元ヤンの習性
同棲を始めて数か月。
陽太と美月の生活は、穏やかでチルな日々が中心になった……かと思いきや、時折、元ヤンの血が騒ぐ瞬間があった。
ある休日、二人は近所のスーパーで買い物中だった。
カートを押しながら、陽太がふと横の通路に立つ若者グループを見て眉をひそめる。
「……なんか、態度でかいな」
美月も目を光らせる。
「ほんまや。ちょっと注意してやらんと、見てられん」
二人は自然に近づき、若者たちに軽く口を利く。
「すまんな、道譲ってや」
若者たちはびっくりした様子で「はい……」と返事する。
買い物はそれで済んだが、二人はお互いに小さく笑い合う。
「昔のクセが抜けてないな、私たち」陽太が笑うと、美月も「しょうがないわよ。元ヤンやもん」と返した。
その夜、家で料理をしているときも、二人の元ヤンらしさは見え隠れする。
「おい、塩、ちょっと多すぎやん!」陽太が小さく怒ると、美月も負けじと「何言うてんのよ!あんたこそ味見せえや!」と返す。
キッチンでの小競り合いは、喧嘩というよりコミカルな遊びのようなものだった。
その後、二人は笑いながら一緒に鍋を煮込み、味見しながら調整する。
「……まあ、喧嘩しながら作る料理も悪くないな」陽太がつぶやくと、美月も頷いた。
「うん。昔みたいに手を出すこともないし、平和やな」
またある日、散歩中に近所の猫を追いかける小学生に遭遇する。
小学生の勢いに押されそうになると、陽太と美月は無意識に守るように手を伸ばす。
「大丈夫か?」陽太が声をかけると、小学生はびっくりしながらも「はい!」と返事。
美月はにっこり笑い、猫をそっと助ける。
こうして二人の元ヤン気質は、街や日常の小さなトラブルで自然に発揮される。
しかし、暴力ではなく、守る力として、チルで優しい形になっていた。
夜、ソファに並んで座り、タマが膝に丸くなる。
「……やっぱり、元ヤンでも、こうやって穏やかに暮らせるんやな」陽太がつぶやくと、美月も笑う。
「うん。でも、こういうちょっとしたクセが出るのが、私たちらしいわね」
元ヤンの習性は消えずとも、二人の生活はチルで温かい。
荒くれた過去を抱えながら、今は平和に、笑いと愛情に満ちた日常を楽しむ二人。
こうして、元ヤン夫婦のチルな日常は、今日も静かに、でも少しだけ荒ぶる形で続いていくのだった。




