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76 それも、いいな

 部屋を見渡すと、目に付くのは落ちてる素材と武器。やっぱり、片付けちゃいたいなって考えてしまう。レオさんに顔を向けると、レオさんは俺をじっと見ていた。レオさんの意識が俺に向いてるなら丁度いい。片付けの提案をしてみよう。


「で、ネロはどれくらいで帰って来るんだ?」


「えっとね、アルさんがネロなら五日もあればって言ってた。だから、丁度今くらいの時間に出てったような気がするから、後四日かな。」


 俺が提案する前に、レオさんが先に口を開いてしまった。そっか、ネロが帰って来るまでお世話になるなら、どれくらいの期間かが気になるよね。先に言うべきだった。


「成る程ね。族長が五日って事は、もうちょっとかかるかもしれないって事かな。それにしてもネロは俺にバスケットを押し付けたままで出てったんだぞ。どんだけ急いでたんだよ。」


「そうなの?」


「うん、自分で返してから行けっての。まぁ、あの迫力で凄まれたら断れなかったけど。」


「違う、日数の事。」


「目安は目安。特に、族長の目安は最短で事を運んだら、って事だと思う。ネロなら五日でもイケるかもしれんけど、分からん。俺だったらもう少しかかるだろうな。」


「そう、なんだ。」


 考えている以上に時間がかかるかもしれないのか。レオさんの所でずっとお世話になるのも心苦しいから、ネロには早く帰ってきて欲しい。でも、お仕事なら仕方ないよね。


 だけど、無断で休んでた罰みたいなモノって言ってた気もする。本来なら、やらなくてもいい仕事だったのかもしれない。俺の看病で休んで貰っちゃった上に、追加のお仕事か。ネロには悪い事をしちゃったな。


「何の指令だとしてもまぁ、目安の期間で帰ってくるってのは正直厳しいかな。ネロならいけるかもだけど。」


「指令って危険もあるの?」


「あるよ。俺も専属になった時に、族長の指令で強い魔物と戦った事がある。確か、その時は移動を含めて七日くらいって言われたかな。でも、結局討伐して帰ってくるのに十日くらいかかった。しかも死にかけた。新人への試練って言ってたし、これくらい倒せなきゃ専属ではないって。怖かったわ。その後も何回も出たけど、言われた日数で討伐できたのなんてネロがいる時くらいだったな。これで分かったか?ネロの強さ。」


 俺の不安が伝わったのか、レオさんが実体験を交えてはなしてくれる。そして、最終的にはネロの強さを教えてくれるエピソードだったらしい。成る程、よく分からないけどネロが凄いって事は伝わった。そんな危険なのと戦ったりとかするのかな。


「ん~。分からない。ネロは今回は討伐で出てるのかな。」


「分からないよな。実際に見なきゃネロの凄さは分からない。族長の指令の内容は知らないし、知ってても教えられないかな。まぁ、無事帰って来るよ。多分だけど。」


「でも、ネロは出る時、体調が悪かったけど大丈夫かな。ずっと俺の看病をしてくれてて、外にも出てなかったし。討伐とか戦う系だったとして、身体が鈍ったりしてないかな。」


 そう、どんなに凄い人でも体調が悪かったら分からないじゃん。あと、ホントにずっと俺につきっきりだったし睡眠不足もあったし、出る前は体調も悪かった。不安材料しかない。


「まじか。だからネロを見かけなかったのか。何かの指令でどっかに行ってるのかと思ってた。まぁ、大丈夫じゃね?例え体調が悪くても、ネロがやられるなんて想像もできない。そもそも、体調が悪いネロを見た事がない。それより、お前が病気だったのか。もう平気なのか?」


「ネロは俺が動けなくてずっと看病してくれてた。今は多分、平気。」


 心配そうな言葉と表情で俺を覗き込んでくるレオさんに、ニコッとして平気さを表現してみた。俺はここで休ませて貰えるから平気。でも、ネロは体調が悪い上に、お仕事で出かけてるからそっちの方が心配なんだよ。


「だから、臥せってたとか、病み上がりとか言ってたのか。さっき倒れかけたのもそれのせいか?」


「いや。それは多分、部屋の片付けで疲れたから。俺は体力がないから。」


「そうか、悪かったな。部屋を片付けてくれて、ありがとな。」


 レオさんが本当にすまなそうな顔をして、頭を撫でてくれる。レオさんの手のひらはネロより温かく感じる。視線も優しい感じで、レオさんの深い緑の瞳は見てるとなんか落ち着く。


「そだ、この部屋は寒くない?アルさんやネロの所はもっと暖かかったよ。」


「温度を弄ってるんだろ。俺にはこれが適温なの。寒いなら俺にくっつくか?俺もひんやりして気持ちいいし、winwinだな。さぁ来い。」


 イキナリ何を言い出したんだ、この男は。腕を広げて爽やかな笑顔を浮かべているレオさんは楽しそうである。そんなレオさんをじと目で睨んでしまった。


「だから、冗談だって、本気にするな。でも、寒いのか、困ったな。この部屋は温度は弄れないんだよ。族長のトコに行くか?」


「いえ、この温度でダイジョウブデス。」


 折角、脱出成功したのに、逆戻りは嫌でゴザル。アルさんの所に逆戻りになったら、また睡眠不足に悩まされてしまう。まだ、寒い方がましでゴザル。


「そうか。まぁ、寒いならベッドに潜ってブランケットに包まっとけよ。少しは暖かいだろ。」


「らじゃ。」


 苦笑しながら追い出す事はしないと言ってくれたレオさんに感謝。優しいお言葉に甘えてベッドに潜り込ませて貰おう。そうと決まれば、と立ち上がって寝室に向かう事にした。


 寝室に移動する俺について、レオさんも寝室に入ってきた。振り返って不審な顔をしてみたけど、俺の横を素通りしたレオさんは無言で先にベッドに潜り込んでしまう。


 レオさんがブランケットの片端を上げてくれたから、一応横に寝転がってみる。要するに、レオさんも寒かったのかな。だから、ブランケットの中でぬくぬくしたかったんだね。


 俺にブランケットをかけてくれてから、うつ伏せになったレオさんをじっと見つめてしまう。レオさんは俺の視線なんて一切気にせずに、枕元においてあった本に手を伸ばした。


「レオさん、なんか本とかないの?」


「片付けてくれたのが沢山あるよ。一緒に読むか?」


 レオさんの持ってる本は、表紙を見た限り、全部際どくて18禁っぽいヤバいヤツじゃん。なんでそれを一緒に読まなきゃなんだよ。これも冗談ってヤツなのか、高度な冗談だな。ってか、どう聞いても本心にしか聞こえない冗談じゃん。


「違う。普通の勉強になるヤツ。」


「普通のって、あれだって普通だろ。誰だって持ってる。」


「ネロの所にはありませんでした。」


「まじで。隠してるだけだって、ない筈がないよ。」


 あ~、そうなのかな。ネロも隠し持ってるのかな。武器の本を持ってるのは知ってるけど、際どい本も隠し持ってるのかな。持ってたとしても、レオさん程のコレクションはないだろうな。


「武器の本はあったよ。」


「武器がオカズかよ。変わった趣味だな。」


「違うから、レオさんと一緒にしないで。で、そういう本以外にないの?暇潰しできそうなの。」


「暇潰しなら話してれば良くない?」


 ぺらぺらっと一定の速度で本を捲る音が聞こえる。片肘を突いて横向きで寝転がる俺の正面には、レオさんがうつ伏せで読書をしている。さっきおススメしてくれたっぽい、際どい本がぺら、ぺら、と一定の速度で捲られていく。


 本に目を落とすレオさんの横顔はキリッとしていて真剣にも見える。ってか、どんだけ読書が好きなんだよ。いや、これ、本を読むって意味で言ってないからね。目の前でレオさんが行ってる、挿絵を眺める作業を差してるだけだからね。


「レオさんはお喋りだね。ネロとだと静かだよ。」


「ああ、やっぱそうなんだ。で、普段はどんな会話してんの?」


「俺が何かを聞いて、ネロが回答してくれる。」


「学び舎かよ。」


 お~、まさしくそれだ。学び舎的感じかもしれない。お世話になり始めた当初はホントそれだった気がする。静かな空間で本を読んで、時々ネロの書き物の音が響いてくる。質問をしたら、ネロがそれに言葉は少ないながらも答えてくれる。


「うん。ネロは先生みたいだよね。落ち着いてるし、何でも知ってる。」


「あ~、分かる気がするわ。俺も手合わせして貰う時は師匠って思ってしまう。」


「分かる分かる。年上っぽいヤミさんと手合わせしてた時も、ネロの方が師匠って感じだった。」


「まじかよ、ヤミのヤツ抜け駆けしてんのかよ。」


 ペラペラと規則的にゆっくりページを捲る音が響いてくる。レオさんの横顔を眺めていたけど、視界でちらちらと動くのが気になって、レオさんの手元の本に目を向けてしまった。


 純白の尻尾を持った、ナイスバディの美人な亜人のお姉さんが描かれている。ただし、はだけた服と非常に艶めかしいセクシーなポーズで、こちらを挑発している挿絵だ。視界の中で、レオさんの視線が俺に向いたのが分かって目を逸らしてしまった。


「やっぱ、琥珀も興味あるんでしょ。男なら惹かれて当然なんだよ。隣で読んでいいから、好きなの持って来いよ。寒いなら俺にくっついとけ。」


「いえ、お気になさらずに。視界でちらちらと動いてたから気になっただけですので。」


「ほぉ。じゃ、それでいいよ。」


 ふっと口元を緩めたレオさんが、ちょっとだけ揶揄い混じりの口調で読書に誘ってきた。そして、楽しそうな笑顔で俺を覗き込んでくる。できるだけ冷静にお断りの返事を返してみた。更に口角を上げて楽し気な笑みを浮かべたレオさんは頷いて本に視線を戻してくれた。


「ユリアさんとは幼馴染なの?」


「そうだよ。小さい頃から一緒に育ってきた。」


「小さい頃もユリアさんは可愛かった?」


 小さいユリアさんと小さいレオさんか、なんかほのぼのしてて可愛い光景だな。特に、ユリアさんは可愛かっただろうな。今でもあんなに可愛いけど、子供のユリアさんは違う意味で可愛いかった筈。子供の猫耳はちょっと頭の横あたりにあって、大人の猫耳とは違うんだよね。


「そうだな~。今と変わらないかな。」


「変わらない事はないでしょ。」


「あんま変わってない。小さい頃から同じ。いつまでも真っ平らのまま。」


 レオさんは何を言ってるんだ、俺はそういう事を言ってるんじゃないのに。まぁ、レオさんの思考的にそこに行き着いちゃうのかな。今レオさんが読んでる本の挿絵も、出るトコが出てる女の子の挿絵だし。


「そこかよ。」


「それ以外に何があるっていうんだ。」


 つい、ぼそっと小さく呟いてしまった。小さな呟きなのに、レオさんがくわっと目を見開いて俺を見つめてきた。いや、それ以外にいっぱいありますよね。


「じゃあ、アイラさんは?」


「なんだ?知りたいのはネロとの関係か?」


「そういう訳じゃないよ。学び舎の先生だし。どんな人なのかなって。ネロに聞いても今は交流無いでぶった切られちゃったから、全く分からなかったの。」


「へえ、交流無いでぶった切る、ね。ネロって聞いた事には、知ってる事なら大体答えてくれるだろ。言えない事は言えないってはっきり言うし。やんわりと言いたくないって意思表示するのって、珍しくね?」


「あ、そう言えばそうだね。珍しいかも。」


「成る程ね~。」


「何が成る程なの?」


「いやいや、こっちの話。でさ、琥珀。このルナールのお姉さん。可愛くね?」


 話題を変えるようなレオさんの言葉で、本を覗き込んでみた。際どい挿絵を見させようとするレオさんには若干引いてしまうかな。でも、一応、ちょっとだけ拝見しておこうかなっと目を向けてみた。


 いや、マジで綺麗。艶々としたボリュームのある尻尾と、ガト族より大きくて毛足の長い耳。少しツリ気味の大きな桃色の目。真っ白な尻尾と真っ白な耳に純白の真っ直ぐなロングヘアー。口紅は真っ赤で、唇を片方だけ上げて挑発的に笑ってる、凄く大人っぽいお姉さん。


 衣装は和服っぽいというか、和服だね、見た目はそのまんま浴衣。桃色の浴衣に銀色の帯。胸元は少しはだけさせて大きな胸が強調されて、足元も太腿が出るように着崩している。見惚れるような美しさの狐っぽい亜人。


「ルナール?」


「そう、ルナール族。狐の亜人。」


 本から目を上げて、レオさんを見つめて、初めて聞く語感の言葉を聞いてしまった。お~、狐の亜人で合ってた。狐っ子もいるんだね。ワクワクがとまらない、ガトも可愛いけどルナールも可愛い。この世界ヤバいな。


「綺麗な人だね。尻尾がいい。」


「琥珀よ。見るトコはそこじゃないだろ。」


「耳も可愛かった。」


「だから、違うだろ。」


 ほぅ、レオさんは何を決め手にしているんだろう。どう見ても見るべきは耳と尻尾な気がする。ってかそれを魅力的に描いてるからどう見てもそこでしょ。


「えっと、衣装も可愛かった。」


「よく言った琥珀。そうなんだよ。全部見せちゃダメなんだよ。ちょっとだけってのがいいんだよ。それをガトの女共は分っとらんのだよ。」


 えっと、何を言いたいんだろ。でも、どうやら、レオさんの言わんとしてる所には触れる事ができたらしい。くわっと俺を見てくるレオさんに、ニッコリ笑顔を返しておく。俺が笑いかけたら、動きを止めたレオさんがまた本を捲りだした。何が言いたかったんだよ。


「そういえば、猫の亜人とか、狐の亜人とか言うじゃん?」


「うん。」


「その猫、とか狐ってのも存在してるの?」


「始祖か、希少種だけどいるよ。全てじゃないけど何種類かは、直ぐ南の学問の都にいるみたい。詳しくは知らないけど。」


 お~、いるんだ。始祖っていうんだね。本物の猫ちゃんも見られるのかな。学問の都ってこの前、本で読んだトコだよね。動物園的なのがあるって事なのかな。


「ソピア?」


「そそ。学問の都ソピアで保護してるとかなんとか。まぁ、自然に生息してるのもどっかにはいると思うけどな。」


 あ、動物園じゃなかった。保護か。そうなんだね。流石、学問の都だ。希少動物の保護的な事もするんだ。


「保護って事は行けば見られる?」


「どうだろうな、重要保護なんちゃらだった気もする。」


「じゃあ、難しいのか。」


 てか、ページを捲る音が一定のリズムで途切れないんだけど。よく読みながら会話ができるな。流石、専属護衛って事なのかな。あ、でも、ほぼ挿絵だから、読んでる訳じゃなくて見てるだけなのかな。ぼーっとレオさんの横顔を眺める。


「なんで見たいの。胸も尻もないよ?」


「俺はそこは重要じゃないので。」


「は?じゃあ、何が重要なんだよ。」


 目を見開いたレオさんに睨まれてびくっとしてしまった。多分、レオさんの迫力に驚いた俺の目も見開かれていただろう。俺の表情で、返事を待つレオさんが緊張の面持ちになってしまう。少し黙ってレオさんを見つめてみた。そんなの、決まってるじゃん。


「耳と尻尾?」


「耳と、尻尾?」


「うん。耳と尻尾。ガトは耳がいいよね。さっきのお姉さんは尻尾が良かった。」


 そして、レオさんと見つめ合ったままで、ゆっくりと静かに俺の考えを伝えてみた。少しだけ、心の動揺が出ちゃったらしく疑問系になったのは仕方ない。レオさんがオウム返しに俺の言葉を繰り返したのが聞こえて、大きく頷いて笑顔で詳細まで伝え切った。


「お前、変わった性癖だな。」


「性癖じゃねえよ。全部自分と同じにするな。」


 少しの間を置いて、レオさんが絞り出すように呟いた言葉に、ムッとして、思わず飾らない心の言葉が声に出てしまった。じと目で睨む俺と目を合わせていたレオさんの動きが止まってしまう。


 あ、つい、本音が口から出てしまった。しかも、低い声で威嚇するようにキツイ言い方にをしちゃった。瞬きも息も止めて、固まっているレオさんを見て即座に反省をした。


「それも、いいな。」


「おぉ、分かる?耳も尻尾も捨てがたいでしょ?」


 どう謝ったらいいか言葉に迷って、レオさんの目を見続けてしまう。瞬きの後で、目を細めたレオさんが呟いた声が聞こえた。まさかの、思ってもないトコロでレオさんが同意してくれた。嬉しくなって、テンションが上がってしまうのが止められない。


「違うわ。そこじゃない。」


「ん?」


「なんでもない。」


 本に目を戻してページを捲り始めたレオさんの横顔を、ぼんやりと眺める作業に戻る。レオさんの猫耳は大きく見える、短髪だからかな。後、耳の先の房毛を優しく引っ張ってみたい欲求に駆られる。結構魅力的な綺麗な猫耳だな。


 時々こちらに向くレオさんの耳を眺めていたけど、ちらっとレオさんの捲るページに目を向けてみた。チラ見しただけのページだった筈なのに、その挿絵に釘付けになってしまう。身を乗り出して本を凝視する俺の為に、レオさんがページを捲るのを止めてくれた。


 この、こげ茶色のベリーショートの髪の隙間から飛び出す小さな三角の耳。丸顔に大きなタレ目の愛らしいこげ茶色の目。ふんわり丸みを帯びたこげ茶色と茶色の入り混じる尻尾。服装はさっきのルナールのお姉さんと同じ浴衣姿。藍色の浴衣を着崩して色気を振りまいてるけど、これは。


「琥珀はこういうのが趣味なのか?」


「レオさん、この人は何族なの?」


「なんだったかな、結構な希少種族だったような気がする。忘れた。」


「思い出して。」


「無茶を言うなよ。」


 どう見ても、狸だよな。狐がいるなら、狸がいてもおかしくない。めっちゃ可愛いじゃん。はー、実物を見てみたい。溜息を吐きながら元の体勢に戻る。


 少しの間、レオさんは不審そうに俺を眺めていた。俺もぼんやりとレオさんを見つめる。ちょっとして、俺がもうそのページを見ないと判断したのか、レオさんはまたページを捲り始めた。


 また、レオさんの横顔をぼんやりと眺める作業の始まりだ。深い緑の瞳が綺麗だね、落ち着く色合いがいい。猫の目みたいに、瞳孔が縦長なのがいいよね。キラキラ光を反射してるのも綺麗。


「成る程ね、ああいうのがいいのか。」


「ん?」


「いや、琥珀が身を乗り出す程いい女だったかなと思って。」


「普通に可愛かったじゃん。」


「まぁ、肉感的ではあった。」


「見るべきトコはそこじゃないでしょ。ちゃんと耳を見た?小さくて三角で可愛かったでしょ。」


「へぇ。」


なんか、一定の速度でページを捲る音を聞いてたら眠くなってきた。うとうとっと船を漕いでたらしい。カクンと頭が肘枕から滑り落ちてポフっと枕の上に着地していた。危なかった。これが硬い床なら終わってた。ぶるっと震えてしまったら、気付いたレオさんがこっちを向いてくれる。


「寒いのか?」


 震えたのは違う意味だったけど、聞かれて気が付いた。確かに寒いかもしれない。ブランケットを掛けてるのに今日は冷えるね。


「ん。ちょっと。」


「で、眠いのか?」


 まぁ、頭がカクンってなったし否定しても仕方がない。素直に頷いてみると、レオさんが本を閉じてしまった。


「じゃぁ、寝るか。琥珀、嫌かもしれなけどくっついとけ、少しは温かいだろ。」


「追加のブランケットとかは無いかな。」


「ねぇよ。これも暑いくらい。本来なら掛けずに寝てる。」


「そっか。じゃぁ、ちょっとだけくっついていい?」


「いいよ、気にするな。」


 お言葉に甘えて、後ろ向きになってレオさんに背中をくっつけさせて貰う。おぁ、超温かい。ぬっくぬくで、あんまり汗臭くもなくていいですな。おやすみなさい。目を閉じると、本をどっかに投げ捨てる音がした。それだから散らかるんだよ、と眠気の増した頭で突っ込んでしまった。


「レオさんありがと。おやすみ。」


「俺も冷たくて気持ちいい。消すよ。」


 温もりを背中に感じて安心感を感じる事ができた。〈照明〉を消してくれた暗闇の中で眠りに落ちるのは時間がかからなかった。

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