第27話 まさかの親公認!?
───結局………弘美には、バイクの免許を取ったこと。言えず終いになってしまった。
以前『免許取るかも知れなから自転車で練習してる』と、それなりの話は匂わせたのだ。『取りに行くかも………』が『取った!』に変わるのは、結構な変化かも知れない。
し、しかしまあ、もぅ取っちまったもんは仕方がない。いずれ正直に語る場を設けるとしよう。
───さて………では次に打ち明けるべき相手の方だ。鉄は熱いうちに打て!
告げる順番が変わってしまうが、さしたる問題ではない………………筈だ。
早速スマホを取り出しNELNを開く。@颯希へメッセージを送るのだ。
「えと………『颯希様、無事中型自動二輪免許を取得しました』……送信!」
何故だろう、この胸の高鳴りは。この間、一緒に白いバイクを拝見しに行った帰り。
颯希からの明らかなる好意を知り得た、その記憶が鮮明に蘇る。
───あの絡みから続き………が始まるのかも知れない。
良く考えてみると寧ろそうなるのが必然じゃないのか? 免許取得という最初の枷は外した。そう僕自ら宣言するのだ。
あとは颯希の好意を受け取るのか否か? そう思うと途端に緊張の度合いが増してきた。NELNから目を逸らせやしない。
「既読! ………さて、どう出る?」
ゴクリッ
思わず唾を飲み込んでしまう。す、水分が欲しい………。異様に喉が渇いて仕方がない。
『@颯希 おめでとう! 何事もなく無事に終えた?』
『@HAYATO1013 無論だ。颯希姫のお告げ通り、練習は絶大なる効果だったよ。それにヘルメットも自前を用意して本当に良かった』
先ずはごくありふれたやり取りから開始する。此処までは仲の良いただの友達に過ぎない。
『@颯希 そっかあ、良かったあ。………じゃ、じゃあ、もうバイクに乗れるんだね』
『@HAYATO1013 何を当たり前のことを。フフッ………今の僕はもう立派な風使い。中型迄なら何だって操れるぞ』
───何故だ? つい格好つけて厨二病患者の様なポーズを取りつつ逐一、メッセージを打ち込んでしまうのを止められない。
颯希のお陰で運動神経補正値ゼロのこんな僕ですら免許が取れた。そんな想いを自分でも知らないうちにアピールしてしまっているのか………恥ずかしい。
『@颯希 フフッ……何だか格好つけてる疾斗が見える気がするよ』
ギクッ!?
さ、流石はこの僕が見込んだ風の使い手。下界の民のやる事なぞお見通しとでも?
『@颯希 ………で、どうする?』
───やはり、そう来るよな。これには主語も述語も必要ない。『ストマジを受け取りますか?』という切り出しに間違いない。
NELN越しの颯希、一体どんな表情でこれを告げているのだろう………。
『@HAYATO1013 そのことなんだが、やっぱり颯希の真意を知りたい。そうでなければ受け取れない』
せっかくの好意だ。意地を張らず甘んじて受け入れれば良いだけの事………と、そこだけは、割り切れなかった。
あえて言おう、何度でも。
未だ僕は爵藍颯希の彼氏ではない。それにも関わらず『爵藍ちゃんの彼氏であるなら仕方ない』では話のスジが通らないではないか。
此処で突如、通話の通知音が鳴り響く。
「…………ごめん……なさい。そ、そぅ………だよね。当然だよね………うんっ、判ったよ。…………ただ」
消え入りそうな颯希の声が聞こえてくる。聴いてて正直痛々しいと感じる。それでもこればかりは譲れない。
「ただ?」
「………ただ、出来れば会って直接話をしたいの。しょ、正直に全部打ち明けます。で、でも疾斗の顔を見ながら伝えたい」
───っ!? 弘美に続いて『逢いたい』が今日二人目っ!?
「い、いやしかしだなあ颯希さ………ん? 窓の外をご覧よ。今日はもう真っ暗だよ。こんな時間に……その、君の様に綺麗な子が表に出るのは………良くないと思うんだが」
そうなのだ。
弘美と別れした時、既に日は暮れていた。それに何も今日でなくても………。
「だ、大丈夫。私の方は一歩も外へ出ないから」
「はっ? そ、それってどういう………」
僕の思考が錯乱をきたす。家の外へ出ないで会って話とは………それってつまり?
「だ、だからぁ………大丈夫なんだってば。は、疾斗の存在、パパとママに教えて在るから問題ない………の」
───ッ!?
ハァッ!? しゃ、爵藍家………公認の仲だって言うのかッ!?
僕の脳裏に稲妻が落ちる、驚き叫べと世界が告げるぅ!?
───颯希さん、颯希さん、颯希さぁぁぁぁんっ!? いや爵藍家!? 家ぐるみで猪突猛進の家系なのかァァッ!?
そ、そんな気を惹こうとする子猫みたい声、出してもやり過ぎだかんなぁぁ!?
まさかと思うが例のおじさんだけでなく、御両親すら『私の彼氏』などと先走っっちゃァァいないだろうなぁッ!?
「………ちょ、ちょっと大丈夫なの疾斗? 随分息が荒々しい気がするんだけど、何処か体調でも悪い?」
───体調異常じゃねえっ!! これは精神状態異常ぅぅっ!!
「い、一応聞くが話したい事って、まさか御家族も一緒に立ち会う訳じゃないよな?」
「はっ? アハハ! ま、まっさかあ! ちゃ~んと私の部屋へ案内して二人っきりで話するに決まってるじゃない」
───颯希姫の部屋で二人っきりィィィッ!? それはそれで危険な香りしかしないのだがっ!?
「………わ、判った。す、少し準備してから伺わせて貰おう。また家を出る直前に連絡するよ」
退路は完全に封じられた。あと進軍あるのみ、いざっ、爵藍家へ!
この後、夜のお出掛け理由を伝えた母と舞桜から、散々弄り倒されたのは語るまでも………ない。




