交際開始と昔話
再会から数週間後、陽太と美月は自然に連絡を取り合うようになった。
電話やLINEでくだらない話をしたり、たまに地元のコンビニで顔を合わせて雑談したり。
ある日、陽太が少し勇気を出して言った。
「美月、ちょっとだけ、飯でも行かへん?」
美月は少し間を置き、くすっと笑った。
「行ってもええけど……私、まだ昔のクセ出るで?」
陽太は笑いながら肩をすくめた。
「ええよ。昔みたいに手は出さんし、口喧嘩くらいなら付き合うで」
こうして二人の“元ヤンデート”が始まった。場所は、地元の居酒屋。
小さい頃から慣れ親しんだ街で、昔話に花が咲く。
「覚えてる?お前が放課後に体育館裏で勝手に決闘してたこと」
美月は笑いながら頭をかく。
「覚えてるわよ。お前も、あの時俺の味方してたやん」
「俺も必死やったんや。あんた強すぎて、止めとかんと危なかったからな」
二人の話は、自然と笑いとノスタルジーが混ざる。昔は暴れん坊だった二人も、今では落ち着いて、思い出話に花を咲かせることができる。
陽太がふと真面目な顔になる。
「美月……あの頃、怖かったやろ?俺、喧嘩ばっかしてて」
美月は少し考えてから、微笑んだ。
「怖かったけど……なんか、懐かしいわね。あんたがいたから、私も強くなれた気がする」
その言葉に、陽太は胸の奥がじんわり温かくなるのを感じた。
「ありがとう、美月。俺も、あんたと一緒で良かった」
その後、二人はお互いの家庭事情や、地元での近況を語り合う。
陽太は家族思いな一面を見せ、美月は昔の荒くれ気質だけでなく、友達や周囲への気遣いを見せる。
居酒屋を出たあと、二人は駅前のベンチに腰を下ろした。
夜風が心地よく、街灯が二人をやさしく照らす。
「……やっぱり、あんたと話すと落ち着くわ」美月が言うと、陽太も頷く。
「俺もや。昔は手が出るだけやったけど、今はこうしてゆっくり話せるのが嬉しい」
元ヤン同士の交際は、昔の荒くれ気質がちらりと顔を出すたびに笑いを呼ぶ。
でも、今は互いに理解し合い、気を許せる相手になっていた。
その日から、二人の距離は少しずつ縮まっていく。
昔の自分たちの武勇伝や地元の伝説話を共有しながら、少しずつ交際は本格化していくのだった。
夕暮れに染まる街を歩きながら、二人は思う。
「昔の私たちは荒くれ者だったけど、今は……この人となら、穏やかに生きられる」
元ヤン二人の、少し荒削りだけどチルで温かい日常が、こうしてまた一歩始まったのだった。




