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93 俺は臭いって言われたのに

 家の前で振り返って入り口を開けて待ってみる。お先にどうぞって、レオさんを見上げると、レオさんが何かに動揺したのか一瞬だけ動きを止めた。でも、何も言わずに、レオさんはすっと中に入ってくれた。


 家に入ったレオさんは靴を脱ぎながら、自分の〈シール〉を解除している。その後で俺の〈シール〉も解除してくれた。ありがとう、と笑顔でレオさんをじっと見上げてしまう。立ち止まって見上げている俺が疑問なのか、首を傾げたレオさんの反応ではっとなった。


 そうだった。自分で脱がなきゃだった、最近は、ネロがマントの着脱を流れるようにしてくれていたから、つい待ってしまった。自分で脱ぐんだよね。


 何でもないって首を振って、マントをささっと脱いでみた。マントを軽く畳みながら、ソファに向かってマントをソファ横のサイドテーブルに置いておく。


「なんか、家主のいない家に上がり込むって背徳感があるよな。」


「何それ。俺がいるじゃん。」


「まぁ、そうだね。そうともいう。」


 よく分からない事を呟いたレオさんに振り返って答えると、レオさんは照れたような笑顔を浮かべて頷いてくれた。立ったままで部屋を見渡しているレオさんにソファを勧めてみる。


 レオさんは頷いて、大股でソファに向い、どかっと座り込んだ。そのレオさんを眺めていて気が付いた。レオさんは半裸だった。ズボンだけの半裸だ。なんで俺はそれに違和感を抱いてなかったのか。


 ってか、この家に上半身裸のレオさんが存在しているって事実が違和感の塊だ。もう、上半身裸がデフォルト過ぎて、レオさんの家でレオさんに服を着てって指摘する事すら忘れていた。


 お客さんなのに半裸って凄い人だな。あ、お客さんじゃん。レオさんはお客さんだったね、そうだった。俺はお茶も淹れられない人だった。ん~、どうしたらいいのか。お水でいいのかな?


「どした?」


「あ、あのね。俺は魔法を使えなくて、お茶も用意できないなって。水でいいかな。」


「俺が沸かせばよくね?」


「じゃあ、お願いします。」


 レオさんがお客さんだったという事実に気が付いて悩んでいたら、ソファに座って寛いでいるレオさんが聞いてくれた。申し訳ない気持ちで伝えてみると、あっさりと解決していた。


 レオさんは直ぐに立ち上がって流しに向かってくれる。レオさんにくっついて移動すると、レオさんはちらっと俺に視線を向けて棚を開けていく。俺はくっついて見ているだけで、どこに何があるかも分かってなかった。


「カップはこれでいいの?」


 棚からカップを取り出して聞いてくるレオさんだったけど、レオさんが持っているのはネロのカップだ。ネロのカップは勝手に使ったら駄目だね。カップはシンプルに2つしかない。すなわち、ネロのカップと俺のカップだけだ。


「あ、それはネロのだ。どうしよっか。」


「じゃあ、琥珀ので一緒に飲めばよくね?」


 どうしよう、とレオさんを見上げてしまうと、レオさんはニッコリ笑顔で解決してくれた。あっさりと隣のカップを取ったレオさんは扉を閉めてしまう。


 まぁ、そうだね。レオさんが気にしないならそれがいいかもしれない。俺はいいけどレオさんは同じカップで平気なのかな。無理なら、俺は飲み物なしでいいか。


「そうだね~。それがいいか。ってか、俺と一緒のカップでいいの?」


「うん。あんまり飲まないし、少し貰えればいいや。」


「じゃあ、それでお願いします。」


 お客さんも来ないこの家には最低限のモノしかないのを忘れていた。そもそも、俺がお客さんみたいなものだったのも忘れていた。俺はこの家のどこに何があるのかすら把握していない事実に今気が付いてしまった。


 レオさんがお湯を沸かしてくれている間に、ウロウロとお茶を探してみる。確か、ネロは流しの上の釣り戸棚の中からお茶の瓶を取り出していた気がする。でも、高い位置だ。ギリ届きそうだね。


 背伸びして扉を開けると、お茶の葉っぱが入った瓶が見える。ここで正解だった。手を伸ばして取ろうとしたらレオさんが取ってくれた。振り返って笑顔でお礼を言って、更に捜索を続行する。


 ティーストレーナーは何処だろ。色々と戸棚の引き出しや扉を開いて探した結果、分かんなかった。諦めて、しょぼんとしながらレオさんを見上げてしまう。隣で俺の行動を見守ってくれていたらしいレオさんが首を傾げてしまった。レオさんから視線を逸らして溜息を吐いてしまった。


「いつもネロが淹れてくれてるから、お茶の場所が分かんなかった。」


「ここにあるでしょ。ちゃんと見つけられて偉かったな。」


 しょんぼりしながら呟いたからか、レオさんが慌てた感じで慰めてくれた。そうなの、お茶の葉までは見つかったんだよ。でもね、それじゃ、お茶は完成しないんだもん。


「違うの。お茶の葉っぱをいれるティーストレーナーがどこか分かんない。」


「じゃあ、湯でいいんじゃね?温まるし。」


「それしかないね。ごめん。」


 お茶の葉っぱの瓶を戸棚に戻して扉を閉めてくれるレオさんを見ながら、もう一回溜息を吐いてしまった。俺を見下ろして何かを考えていたレオさんだけど、何も言わずに頭をぽんぽんとしてくれてソファに戻っていった。


 レオさんを目で追っていたら、水の入ったカップに詠唱をしている。カップから湯気が立ち上ってきた。湯気の立つカップをローテーブルに置いて、ソファに深く座ったレオさんが俺を眺めてくる。


 目が合ってニコっとしてくれたレオさんに頷いて、デザートの置いてあるテーブルに向かう事にした。テーブルの上にはポツンと可愛らしいケーキが置かれている。


 赤紫色の美味しそうなムースだ。お皿に手を伸ばして持とうとしたけど、風の膜が阻んでくる。指の先が風の抵抗でお皿に近付けない。


 ちらっとレオさんに視線を送ってみると、苦笑したレオさんが俺の傍に来て、〈シール〉を解除してくれた。レオさんがソファに戻るのと一緒に、俺もソファに移動する。


 お皿をローテーブルに置いて、ローテーブルを挟んでレオさんと向かい合う形で床に座る事にした。レオさんはカップを片手に俺の行動を眺めている。レオさんを見上げてまた溜息を吐いてしまった。


「なんかね、全部ネロにやって貰ってたのに気が付いちゃった。俺はネロなしじゃ何一つできない体になってる気がする。ヤバいよね。」


「まぁ、表現はヤバいだろうな。」


「表現ってどういう事?」


「いや、何でもない。それより、食え。」


 愚痴ってみたけど、レオさんはカップ片手にあしらってくる。何がヤバいんだろうと、疑問を伝えてみても、適当に流されてしまった。そして、レオさんは首を振ってケーキを勧めてくれる。


 そうだね、目の前に美味しそうなスイーツがあるのに愚痴は良くない。美味しく頂いた方がいい。気分を切り替えて、今は目の前の美味しそうなスイーツを楽しもう。レオさんに笑顔で頷いて、赤紫色の艶っとしたトップコートに覆われたムースに視線を注いでみた。


 円柱状のムースは凄く美味しそうだ。そっと小さなフォークを差し入れると、程よい柔らかさだ。一部を切り取って口に運んでみた。お~、これは甘酸っぱくて美味しい。


 見た目はベリーのムースっぽいって思ってたけど、想像通りのブルーベリーっぽい感じだ。酸味が強いブルーベリーに、ラズベリーの甘さを少しだけ足した感じ。ユリアさんの作るスイーツはいつも美味しい。きっと、有名パティシエになれるね。うん。


 最初の一口で感動していると、視線を感じた。顔を上げると、レオさんがソファに凭れ掛かって俺を見下ろしている。レオさんと目が合っても、美味しくて幸せ過ぎて笑顔になるのが止められない。レオさんは少し目を細めた後で、目を逸らしてしまった。


 あらら、レオさんもネロと同じで、甘いのは苦手系の人なのか。人が甘いスイーツを食べるのを見ていただけでも胸焼けをしちゃうタイプの人なのかもしれない。だとしたら、悪い事をしてしまっているかも。


「レオさんも甘いのは苦手系な人だった?」


「いや、普通に食うよ。」


「少し食べてみる?甘酸っぱくて、めっちゃ美味しいよ。」


「いいのか?」


「うん。はい。」


 フォークで少し切り取って差し出してみる。レオさんが戸惑ったように止まってしまった。レオさんを見上げて、首を傾げてみる。少しの間止まっていたけど、レオさんは顔を寄せてフォークに乗っていたムースを咥えてくれた。


 フォークを引き抜く間も、レオさんはじっと俺を見つめてくる。そして、その姿勢のままで動かなくなってしまった。やっぱり甘過ぎたのかな。俺は美味しかったけど、苦手な味だったのかも。


「レオさん?口に合わなかった?」


 俺の言葉で瞬きをしたレオさんは体勢を戻して、背もたれに寄りかかってしまった。体勢を戻した後も、レオさんは何かを考えるように俺をじーっと見つめてくる。視線が強すぎて居心地がちょっと悪いかな。ムースをちょこちょこ摘みながら、レオさんの様子を窺ってみた。


 俺を見ていた視線を一旦中空に向けた後で、レオさんは目を閉じてまた動きを止めてしまった。何かを考え込むような真剣な表情で目を閉じている。レオさんの思考を邪魔しないように、静かに食べ進める事にする。美味しく食べ進めていたら、最後の一口になってしまった。


「レオさん、最後の一口だけど食べる?」


 レオさんは味の感想を答えてくれなかったから分からないけど、絶対美味しいと思うんだよ。最後の一口はどうだろう、と聞いてみたら、目を開けたレオさんが俺をじっと見つめてきた。


 首を傾げて再度疑問を伝えると、首を振って返してくれたレオさんに頷いて最後の一口を口に入れる。ほわっと広がる甘酸っぱさに頬が緩んでしまった。


 視線の先で、レオさんの瞳孔が広がったのが見えた、ような気がした。ん?首を傾げるとレオさんの瞳孔は元に戻っていた。気のせいだったのかもしれない。レオさんの瞳は深い緑でネロ程は瞳孔がはっきり見える訳じゃない。光の加減でそう見えただけだと思われる。驚くような事なんて特になかったし。


「美味しかった。ってか、食べる間も引き留めちゃったね。送って貰った上にデザートの相手までして貰ってありがとでした。」


「いや、大丈夫。それより、それはいつもしてるの?」


「それって何の事?」


「さっき、食べさせてくれたでしょ。フォークで直接。」


 あ~、味見か。普通にやるよね。美味しかったらお裾分けしたくなるのが常ですからね、やりますよ。何の事かと思ったけど、納得して頷く。


「あぁ、味見の事か。時々やるよ。甘いのだとネロが顔を顰めちゃうんだよ。酸っぱいのだと美味しそうに食べてくれる。」


「へぇ。」


「なんで?」


「いや、何でもない。」


 意外そうに答えてきたレオさんに首を傾げる。まぁ、でも何でもないなら別にいいか。それ以上は話す気がなさそうなレオさんを見上げながら少し冷えたお湯を飲む。丁度適温になっていて美味しい。さっきは湯気が凄くて熱々っぽかったからな。少し待って正解。


「今日のは美味しかったけど、レオさんはあんまだった?」


「え。あ~、味か。ちょっとそれどころじゃなくて味は覚えてないわ。」


「ん?」


「いや、考え事を。」


 成る程~、考え事か。護衛さんは職業上、色々と考える事も多いんだろうね。こうやって寛ぐ環境でも、例え上半身裸でも、レオさんは凄く真剣な顔していたからな。きっと色々と考える事があるんだろうね。護衛さんって大変だね。


「そういえば、ネロもさっき考え事をしてたって言ってぼーっとしてた。〈シール〉を忘れて、レオさんみたいに雨でびしょ濡れで帰ってきたんだよ。俺が出てくかもって考えちゃったらしくて心配させちゃったらしい。ネロも少しだけ抜けてるトコがあるんだって安心した。で、そんなネロも可愛いなって思ったんだよ。完璧っぽいのにちょっと抜けてるんだなって。」


「琥珀は出てくのか?」


 ネロの話題には触れずに、身を乗り出して俺の方を気にするレオさんに首を振る。ネロの抜けているちょっと可愛いエピソードに食いついて欲しかったのに。俺の事は食いつかなくていいよ、まだ出て行けないし。


「いや、俺の力じゃまだ外は無理って結論になった。」


「そうか。」


 ほっと息を吐き出したレオさんを、ローテーブルに肘を突きながら眺める。レオさんはまた背もたれに寄り掛かってぼんやりと俺を見下ろしてくる。


 少し離れた距離で見ていると、レオさんの体はやっぱり凄い筋肉だ。上半身が裸だから、筋肉がメッチャ見える。細い体だけど、凄い体。


「レオさんは筋トレってどんな事をするの?」


「そうだな、色々ある。」


「ほう。」


 その色々が聞きたいんですよ。どんな筋トレしたら、そんなバキバキの体になるんだよ。俺もそんな筋肉が欲しいんだ。ワクワクと見つめた俺とは対照的に、レオさんは静かにじっと見つめてくる。


「外に出るからさっき短剣を握ってたのか?」


「えっと。どんな握り心地かなって確認してみたくなった。ネロは武器を触らせてくれないから。」


「そうか。」


 背もたれに寄りかかったままで、俺をじっと眺めてくるレオさんの視線が痛い。少し顔が真剣で怖い感じがする。いつもはちょっとチャラチャラしているというか、話し易いというかそんな感じなのに、どうしたんだろ。


「考え事って仕事の事なのかな。またネロが危ないとかじゃないよね。」


「いや、別の事だよ。ってか、ネロが危なくなる訳がないだろ。」


 不安になって小さく呟いた俺の声ではっとしたレオさんの表情が緩んでくれた。にこっと笑顔になったレオさんだけど、悪い予感はなくなってくれない。眉を寄せて不安なままでいたら、レオさんは、大丈夫って言ってくれた。ネロなら大丈夫って。


「でも、傷だらけで帰ってきたし。」


「ああ、あれはびっくりしたな。」


 いじいじとなって甘えた口調で不安を口に出すと、レオさんが苦笑してしまった。慰める為なのか、レオさんは身を乗り出してローテーブルに手を突いて、俺の頭を撫でてくれた。


 レオさんでも驚く程の傷だったんだね。ってか、そうだ。ちゃんとお礼言わなきゃだった。この前の通りすがりで適当なのじゃなくてもう一度しっかり伝えておこう。


「そうだった。レオさん、ホントにあの時は泊めてくれてありがとでした。あと、服も貸してくれてありがとうでした。気が付いたらこの家にいたんだもん。びっくりした。俺はそんな熟睡してたんだね。」


「そうだね。ネロが迎えに来て抱き上げても寝てたからな。」


「うん。なんかいい匂いがした夢を見てた気がする。」


 そうなんだよね。アルさんのバニラの香りでリラックスできた気がしたんだよ。でも、ネロの匂いは全然違うんだよ。もっと安心できる匂いなんだよね。寝ながら匂いを嗅いでいたんだろうな。


「いい匂いってなんの匂いなの?」


「ネロの匂いはすっごくいい匂いなんだよ。落ち着くいい香りなの。」


「俺は臭いって言われたのに。」


 しょぼんとなってしまったレオさんの隣に移動して、慰めとお礼の意味で頭を撫でてあげる。ツンツンしたレオさんの髪は気持ちいい感触なんだよね。レオさんがちらっと俺を見てまたしょぼんと頭を下げてしまった。猫耳がぺたんと畳まれて凄く凹んでいる感がある、メッチャ可愛い。


「でも、この前はいい匂いだったよ。」


「俺の匂いじゃない。族長のだ。」


「そだった。」


 フォローするみたいに、いい匂いの時もあったって伝えてみた。そして、アルさんの匂いの事を言っているのがばれてしまったらしい。ふふっとなったらレオさんも笑ってくれた。


 さっきまでちょっと怖い雰囲気だったけど、笑顔のレオさんになってくれて良かった。さて、と立ち上がるとレオさんが俺を目で追ってくる。


「今日は泊まってく?」


 悪戯っぽく笑って聞いてみた。間近で見えるレオさんの瞳孔が開いてまん丸になっていく。耳の毛が逆立って、尻尾が膨れたレオさんはメッチャ驚いたらしい。そんな驚く事は言ってないじゃん。


「冗談です。」


「琥珀。そういう冗談は良くない。」


「なんでよ。レオさんもよく冗談を言ってるじゃん。」


 少しだけレオさんの変化を楽しんでから、フッと目を細めて冗談だよって伝えてみる。元に戻ったレオさんが抗議してきたから、ぷいっと視線を逸らして拗ねたように答えてみた。


「俺は俺、琥珀は琥珀だろ。」


「む。」


「そういう事だ。いいな。」


 納得できないような気もするんですよ。無理遣り決定された事が不満で、むっと眉を寄せてしまった。手を差し出してきたレオさんの腕を引っ張って立ち上がらせたら、レオさんはお礼に頭を撫でてくれた。


「琥珀が寂しくて寒くてどうしてもっていうなら、一緒にうちに帰るか?」


「レオさんだけ冗談を言うのはズルい。」


 レオさんが屈んで俺と目線を合わせて覗き込んでくる。レオさんの行動が疑問で首を傾げたら、レオさんが揶揄うように提案してきた。レオさんを睨んで拗ねてしまう。


「ズルくない。俺はこんなだから許されるの。じゃあ、帰るわ。」


「え、もう帰っちゃうの?」


「どした。やっぱうちに連れてって欲しいのか?いいぞ。うちで一緒に寝ような。」


「いや、いいです。」


「そうか、悲しいな。」


「今日はありがと。」


 軽口合戦の末にしょぼんとなってしまったレオさんの頭を撫でて、お礼を伝える。一人で静かにケーキを食べるより、レオさんが一緒にいてくれて楽しかった。


「俺もありがと。いい筋トレになった。また宜しく。」


「うん。またね。」


 レオさんが出て行く後姿を見送って、ソファに座り込む。賑やかなレオさんがいなくなって、ネロもいない。一人だけぽつんと取り残されたように感じてしまった。


 孤独を紛らわす為に、ソファに横になって本を開いてみる。ネロの武器の本を読むというよりは、ただ、ペラペラと捲っていくだけ。短剣か、結構重かったな。ネロには筋トレするって言っちゃったんだけど。俺は確かレベルの上限が1じゃなかったかな。これは成長するのだろうか?


(しません。ステータスの能力値はレベルが上がるか、デスボーナスでのみ成長します。琥珀様は今の状態ですと、デスボーナスでのみ、成長が可能となっております。尚、例外として希少なアイテムでも成長する場合も御座います。)


 あ、ですよね。でも、筋トレをすればちょっとは筋肉がついたりするとかはないかな。


(肉体の強化は可能です。)


 おお、筋肉はつくんだ。じゃあ、やっぱり筋トレするか。あ、でも、力が1でも筋肉は強化できるんだ。って事は、ステータスと筋肉に相関関係はないって事なのかな?


(ステータスの能力値と肉体の強化には相関関係はあります。ですが、現在の琥珀様ですと、力、体力、素早さの能力値を鑑みても、まだ少しは肉体の強化が可能です。)


 成る程。って事は、ステータスの定める限界値までは肉体の強化ができると。


(はい。)


 って事はですよ。俺は力が1の体にもなれてないって事なのか。どんだけ貧弱なんだよ。いや、違うか。ずっと寝ていたからだね。病気で寝ていたから。筋力が落ちただけ、きっとそうだよね。ね、スツィ。


(・・・はい。)


 なんか、超微妙そうに返事したでしょ。スツィはそんな微妙なニュアンスができる人だったの?


(そんな事はないです。)


 まぁいいや。そっか、少しは鍛えられるんだね。頑張るか。クッションを持ってきて胸の下に敷いて本格的に読書を始める事にした。ネロの買った武器の本は詳細な武器の挿絵が最大のポイントだ。やっぱり、挿絵は需要ですな。


 この本は片手の軽量武器を扱った本らしい。短剣と片手剣を掲載している本みたいだね。短剣は剣身の長さが比較的短くて軽量な為、動きが制限されにくく、体術との合わせで真価を発揮するっぽい。


 斬メインの剣身の幅が少し広い短剣と、突がメインの細い短剣、両方の性能を兼ね備えたモノ等があるらしい。他にも鍔の形の形状が特殊なのとか、突の剣身の上下に斬の刃を配置しているのとか、特殊なのもあるっぽい。


 突の方が重量は少し軽めではあるけど、弱点部位を的確に突けなければ撃破は難しくなるとか。斬の方は少し重いけど、その分広範囲を攻撃できるとか。短剣によって特徴の長短がはっきりしているみたいだ。


 紋様の効果いかんでは、かなり軽量だけど強度がしっかりしているモノもあるみたい。でもね、お金の価値が分からないけど、価格の項目に0が沢山並んでいるのは見えるんだよ。この本に掲載されている武器は高価な武器なんだろうな。


 片手剣はもう、掲載されているのを流し見で見ただけでも、種類が有り過ぎ感がある。多分だけど、この世界で一般的によく使われている武器種って事なのかもしれない。


 ショート、ロング、カトラス、サーベル、ブロード、レイピア等、ゲームで聞いた事のあるような種類の片手剣が、それぞれの職人や工房毎に纏めて掲載されている。どの工房も短剣とは力の入れようが違うっぽい。


 値段としては比較的お安い感じかな。よく分からないけど、短剣より0の数が少ないのが多い、気がする。片手剣の重量は2㌔~5㌔と結構重いらしい。ギリ、ショートソードの一番軽い2㌔くらいならいけるのかね。


 でもな、振り回して相手に当てる訳でしょ?手にかかる衝撃とかに俺は耐えられるのかな。躓いて転んだだけで死ぬんだよ。困ったね。でも重い分、短剣よりは攻撃力はあるのは確定なんだよね。


 あ、レオさんは短剣メインっぽいから聞いてみれば良かった。武器は無理だとすると、魔法になってくるのか。でもな、知力が1だと覚えられない魔法の方が多そうだよな。それに知力が1の状態じゃ魔法の効果もどうなんだろうな。


 ん~、あ。そうだ、俺は使役士じゃなかったっけ。思いっきり忘れてた。でも、ここら辺でプラントイドなんて全然見かけなかったよ。植物のモンスターなんてどこにいるんだろ。


 森なんだから普通にそこらへんにいそうなのに、全然見かけなかった。そもそも、この森の中にモンスターなんているのかってくらい平和だった気がする。森を出た後からが勝負って事なんだろうな。

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