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異端児たちに劇的で平凡な青春を  作者: かるしうむ
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体育館と異端児

「というわけで、新年度の説明は以上だ。選択教科を、記入して明後日までに提出してくれ」

 そう言って、担任の古桜先生は、私にプリントを渡した。

 まあ、担任といっても、この万色学園(よろずいろがくえん)では、クラスとかいう分類集団はなく、一人一人に担当の教師が割り当てられている。

 そして、数学や英語といった主要教科に加え、芸術などの、それぞれが選んだ副教科から、一人一人異なる時間割が作成される。

 副教科を選ばなかったら、その分合計時数が、減るのかと聞かれたら……勿論そんなことはない。

 昨年度の時間割が数学や英語、国語などに埋め尽くされたときは、早めの帰宅部と遅めの登校部への入部を即決したな。

 ほんっと、早く教えて欲しかった……

「あと、ついでにだが――」

「なんですか、下校時刻は過ぎてますが」

「いや、お前さっき来たばっかだろ。下校時刻に登校してきただろ。まず、生徒たちは今日、選択教科の思案期間として休みなんだよ」

 説明的なツッコミだ……

「とにかくだ、今から隣の第三体育館に向かってくれ」

「…………」

「露骨に嫌そうな顔をするな。」

「嫌そうなじゃなくて、嫌ですよ」

「残念ながらというか、喜ばしいことにというか、これは強制任務だ。お前がこの学園に残れるように請願してやった恩を忘れるなよ」

 先生は、皮肉っぽく笑った。


「《完全記憶体質》には、忘れようがないがな」

     

         ******


この万色学園では、想定外のことが起こり得ることぐらい想定内だったけど――

 いくらなんでもこれはな……


 第三体育館――15mはあるだろうその天井に――

 

 人が頭から突き刺さっていた


「待ってましたよ。青春好春(あおはるこはる)2年生」

 頭上で起きている超常現象など、まるでなかったかのように、いや、まるで日常茶飯事であるかのように――

私に語りかけてきたこの爽やか白衣メガネの美形は、現代文の苺田壱井(いちごだいちい)先生。

 この人の授業は一度だけ受けたことがあるが――忘れもしないな、忘れようとしても忘れないのだけれど――何せ、授業中に、教科書に漫画を挟んで、読んでいたからな。漫画以外に、まるで興味ないらしい。

 それでいて完璧な授業をやってのけていた。教科書の文章を全部暗記してんのかよ……そんなこと普通はできないよな。

 私は、できるけど……

 この学園は、先生までも異端なんだな、と思った。


「しかし不思議ですね」

 苺田先生は、天井を見上げながら言った。

 先生も、気になるか――

「赤髪海賊団の、マリンフォードへの到着が速すぎるのですよね」

 気にしてなかった……

 マジで漫画以外に興味無いんだな。

「いや、先生――あの天井に突き刺さっている生物は、何ですか?」

「青春好春2年生――自分で立てた考察が、当たっていたときこそ読者冥利に尽きるというものですよ。」

「だから、あれは何かってーー

「肝要なのは、自分で考察を立てることです――伏線はそこら中に散らばっているのですから」

 自分で考えろってか。

 じゃ、あんたは何の為に居るんだよ……状況説明役的なキャラポジじゃないのか……

 まあ、ほっとくわけにもいかないし――ボールでも当ててみるか。 

 そう思って、倉庫から野球ボールを取り出す。

「よいしょっと」

 天井に向かって投げたボールは、ターゲットに直撃!――――するには100年早かったらしく――3m程上昇して、重力に従って落下した。

「全然駄目じゃないですか」

「まあ、頭脳明晰、しかし、運動音痴みたいなギャップがあるキャラ設定の方が、世間受けするじゃないんですか?先生」

WWWワンダーワイドホワイトボールを投げるためには、まずジャンプからですよ」

 何だその草が生えてそうなボールは……

 ていうか、全然話が噛み合わないな……

 その時、天井に突き刺さっていた、例のブツが、落下し、大きな音を立てた。

 

 そして、床に――同じように突き刺さった。


「青春好春2年生……」

 いくら先生といえども、これには反応を……

「流石に頭脳と運動の両極端はありきたり過ぎるか

と……いっそどちらとも極めてしまいましょう」


 もう……帰ろうかな……


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