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パチンコをテーマにした作品

パチンコの虚無

本日カクヨムに投稿したもの


学生服を駅前のロッカーに押し込む。カッターシャツにジャケットという格好で入ったのはパチンコ屋だ。ジャラジャラと音が吐き出される音。あちこちで響く、リーチ、と叫ぶ少女の声。


打つのはだいたい決めている。その中で空いている台に座って、千円札を入れれば、ゲームスタートだ。


周りの連中が塾に通っている間、俺はここで、小銭を稼いだり大損こいたりする。それだけの日々だ。


成績はケツから数えたほうが早い。教師は努力努力と、昔の旧日本軍のような口癖で危機感を煽ろうとする。


そんな憤懣も、パチンコというやつは一時的に取り払ってくれる。ヘソに入っていく銀色の玉を見つめて、それが当たりに繋がることを祈る。


ただそれだけ。ぼうっとした頭が心地よい。


余裕のない世の中で、僅かな現実逃避の手段。俺は、ただ向かい合う。現実とではなく、パチンコの台と。


嫌な世界に生まれたものだ。馬鹿の一つ覚えのように言い募る、より偏差値の高い大学へ。


しかし現実は、親ガチャだ。生まれながらの勝ち組と負け組があって、しかも、精神疾患ともなれば望む望まないに関わらず負け犬となるのは確定。


そして高校というのは、患者を生み出すのは得意だがフォローは全くしてくれない。


ひたひたと、自分が無敵の人に近づいていくのがわかる。将来はいつだって暗い。


どうしてこんな世の中なんだろう。子どものような疑問がずっと駆け巡る。


教師が生み出すのは無敵の人の予備軍で、それを無理解のオトナが補強する。


俺には自分が何をやっているのかわからなかった。


土曜日に行われる英単語のテスト。センター頻出の単語と文法の並べ替え。その日には古典の活用形の試験もある。


試験試験。


ステージの上の玉が、左右に揺れながら落ちていく。


ようやくくぐり抜けた試験の先に、それが全く活かされない大学生活が待っていて、それさえも役に立たない就活が待っている。


これで人生100年なんて言われた暁には、早く死んだほうが得だとさえ思う。


希望を持つこと。それがこの国では、どんなに厳しいことだろう。


レバーが震える。保留の色が変化する。玉を打ち出すのを止めて、画面を注視する。使った玉にも満たない分が返ってくる。


結局は誰もが損するようにできている。世の中とはそんなものだ。うんざりとした気持ちを隠せない。


だがパチンコは、教師よりも褒めてくれる。見返しをくれる。ただハンドルを握っているだけで。


しばらくして店を出た。途端に俺は、高校の劣等生に逆戻りだ。あの全能感はどこに行ったのか、知る由もない。


ガリガリと神経を削られる。俺は重い足取りで家路を急ぐ。自分がどれだけ無力な存在が、改めて思い知らされる。


俺、どうしようかな。


そんな悩みを誰かが拾い上げてるれるはずもなく、俺は学ランの上から胸を鷲掴みにして、電車を待った。


可能なら、30までには死にたい。どうせ生きてても、希望はどこにもないのだから。


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