出会いと喧嘩
夕暮れの商店街は、少し物寂しい雰囲気を漂わせていた。
駐車場の隅で、桜井陽太はスマホをいじりながら、ふと通りを見やった。久しぶりに会う、地元の友人に会う約束があったのだ。
そのとき、どこからともなく聞こえてきた大声に振り向く。
「おい、ちょっと待てや!何すんねん!」
声の主は、高野美月だった。赤い髪を風になびかせ、両手を腰に当てて睨みつけてくる姿は、まるで昔の「女帝」そのものだった。
「美月……?」陽太の口が思わず漏れる。
数年ぶりの再会だった。高校を卒業して以来、互いの消息はほとんど知らなかった。
だが、たった一目でわかった。あの時の気の強さ、迫力、そして微妙に怖いオーラ。
「陽太か……あんたも相変わらずな顔しとるな」
「美月も相変わらず……いや、前より怖くなってるか?」
二人の視線が絡む。沈黙が少し流れたあと、自然と昔のクセが出た。
「……なんや、その態度。まだ俺に文句あるんか?」
「文句じゃないわよ!ただ、覚えてろってだけ」
それだけで、周囲の空気が少しピリッとする。
二人の元ヤン気質は、数年経っても消えやしないのだ。
陽太は思わず笑ってしまった。
「いや、懐かしいな。こんなやり取り、久しぶりやな」
美月も、少し口角を上げて笑った。
「ほんまやな。でも、昔みたいに手は出さんでよ」
一瞬、二人の間に昔の喧嘩の緊張感が走ったが、今度は違った。笑いを含む空気が混ざる。
互いに「昔はやばかったよな」と思いつつも、今はもう暴力ではなく、口だけで戦う日常が楽しいと思える年齢になっていた。
「そういえば、なんでここにおるんや?」陽太が尋ねると、美月は肩をすくめた。
「友達に呼ばれてきただけ。でも、ついでに昔の知り合いに会えたのは嬉しいかな」
その瞬間、商店街の駐車場に小さな車がバックで入ってきて、二人は反射的に飛び退いた。
「危ないやろが!」美月が叫ぶと、陽太も「おい、気をつけろ!」と叫ぶ。
二人は自然に手を取り合い、危機を回避した。その時の距離感の近さに、二人とも少し赤面した。
「……なんで手を?」陽太が言うと、美月は少し笑って「危なかったやろ」とだけ返した。
昔なら、ここで言い合いから喧嘩になっていたかもしれない。
しかし今は、笑いながらお互いの存在を確認するだけで十分だった。
その日の夕方、二人は商店街の小さな喫茶店でコーヒーを飲みながら、過去の武勇伝や、地元の変わった話を語り合った。
昔の荒くれ気質は残っているが、今の二人はチルに日常を楽しむ。
初めての再会は、少し火花が散るような口喧嘩から始まったが、最後には自然に笑い合う温かい時間となった。
「また会おうな、陽太」
「ああ、美月。またな」
こうして、元ヤン二人のチルな夫婦生活の始まりは、思わぬ再会と昔のクセが混ざった、ちょっと荒削りだけど温かい日常から幕を開けたのだった。




