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刻のかなた(仮)  作者: 春野なお
2/2

出会い2

「まず、これはエキスパートセクションの任務です」


 聞いた事のない単語に顔を上げる。


「エキスパートセクション?」

「エキスパートセクション、通称ES。トップクラスの者しか入れない集団の事だ」


 レイが簡単に説明する。

 信じられなかった。まだ入社したばかりの新人がトップクラスの任務の話を聞くなんて。しかもこの流れだとナオにやれと言っているらしい。


「ナオ、聞いていますか?」



 いきなり司令官に顔を覗き込まれハッと我に返る。


「続けますね。まずタイムループシステムですが、ナオは知っていますか?」


 すぐに首を左右に振る。知っている訳がない。入ってくる情報に頭がクラクラしてきた。



「ですよね。ならタイムループと聞いて何が思い付きますか?」


 ナオが混乱しているのを見抜いた司令官は話を中断して分かるように説明しようとしてくれている。


「タイムループってゲームとか映画に出てくるタイムスリップみたいな?」


 やっぱり昨日までやっていた時を越えていくRPGを思い出してしまう。

 それに対しての司令官の反応は予想外なものだった。


「単純な思考に感謝したいです。まさにその通りですよ」


 馬鹿にされるか、呆れられると思っていたから、逆にこっちが拍子抜けする。実は単純な思考という時点で馬鹿にされていたのだが、その時は考えられなかった。


「タイムループシステムというのは、文字通り時を越えて行ける機能です」


 すぐには信じられない。


「本気で言ってるんだよな?」


 無意識にまた確認し、司令官が詳しく説明を始めた。


「今から20年前の話です。当時の科学者が時の流れを目に見える形で存在させる事に成功したのです。これがどういう事か分かりますか?」


 ナオは首を振る。


「そもそもタイムループシステムというのは昔から存在していたと言われています。私達が管理している場所以外にも入口が開く可能性があるんです。それともう一つ、未来や過去からここを通って犯罪者が移動するという事件も起きるようになってきた。これがESを設立する要因です」


 信じられない内容だったけど、納得しなければならなくなってきた。


「じゃあこの時代で犯罪を起こす中に未来や過去から来た人がいるってこと?」

「そういう事です」


 司令官の顔は嘘をついているようには見えない。


「私達には待っている時間がありません」


 はっきり信じるって言えないが、先に進める為に頷く。


「では先ほどの資料を見て下さい」


 そこには事件の起きた場所や犯人の容姿から始まって、取った行動まで細かく書いてある。


「見て分かる通り犯人は今2019年にいます。ですが、犯人はどの時代の人間か分かりません。今回は私達が手を貸して解決する事になりました」


 その辺りの事情もよく分からない。ただ今回の事件はナオ達が住む時代の人間が解決を任されたということなのだろう。

 だがナオに頼むのは足手まといになるだけだと思う。WSに入れたくらいだから運動神経は人並み以上にあるが、これは今後経験をある程度積んでからではないのか。

 考えれば考えるほど、選ばれた理由が分からなくなってくる。


「何で俺が……」


 つい呟いてしまった声を聞きつけて会話が止まった。


「なぜ俺が選ばれたんですか? 他にも適任がいますよね」


 どうしても納得出来なくて疑問を投げかけると司令官が机に資料を置く。


「確かに疑問はあるでしょう。君の成績は下から数えた方が早いですから」


 悪気はないんだろうが明らかに馬鹿にされていてることは分かる。


「ですが私は成績の良し悪しで決めるのではなく、パートナーとしての釣り合いで考えています。今までレイはひとりで任務を全うしてきましたが、君のような人物を待っていたんです」


 そう言われて納得はできない。


「そろそろ時間ですね。今後は管理官と相談してください」


 司令官は壁にかかった時計を見て立ち上がった。


「行くぞ」


 隣で立ち上がったレイに声を掛けられて部屋を出る。

 司令官が笑顔で見送ってくれているのを見て、ナオは嫌な予感にため息しか出なかった。


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