第43話 逢いたい+外で+優しくされた≒内緒だよ
───お兄達って今頃、どの辺なんだろ…………。ま、聞いた処で多分判らん!
僕、風祭舞桜。
特にやる事もない日曜だと言うのに割と早めに目覚めてしまった。
「大体だなあ…………。夜中3時頃、ゴソゴソ物音立ててたお兄が悪いんだ。お陰で眠りが浅………ふわぁ………」
生欠伸がどうにもなんない。最近お兄は朝眠そうな時、珈琲を苦そうに飲みながら『やっぱり全然違うんだよなあ』って、イミフなことを言っている。
───さ・い・き・ん?
ひょっとしてそれもあの出来る美少女転入生絡みなのかぁ? 在り得る、お兄は良くそういうのに絆されやすい。
「NELN通知? 誰から───って、ええ…………嘘ン」
凄く珍しい人からのNELN。
小さい頃は良く遊んでくれたお姉ちゃんのNELN。でも今となっては僕と直接連絡は殆どしてない。
あれだけ眠かった筈なのに………筈なのに………。完全に起きた気分だ。多分彼からの連絡よりも。
『@弘美 おはよ、お久しぶり。朝からゴメンね、起こしちゃったかな?』
「な、なんか焦るな『───お、おはようございます。い、いえ大丈夫です』」
ピッ、送信。───なんだろ? この不安な気持ちは?
『@弘美 実は疾斗と何となく話したいなって思ってNELNしてるんだけど既読も付かなくて…………』
───ギクッ!? ギクッギクッギクッ!?
お兄、バイクの運転中なのか? 弘美お姉ちゃんだってなにも僕に連絡することないんじゃ…………。
『お兄なら超朝早く出掛けてます。バイクを取りに東京の西側に行くとか…………』
ちょっとだけ迷ったけど、なにも隠すことじゃないし、なにしろ僕がこれで悩むのは間違ってる。その割には───ゆ、指が震えてるけど。
『@弘美 バイク!? 疾斗免許取ったんだ?』
───あちゃー、やっぱり言ってなかったんかーいっ! めんどくさいことになりそな予感的中。
「も、もうなんか嫌なんだけど…………。『は、はい。この間、取った! って自慢されました。聴いてなかったんですか?』」
『@弘美 うん、初めて聞いたよ。あ、でもでも自転車で練習してるの私も見たから、多分取るんだろうなぁって思っていたよ。そっか、無事取れて良かったね』
「え、そうなんだ…………。そんなことがあったのね」
近頃弘美お姉ちゃんはテニス部が忙しくて、放課後は殆ど会えてないって聞いてたんだけどな…………。
そんな話を聞いちゃったら、他の話も聞きたくなっちゃうじゃァァないか。
「さてさて、どう打つ? 『最近お兄、弘美お姉ちゃんの相手、ちゃんとしてますか』 攻めすぎじゃない? ま、いっかぁ」
───なんだろ? 既読付いたけどしばらく返事が来ないよ?
「なにがあったお兄と姉ちゃん!?」
───これはこれは詮索したくてしようがない展開じゃァァないかっ! 悪い方か? それともそれとも?
『@弘美 え、私の部活が忙し過ぎてあまり相手出来てないけど』
───次! 次! その続き早くプリーズッ!
『@弘美 でも優しくしてくれたよ』
「ぬあにぃぃぃッ!? でも優しくしてくれたよとは一体何をぉぉぉっ!?」
ゴゴゴゴゴッ………。コイツは手に汗握る展開じゃァァないかッ!!
お兄、いやさ風祭疾斗よ。アンタ一体なにをしたんだっ!? しかもこの間、愛人の家に御泊りキメてたよなァァァ!?
───まさかこっちもキメていたとォォッ!?
『k・w・s・k!!』
「フフッ………。これはさぞかし困っているに違いあるまい。酒ッ! 呑まずにはいられないッ!!」(注:あくまで中学2年です。多分に兄貴の影響を受けていると思われます)
いやいやいやいやこれは返事に時間かかるわ。だけど、この長さすら最早と・う・と・いッ! 朝の一杯(注:牛乳です)がこれ程美味く感じるとはッ!
『@弘美 えっとね………内緒にしてね』
───無論だッ! 内緒とはこれ蜜の味ィ!
『@弘美 実はこの間、凄く疲れた部活サボっちゃってね。そしたら疾斗にとても逢いたくなっちゃったの』
「はぅッ!?」
ゴクリッ………。しかも地味に誤字ってんぞ、手ぇ震えてんじゃないの?
これはライトノベルみたいな展開だぞ。優しくされたッ! 内緒ッ! そして逢いたいッ! それすなわち男女の密会!! きっと今頃弘美お姉ちゃん、顔真っ赤にしてこれ送ってるぞッ!
『@弘美 ほ、ホントに誰にも言わないでね! そしたら疾斗、夕方なのに自転車飛ばして家の近くまで来てくれたの』
───嗚呼…………駄目。僕もぅ尊死寸前…………。ってか、やるじゃんお兄。
『@弘美 い、家には上げていないよ! 近所の公園で逢ってくれたの』
待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待てッ!?
いやそれは逆に家だろ普通ッ!?
「こ、公園って、そ、外よね………」
───なに当たり前のこと言ってんのよ僕ぅ!
「優しくされた + 内緒 + 逢いたい = 密会 ───外でぇぇッ!?」
思わず指折り数えてみた。そして誰にも聴かれていまいか周囲を見渡す。
待って待ってぇ!?
いくらなんでもハードル高すぎるっしょ! そ、そらあ内緒だよねウンッ!
『@弘美 私色々辛い事とか話を聞いて貰ったよ。疾斗凄く親身に聞いてくれて、そしたら私。もっと甘えたくなっちゃったの』
フラリッ………バタッ。
も、らめぇ。立って聞いてらんない。外で甘えたくなっちゃった。
これって最早足し算じゃなくて掛け算…………。違うな二乗!? そのⅩには一体何が入るのォォ!?
だめだこりゃ、中2の子供が聴いたらNGな奴だよ。
「───ンッ? ンンッ!? で、続きはッ!? 『で、で、なにがあったの?』ハァハァ(?)」
めっちゃ待たされたけど続きが来ない。
見ちゃいけない気もするけど、ここまで来たんだ後には引けぬよ?
『@弘美 やっぱ駄目、これ以上はナ・イ・シ・ョ・♡ 後で疾斗に連絡するよ、じゃあね!』
ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォイッ!!!
「ちょっと待て弘美ィィッ!! そこでおあずけはひどすぎんじゃねえのォォ!?」
───はぁ………。なんだろこの疲労。ってかこんなんで終わられちゃ、かえって色々好きに妄想出来ちゃうんですけどそれはッ!
後でお兄を尋問するかぁ?
「あ、だ、駄目だ眠い………無理ぃ」




