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第70話 最底辺……。

 幼馴染(おさななじみ)逢沢弘美(あいざわひろみ)とバイバイして自分の部屋に戻って来た僕、風祭疾斗(かざまつりはやと)17歳。ベッドに転がり、スマホの画像フォルダを漁る(あさる)。数ある弘美の写真(思い出)


 ──こんな僕が明誠のアイドルを泣かせてしまった。


 事実は小説より奇なり──。


 これが小説ならとんでもない駄作(ださく)な気がする。数多(あまた)の女子達が冴えない男子を取り合うお決まりの展開を、世の男性達は恐らく好んで読むのだろう。


 主人公、風祭疾斗はそんなチャンスをどっち付かずでフイにしそうだ。多分読み手はさぞ面白くない結末に作品フォローすら外すだろう。


「嗚呼、何が一体正解なんだよ?」


 恋愛シミュレーションゲームで、爵藍颯希(しゃくらんいぶき)ルートか。あるいは逢沢弘美ルートか。下手すりゃバッドエンドも在り得なくもない瀬戸際(せとぎわ)


 まさかルート側からカーナビのように『次、500m先交差点、颯希(ライバル)側へ……』と指示されるとは思わなかった恋愛IQゼロな僕。


 漁っていた写真フォルダの中にいずれの()()()も笑顔で映り込んでるものを見つけた。胸が苦しく頭が痛い。


 僕だってそりゃあ可愛い彼女が欲しいただの男子だ。言葉悪いが友人の刈田祐樹(かりだゆうき)の様に、誰にも相手されず『ただの()()()()()()()()()でした』で終わりたくない。


 でも美少女のどちらか一方をこの僕が泣かせるんだ……。片腹でなく物理的(リアル)にお腹が痛くなりそう。しかしフラれた側は、お腹痛いじゃ済まない筈だ。


『もぅ……どうせ()は決まってるんでしょ?』


 弘美はそう言ってる次第。だから無駄に悩む僕が馬鹿なのだろうか? Like(好き)Love(愛してる)。答えを出す前に欲望に負け、Love側を先走りで形にした。


 ──だって仕方ないじゃないか。颯希のLoveルート、恋愛経験ゼロの僕には余りに刺激的過ぎた。


 恐らく僕は既に爵藍颯希をLoveで見ている。もう見るしかない瀬戸際まで来ている……と思う。

 ただ僕の心の引き出しの中に告白の勇気が転がっていないだけ。


 小説の登場人物『フィルニア・ウィニゲスタ』と実際の女子『爵藍颯希』は当たり前なくらい別物なのだ。フィルニア姫に対する憧れを颯希姫に重ねるのはガキの発想。


 それでも颯希に『僕だけのフィルニア姫になって欲しい』と懇願(こんがん)すれば、あの娘は泣いて歓喜(かんき)し、一生モノ(プロポーズ)って受け取る気もする。それは正直重い(怖い)


 ──NELNの通知! 颯希からだ!


『@颯希 今日はなんか邪魔してごめんなさい』


 何が邪魔なものか、偶々が重なっただけ……そうだよ、偶然の積み重ねだ。


「──待て、これなんて返そ!?」


 これ、当然だが颯希の()()()()と相場が決まっているではないか。あの後、弘美と僕だけで帰った訳で『それで結局二人はどうなったの?』これが颯希の本音だ。


 馬鹿正直に『颯希ちゃんに告ったらって言われた』いやいやいやいや……そんなもん送れる訳ないだろ疾斗。


 最悪、颯希()()()は『疾斗は弘美ともL()o()v()e()しちゃった!?』あらぬ誤解すら生みかねない。


「や、やっべぇ……本気(マジ)どうしよ」


 うっかり既読を付けてしまった。長く既読スルーしようものなら『何事なの?』怪しまれて必然な流れ。


『問題ない、弘美とファミレスでお茶して帰った』


 しれッとそう答えるか?


「大丈夫、何も謝ることはないよ……送信」


 全く以って取り合えずな挨拶(あいさつ)返しで様子を見よう。


『@颯希 そっか。あれからどう()()のか思わず()()しちゃって……』


 即返事である、時間稼ぎにもならない。一体()『心配』している?

 僕の()()機能が停止しそうだよ……。


 疾風(はやて)@風の担い(にない)手、一大事(大ピンチ)。この文章に長考(ちょうこう)のゆとりは皆無だ。


 ピッ。僕は(たま)らずビデオ通話を押す。この状態、文より苦手は百も承知。だけど口下手でも良いから顔見て話をするしかない。


『ご、ごめん。颯希の顔見て話したい気分なんだ』


 これ単純に文字起こしだとやたらキザ野郎な台詞に()()()。でも正直な気分を言ったに過ぎない。


『あ、う、うん……私も自分の部屋だから……だ、大丈夫だよ』


 参った──なんてことだ……なんたることか……。颯希()()()、大層可愛い風呂上がりのパジャマ姿確定。もっと色々()()()()()()()()()後とはいえ、マジ心肺機能がヤバい。HP(ライフ)が削られるのを感じる。


 せめてただの通話にしとけば良かった──手遅れです(?)


『ええとだな……弘美とファミレスに寄って色々話した。ごめん、内容を今は言えない』


 自分からビデオ通話にしておきながら顔をそらして話をする意味不明。間違いなく顔赤いし、緊張の度合いも高まるから仕方ない。


『う、うん。分かった。は、疾斗が言えることだけで良いよ』


 颯希の声も明らかに上擦っているのが分かる。慎重に言葉を選ぶ……そんな感じ。


 ゴクッ……。息を飲み込み思わず目を閉じる。


 ──もぅ格好なんて気にしてられない!


『──ぼ、僕……風祭疾斗はぁ! た、()()……い、いや()()()颯希のことが……』


『え……』


 多分、恐らく、同じ意味の言葉を無駄に繰り返してしまう。


『──颯希の事が好きです!』

『──ッ!』


 遂に……遂に言ってしまった。もう後戻りなんて出来ない。恋愛シミュレーションゲームでも、告白するなら時と場所で大いに悩まないとフラれて終わる。


 我ながら最底辺の告白イベント──だけども今の僕に出来る精一杯は、これしかなかった。

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