表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/27

0.0/車窓を通さなければ見えない旅への誘い

つい最近の話。

大昔に作成して放置してあったワープロソフトのファイルの内容をサルベージした。懐かしい。

打ち込んだテキストはほとんどなんとかなったけれど、改行が全滅した。

特殊文字が保持出来たと言うに関わらずだ。

改行は文字コードの痕跡を検索・置き換えでそれらしき処理は行った。

そんな事情でここにコピペしたテキスト・データの状態が完璧とは言い難いのでごめんなさい。

結局、校正なしでアップしてしまった。

ところでテキストの内容は90〜00年代のカンボジアの鉄道の情報。

当時、とりあえず知り得た情報をまとめておこうと思って書いたもの。

なお、ここに書かれている情報は今となってはあまりも昔のものであり、きっと全てが完全にアップデートされてる筈。

どうやら、今では特急「オホーツク」がカンボジアの鉄路を走っているらしいし。当時はそんな未来が来るとはまったく予想していなかった。

だから、まあ、だから、過去にはこう言う状況だった事もあった・・・と言う程度の意義しかない。

東南アジアにおける西欧諸国の勢力浸透の可視化に、鉄道施設の歴史が有効だと思い付いたのがリサーチの始まりだった。

ただし、マレー半島方面でのリサーチは手垢まみれどころか、手を付ける所が全く残されていなかった。「Railways of Thailand」などの英語書書籍一冊読めば理解可能な程に上手に纏められていた。

一方、インドシナ半島方面は手付かずに思えた。少なくとも、鉄道メインの研究の成果は発見出来なかった。

それで手始めにカンボジアの鉄道から始めたと言う訳だ。現地調査とか過去の公式文書漁りを行い、見えて来た過去の情景を纏めたのがコレである。

書き上げた後は日常が忙しかったので完全に放置状態に。気が付いたら、いつの間にか・・・ウィキにカンボジアの鉄道のページが誕生していた。やったぜ。これで自分で調べなくても、待ってれば欲しい情報は誰かが集めて、手稲に纏めてアップしてくれるだろう。だから、もういっかな・・・と言う感じでこの分野の活動は完全にお終い。

今へと到る。

クメール語の文字の「変化」があまりに難解だったせいもあるなあ。


6.8/カンボジア鉄道の駅と停留所の一覧表

これは当時にカンボジア鉄道職員が使用中の表を撮影したものから起こしている。今では細部が異なってる気がする。


まあ、よろしければどうぞ。すべて若毛(わかげ)(いた)りですが。

 カンボジア鉄道はプノム・ペン中央駅を中心とした2つの幹線で構成されている。2つの幹線とはプノム・ペンとタイ国境を結ぶ北線とプノム・ペンと外港のあるシハヌークヴィル南線のことだ。


 どちらも全線単線であり、逆方向からの列車と交換するためには大きな駅にあるプラットフォーム部分の待避線を利用して交差する必要がある。


 最初に北線を建設したのは植民者であったフランス人、その後にその事業を引き継いだのは植民地インドシナに駐留していた旧日本陸軍である。


 フランス人はカンボジア最大の穀倉地帯であったバッタムバンからメーコーン川までタイ米を運ぶことが鉄道建設の目的とした。そして旧日本陸軍はインドシナ駐留軍をマレー半島やイギリス人の植民地であったビルマ(ミャンマー)方面へ速やかに移動させるための手段として鉄道を必要としていた。


 北線に関して言えば最初から最後までカンボジア人のために建設された鉄道ではなかったのだ(今となっては終わりよければすべてよし、になっているが)。一方南線は100%カンボジア人のための鉄道として建設された。開通は内戦前のシハヌーク治世の末期で、プノム・ペンへシハヌークヴィルの外港から発電用の燃料や生活物資を輸送する国家を支えるインフラという大役を担うために誕生した。


 旧日本陸軍が手を加えた後、北線はカンボジア・タイ国境の街ポイペトまで通じる長大な路線となった。しかしカンボジア共産党のポル・ポト派がカンボジアを支配した時期に、ポイペト〜シソポン間の路線の列車運行が停止させた。そしてそれ以来、ポイペト〜シソポン間の路線は地図に記載されながらも一本の列車たりとも通過していない。おかげでカンボジア鉄道は長いこと、他国の鉄道と交流することのできない独立した鉄道であり続けている。シソポンとはプノム・ペンからインドシナ半島最大の淡水湖である「トンレ・サープ」の東湖畔と西湖畔を迂回してタイを目指す国道5号線と6号線が交差する交通の要所である。6号線はアンコール遺跡群のあるシエム・リアプへ通じる旅行者御用達のカンボジア最大の回廊だ。なお鉄道を利用してアンコール遺跡群の観光の旅をすることはできない。何故なら鉄道は5号線に近いルートを採ってプノム・ペンへ向かうからだ。


 タイのアランヤプラテート(ポイペト)からカンボジアへ入国した旅行者がカンボジア鉄道の北線を利用する際は、このシソポンまで乗り合いタクシーなどの交通手段で移動する必要がある。ただしシソポンからプノム・ペンまで鉄道を利用すればノンストップに移動できる、というわけではない。シソポンを出発する上り方面列車は1日1本で列車番号BS32でカンボジア最大の穀倉地帯の中心にあるカンボジア第二の都市バッタムバンで一泊する必要がある(下り列車は列車番号BS31と呼ばれてる)。翌朝まで待って、これまた1日1本しかない翌朝に上り方面である列車番号PB12でプノム・ペンまでまで南下するという1泊2日の旅となる。プノム・ペン行きの列車は中継地点となるプルサトで下り方面列車番号PB11と交換する。そしてカンボジア鉄道最大の難所である山岳路線の上り勾配に挑戦することとなる。その後は深夜になってプノム・ペンに到着するというのが旅のスケジュールだ。


 プノム・ペンからさらに海と港の街であるシハヌークヴィルへ移動するには、2日に1本しかない、つまり翌朝または翌々朝の下り方面列車であるPK21に乗車する必要がある。この列車はUNTAC時代に日本の自衛隊が駐屯していたタケオ、古い漁港カムポートなどを経由して1日を費やして終着駅へと到着する。


 そう考えるとカンボジア鉄道の全線走破には最短で2泊3日、運が悪くても3泊4日で可能だ。しかしながら乗車距離はたった602キロメートルにしかならない。その程度の距離でどうして2泊3日かかるのかというと、それは列車の移動速度が遅いからである。実は平均時速は約時速20キロなのである。その理由も地上インフラ、つまりレールや道床などの状態が非常に悪いために列車が高速移動をすることができないという悲しいものだ。


 かつての内戦時代ではこの鉄道は幹線から外れた熱帯雨林の中や小さな集落などを通過して目的地へ通じているために、ゲリラや山賊の攻撃対象となった。それはカンボジア鉄道の多くの機関車に対爆装甲が施されていることからも伺える。しかし平和担った現在ではそれがカンボジア鉄道の新しい魅力となっている。それはつまり、幹線を離れたカンボジアの方々の一般的な暮らしを垣間見るためには、鉄道を利用する以外にはないということだ。カンボジアでは乗り合いタクシーなどで移動しても結局幹線しか通過せずに目的地となる大都市へ到着していしまう。またどこか地方行く際にも、確実な目的地がなければ、観光地以外で生活する方々と巡り会うことはできない。しかし鉄道ならば、ただ車窓に頬杖をして流れる景色を目にしているだけで、そんな人々の素朴な暮らしを目にする機会に恵まれる。またそんな幹線から離れたところの住人も車内には乗車してくるので、思わぬコミュニケーションの機会を得ることもできる。


 幹線から離れるとカンボジアの風景から「色」が消える。それはハデハデな原色系のペンキで塗装されたトタンを利用した住居やゴミの袋が視界から消えることを意味する。それは案外新鮮である。そして自然の暮らしというのはそういうものなのか、と知ることもできる。回りにあるものすべてが木材やニッパスの葉という、私たち日本人には馴染みの薄い世界を見てみるのもきっと、意義ある体験となるだろう。本当の自然のままの人々の暮らし、そして予期せぬ素朴な人々の出会い、さらにちょっとだけ冒険気分が味わえる、カンボジア鉄道の旅。それは今は旬に違いない。Do not miss the bus! (さあ、バスに乗り遅れるな!)


 最後に鉄道を利用する差異に便利な駅の略称を紹介する。プノム・ペンは「P.P.」、バッタムバンは「B.B.」、シハヌークヴィルは「S.V.」である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ