魔法の手 【月夜譚No.384】
幼い頃は、魔法だと信じていた。
祖母の趣味は手芸で、よく私の服や小物を作ってくれていた。布や糸、毛糸から様々な形を生み出す皺くちゃの手は、私にとって魔法の手だった。
成長して色々なことを知り、それが魔法ではないと解った後でも、祖母に対する尊敬の念は薄れることはなかった。
年を取った今は細かい作業が難しくなってあまり作らなくなってしまったが、今までの作品は私の宝物だ。着られなくなった服も使わなくなった巾着も、大切に保管してある。
「痛っ」
走った痛みに声を上げて指先を見ると血液が球になっており、見てしまった分痛みが増したように感じた。
やっぱりあれは魔法だったのかもしれないと、溜め息を吐いて手許に視線を落とす。何と特定できないほど歪んだ刺繍は、手芸本にある写真とは似ても似つかない。
祖母の偉大さに改めて感じ入りつつ、私は再び針を手に取った。




