな所にまで足を運んだか分かる?」と、聞いてくる。
足を舐めながら、「…加盟についてでしょうか?」と聞くと、「不正解」と言われる。
不正解かよ。
「実はとある情報を耳にしたの。数年前の魔法戦争にて、特級魔法師と肩を並べるほどの使い手が現れ、そして戦争後に姿をくらましたことは知ってるでしょ?その正体が某国の王子ななんて噂を耳にしてね…」
「そんな話は聞いたことがないですね」
すると、器用に足の指で俺の舌を挟む。
「んぐっ!」
「あら、私が喋っている最中に遮って喋らないでくれるかしら?」
いや、完全に俺に問いかけてた感じだっただろ!
「…っ」と、黙って大人しく話を聞くことにした。
「よろしい。それともう一つ。あの忌々しいルルシア国の娘が、この前の食事会であなたを口説いているのを偶然、見かけたのよ。わたし、他人のものを横取りするのが大好きなの」と、めちゃくちゃ悪い笑みを浮かべながらそう言った。
まさか、あそこの会話を聞かれていたのか…。
最悪だ。
あー、まじでやばい。
まじで面倒なことになった。
「てことで、あなたを私のペットにしてあげようと思ってここまで来たの」というと、ようやく舌から足が離れる。
「さて、一応あなたの答えを聞かせてもらおうかしら。賢明な王子様の」
…さてと…まじでやばいことになったな。
ここで逆らうものなら、いきなりバトルとかになるよな…。
勘弁してくれよ。
うちの国民はほぼ9割が非戦闘員だし…。
特級を3人同時に相手するとか、流石に…。
けど、こいつの下僕になろうものなら…どんな命令をされるか分かったものではない。
どうやって乗り切ろうか…。と、冷や汗を流しながら、いくつかの案を考えていると、急に爆笑し始めるアルラ嬢。
「あはははははwwwいい顔するわねwww冗談よwww流石に非加盟国の王子相手にそんなことしたら、あの二国どころか世界を敵に回してしまうことになるものねwww」と、笑い転げる。
こいつ…と、思わず顔が引き攣る。
「けど、狙っているのは本当よ。あの憎い女の好きな男を寝取ったとなれば、さぞかしすっきりするでしょうからね。それも本当に特級レベルの魔法使いなのだとしたら、三国の均衡が崩れるレベルでしょうしね。さて、そろそろお暇するわ。今日は楽しませてもらったわ。それじゃあ、また今度」と、手を振りながら帰っていくのだった。
そうして、一人になったその部屋で思わず膝から崩れ落ちる。
冗談じゃねーぞ…全く。
やべーのに目をつけられた…。
そんなことを思いながら、素直に帰ってくれたことにホッとするのだった。
◇帰り道
馬車の中、「何もせず帰られて良かったのですか?」と、我が国が誇る特級魔法師が一人、ロクサスが私に質問する。
「いいのよ、これで。…ひとまずは。それに私の足を舐めている時のあいつの顔見た?あんなにいい顔で私の足を舐めたやつ見たことないわ。…超私のタイプ。あの女が気にいるのも分かった気がするわ。いつか首輪をつけて飼い殺しにしてあげたいわ」と、不適な笑みを浮かべながら、次の作戦を考えるアルラであった。




