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2.2/探検! プノム・ペン中央駅

 プノム・ペンにはカンボジア鉄道の中心地である、プノム・ペン中央駅を訪問した。場所は目抜き通りのモニヴォン通りに面しているので誰にでもすぐに分かるだろう。駅の構成要素は櫛形プラットホーム、多数の留置線、車両整備工場二つ、バイヨン・セメント社倉庫、モニュメントとして飾られている蒸気機関車、カンボジア鉄道の中でも最も大きい3階建ての駅舎などだ。


 駅舎前のプラットホームには、バッタムバン行きの混成列車PB11番とシハヌークヴィル行きの混成列車PK21線番専用線が用意されている。ここでは毎日05時30分〜07時00分頃まで、始発列車に乗り込む乗客と物売りがあふれている。物売りの数はバッタムバン駅の方が圧倒的に多いだろうが、プノム・ペン中央駅の方では無秩序なところがなく、効率的だと感じられた。


 留置線には、貨車やトロッコが編成のまま停車されている。有蓋車では貨物の積み込んでいる。貨物の荷はタイ製の加工製品や加工食品であることが多い。無蓋車の方は使用されているのは分かるが、ただ幌をかけて放置されているような印象を受ける。


 駅の隣にあるボォーエンコック湖岸には、廃棄された貨車がいくつかあり、人が住み付いている。それらの貨車の中の一つは、カンボジア映画「戦争の後の優雅な夕べ」の撮影に使用され、住み慣れたアパートをポル・ポト派兵士に追い出されて行き場を失ったヒロインが住んでいたものだ。映画の中ではこの貨車の住人はカンボジア・、マフィアに拉致されたりして、ずいぶん酷い目にあっていたが、今そこに住む家族はとてものんびりとしているのでギャップが大きい。


 車両整備工場は2つあり、一つは機関車用で、屋内でエンジンのオーバーホール(分解整備)まで行える。カンボジア鉄道のすべての機関車をバックアップする大変に重要な施設だ。また車庫の奥には動態保存中の蒸気機関車SL231型501番、準動態保存中のSL131型103番(バッタムバンの車両とは別物)やSL231型508番などが腰を降ろしている。この工場の動きは多くのフランス人の鉄道ファンたちが注目している。もう一つの整備工場では非牽引車両の修理などが行われる一方で、蒸気機関車シミュレーターが置かれている。ただしそうとう長期間使用されていないので、埃と蜘蛛の巣がすごい。一応、蒸気機関車SL231型504番を名乗っており、車体には「Premiere poiche de SAMDECH EUV Ligne PhomPhenh Sihanoukville」と書き込まれている。


 バイヨン・セメント社倉庫には常に人が溢れているのだが、一体何をしているのかは想像が付かない。廃棄された客車を一両譲渡され、倉庫裏に停められている。もちろんそこに住み込む人々が多数いる。


 静態保存された機関車は1912年製のSL131型106番。2000年3月には見られなかったもので、外見はまるで新品に見間違うほどに復元されている。夜になるとライトアップされ幻想的な雰囲気を醸し出す。しかし夜間にうっとりと眺めていると鉄道員には「危ないのでさっさと帰れ」と注意される。だったら何でライトアップしているんだと、思うのだが鉄道員の注意はもっともなので、「毎晩」言葉には素直に従うことにしている。


 ところでこの駅からボォーエンコック湖沿いにトンレ・サープ港へと向かう約6キロメートルの廃線区間がある。その廃線は、プノム・ペン港(トンレ・サープ港)へとつながっていたのだが、現在ではその路線沿いに住む人々以外には忘れ去られてしまった。路線沿いに住む人々以外と書いたのは、沿線の住人はその廃線をエンジン無しのトロッコ利用して荷物などの運搬しているからである。その廃線区間はチュロイチャンワー橋のロータリー脇にあるタイ大使館の正面に位置するフランス大使館のさらにお隣さんのフンシンペック党本部横から入る70番ストリートと交差しているので見学は非常に簡単に思えるがそうでもない。何故ならその70番ストリートはカンボジアでは最も罪深いストリートの一つであり、何とルネッサンス期のフィレンツェで活躍した歴史家として有名なグイッチャルディーニ先生の美しい表現によれば、『世界最古の職業に従事する女性』の職場に包囲されているのである。


 そんな不適切な場所に廃線という遺跡があるのは、荒廃した文化にもやがて黄昏が来るという神の啓示なのだろうか?


 そんなわけで、もしその廃線を見学に行かれる女性の方がいらっしゃるならば、けっこうインモラルでデンジャラスなエリアのど真ん中なので明るい中に、出来れば自制心の強いマッチョな友人同伴でどうぞ。そして、オッサンであれば道の左右に張り巡らされた怪しい誘惑には決して負けないように……。なお、そのエリアではカンボジア語よりもヴィエトナム語の方が通じるらしい。

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