家庭力発揮
同棲を始めて半年が過ぎ、陽太と美月の生活はますます落ち着き、チルさが増していた。
しかし、家の中では元ヤンならではの意外な家庭力が次々と発揮される日々だった。
ある土曜日の朝。
陽太はキッチンでエプロンをつけ、にんじんやじゃがいもを切っていた。
「今日は肉じゃが作るで!」と鼻息荒く宣言する陽太に、美月はソファから手を伸ばして缶コーヒーを差し出す。
「ふーん、やるやん。じゃあ私は副菜作るわ」
二人は自然に分担し、家の中は小さな戦場……いや、平和なキッチンに変わる。
陽太は昔の喧嘩仲間への対抗心ではなく、どちらかというと“どっちがうまく作れるか”の競争心で野菜を切る。
美月も負けじと包丁さばきを見せるが、切った野菜をこぼして思わず笑ってしまう。
「うるさいな、落とすなや!」陽太が怒鳴る――と思いきや、すぐに笑顔に変わる。
「……でも、こうやって作ると楽しいな」
美月も、「やっぱり二人で作ると美味しさ倍増ね」と頷く。
午後には掃除の時間。
陽太はモップを握り、リビングの床をゴシゴシ。
美月は窓ふきと洗濯を担当するが、途中で掃除用具を落としてしまい、二人で大笑い。
「元ヤンとは思えんほどマジメやな、俺たち」陽太がつぶやくと、美月も笑いながら答える。
「昔の私たちなら、絶対家事なんてせんかったわね」
料理や掃除だけでなく、DIYも二人の得意分野だ。
本棚の組み立てや棚の取り付けも、二人でやればあっという間。
「やっぱり俺たち、力仕事は得意やな」と陽太が言えば、美月も「見て、この手際!」と胸を張る。
夕方、二人で作った肉じゃがと副菜を並べ、ソファで食事をする。
タマもおこぼれを狙って足元でちょこんと座る。
「……こんな平和な日常、悪くないやん」陽太がつぶやくと、美月は微笑みながら頷く。
「うん。元ヤンだった頃の私たちも好きやけど、こういう日々も悪くないわね」
元ヤン二人の家庭力は、ただの家事スキルだけではない。
互いを支え、笑わせ、助け合う力。
荒くれた過去を知るからこそ、日常の小さな幸せや温かさが、より輝いて見えるのだった。
こうして、元ヤン夫婦のチルでほのぼのとした日常は、料理や掃除、DIYといった家庭力を通して、ますます深まっていくのであった。




